フランス書院編集部発

【2017年10月27日】

第19回フランス書院文庫官能大賞、結果発表

「第19回フランス書院官能大賞」(5月末日締切分)に、たくさんのご応募をいただき誠にありがとうございました。

今回の選考が遅れてしまったことをお詫び申し上げます。

編集部で厳正な審査をおこなった結果、下記の通り決定しました。

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大賞
該当作品なし

新人賞(賞金30万円)
該当作品なし

特別賞(賞金30万円)
『歯科衛生士・奈摘 母娘の紐帯』」(Y.Kさん)(P.N)

ノンフィクション部門
該当作品なし

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■受賞作講評

■特別賞

『歯科衛生士・奈摘 母娘の紐帯』」(Y.Kさん)(P.N)

荒削りではある。だがとにかく「シングルマザー」と「ひきこもり娘」という母娘のキャラクタ造型が素晴らしかった。登場人物が、すっと読み手の心に棲みついてしまうようなかわいらしさと魅力にあふれていた。
物語後半、歯科衛生士の奈摘が、自分の娘である映里香を引き合いに出し、「あの娘と寝た?」と詰問するシーンがあったが、それ以降のストーリー展開には、ぐいぐいと引き込まれた。タイトルに「母娘の紐帯」とあるが、母と娘の結びつきの強さゆえに、同じ男に惹かれてしまった「女」の悲しさ、意地らしさが存分に描かれていた。「母娘小説」の傑作と言えるだろう。
編集者が教えられない「才能」を持った逸材である。さらなるブラッシュアップが必要ではあるものの、フランス書院文庫の一作品として皆様にお届けできる日が今から愉しみでならない。

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以下、惜しくも受賞を逃した作品についての講評です

『義母・麻希子の恥虐生活【十五年目の不倫は息子たちと】』(M.Nさん)

官能小説は煎じ詰めれば「女性を描く」ための文学である。女性を美しく描写するためにすべての文章が注がれるべきだとフランス書院は考えている。誘惑小説でも凌辱小説でも同様である。
本作は38歳の義母が、三人の義理の息子に執拗に犯されるシーンを軸に展開されている。投稿者は、過去、官能大賞最終選考に残ったこともある実力者で、セリフも達者、ストーリー展開も巧みではある。だが、「ヒロイン」ではなく「凌辱者」が目立つ物語になっていた。作品内のヒロインをどれだけ美しく描けるか、それは、作品の向こうに居る読者をどれだけ愉しませることができるのかというサービス精神にもつながると考えている。凌辱者のセリフは刺激的ではあったが、それを上回る魅力的なヒロインのセリフががなければ、読者の熱狂的な支持を得ることはできないだろう。

『堪える…僕の義母と彼女、その継母』(I.Sさん)

本作は、関西弁や、「つってただろ」など口語に近い言葉を用いたり、黒ギャル痴女を登場させたりと、他の投稿作と「違い」を生み出すことには成功している。ただ、この工夫が「諸刃の剣」となっているような気がしてならない。文章もこなれているし、テンポもよい。だが、物語全編に漂う印象がとにかく軽い。現在のフランス書院文庫のラインナップに入れてみて、果たして本作が読者に選んでいただけるのかと考えると、受賞に踏み切ることができなかった。
たとえば、テンポのよい語り口は魅力的だったので、文体ではなく、もう少し「タブー」を感じられるヒロインの属性を選んでみるなど、執筆の方針を転換してみてもいいのかもしれない。

『相姦カウンセリング』(Iさん)

全編にわたってヒリヒリするような禁断感がある。息子との関係に溺れ、淫らな本性を剥き出しにしていく母の業の深さに息を呑んだ。タイトルを付けるならば「淫獣家族」だろうか。重厚な官能小説に仕上がっている。
ここであえて横道にそれ、(フランス書院における)誘惑小説の歴史に触れたい。90年代は牧村僚先生による母子相姦小説が人気を博した。タブーを乗り越えて結ばれる母と子の物語に読者はひきこまれた。2000年代に入って神瀬知巳先生が登場。徹底的に甘く、癒す作品が人気を得た(秋月耕太先生の作品はさらにその流れを押し進めた)。美少女文庫出身作家による「ハーレム系」も大きなトレンドになった。
本作を「誘惑小説」としてとらえたとき、どこに位置するかと言えば、90年代の作品群に近い匂いを感じる。ただ、現在の誘惑小説のトレンドが、上述したように、どれだけ(ヒロインが主人公に)甘くなれるか、癒せるかという流れにあるだけに、評価が難しい作品だった。どうしても受賞という結論を下すことができなかった。

『マドンナ同級生と淫熟母』(H.Mさん)

王道の誘惑ものだが、〝王道〟とは何かをわかっていて、実際に描ける人はいそうでいない。特に少女・沙耶の母親が仕掛ける誘惑シーンはすばらしかった。キスをしながら少年に手コキをする描写は、五感をフルに使い、官能度を上げていた。少女以上に熟女描写が巧みなことは最大の武器になるだろう。
著者は凌辱と誘惑、どちらも書けるようだが、誘惑系を書くことをすすめる。ちなみに女性側の仕掛けのセリフが得意な人は誘惑小説が、ドSな男側の、女性をねちねちといやらしく責めるセリフが得意な人は凌辱小説が向いているようだ。
惜しむらくは、ほぼ少年視点だったことだ。言うまでもないが、三人称の魅力は視点を変換できることにある。女性側(特に熟女)の視点も読んでみたかった。心情(かっこを使った表現)自体も、終盤にいくに従ってどんどん減っていくのが気になった。

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つづいて、ノンフィクション部門の講評です。

『刑務所の性』(Rさん)

刑務所内では、雑誌の持ち込みで「月刊DMMと月刊NAOが人気だったが、(過激すぎるという理由で)NAOが禁止になった」という話はおもしろかった。禁止されている刑務所内での自慰行為をどうやるのか(布団を振動させないなどの涙ぐましい努力)。性欲の強さ=男としてのたくましさ、と見なされ、オナニー回数で雑居房での序列が決まる話も興味をひかれた。
余談だが、当編集部にも、刑務所から「目録を送ってほしい」というハガキがよく届く。官能小説は刑務所内で愛されているようだ。
ただ惜しむらくは、本作は「刑務所内での自慰マニュアル」という印象が強かった。「刑務所の性」とタイトルを打つ以上、もっと話を広げて、レズビアン(女囚)などのテーマも扱って良かったのではないか。

『ロリコンズ・サガ』(Yさん)

ロリコンの主張、ロリコンと二次元幼女、ロリコンと一般社会……見出しのひとつひとつが刺激的だった。どうして自分はロリコンになったのか、森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』を彷彿とさせる内容で、しっかりした考察に感銘を受けた。文章量、思考の深さ……最終選考に残った三作品のうち、もっとも「哲学のある」ノンフィクションを選べと言われれば、迷わず本作を推すだろう。
しかし――しかし、テーマがロリコンという……。このテーマをどう本(ビジネス)という形にしていくべきか、我々自身、まだ答えが見つけられないでいる。

『フェティシズムの人々 ~性癖百面相~』(Sさん)

さまざまなフェティシズムの項目を見出しに立てる辞典的な構成は、まさに本賞として待ち望んでいたものだった。実際にそのフェチを持つ人と遭遇した風俗嬢の体験談(インタビュー)は興味深く、文章量も申し分ない。フェティシズム辞典と呼ぶにふさわしい内容だった。
だが、考察部分に関しては、著者自身の見解よりも、他の本からの引用が多かったように思える。その点では、上記の「ロリコンズ・サガ」とは対極にあった。
「ロリコンズ・サガ」の哲学的な考察に、「フェティシズムの人々」のような風俗嬢のリアルな体験談が合体すれば、完璧だったように思う。言い換えれば、「フェティシズムの人々」の著者の取材力に、「ロリコンズサガ」の著者の考察力、批評力が加われば、受賞に届いたのではないか。

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たくさんのご応募、ありがとうございました。

次回の〆切は、11月末日です。
皆様の力作、お待ちしております。

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