初めて見た。未佳子のネグリジェ姿を。正確に言えば、こんなセクシーな格好の女性を見るのが初めてだった。
  未佳子が着ているネグリジェは、身体を隠す役には、まったく立っていなかった。でも、裸身を引き立たせ、柔肌を魅力的に見せるためには、これ以上ないくらい役に立っている。
  未佳子の、肉感溢れる肢体に沿って、透明な黒い布地が踊っている。喪中の貴婦人が顔にかけるヴェールよろしく、黒い透明なネグリジェは、未佳子の白い肌に秘めやかさを与え、艶かしい雰囲気を引き立てている。対照的に剥き出しの、腿の生肌はいっそう際立ち、無性に肉感的に感じられた。
  穿いているパンティは真っ赤で、ネグリジェの黒と生肌の白との、絶妙なコントラストも堪らなかった。もちろん股布はすけすけのレース仕立てで、押し花のようになった茂みの狭間に、未佳子の女の花びらが、ぐんにゃり甘くよれている。
  上はノーブラ……と、思ったのは真一の浅はかさで、未佳子はブラをしている。ただし、カップもすけすけだったから、ぱっと見では気づかなかっただけだ。ずっしり重たげな、やや下膨れの豊乳は、黒いヴェールに包まれて、その白い柔肌を、いっそう淫靡に色づかせ、堪らないほど魅力を増している。
  すでに勃起している乳首は、その鮮やかな桃色を、黒御簾の奥で艶やかに光らせていて、真一の視線を釘づけにしてやまない。
  つまりは、今、真一の前に立っている未佳子は、そのすべてが堪らなく魅力的で、視線をどこにやろうとも、真一に溜め息をつかさずにはいないのだ。
（でも、今日はどうして、こんなエロい格好なんだろう？　普段の未佳子さんは、Ｔシャツにパンティで寝ているはずなのに……ま、それも充分エロいけどさ）
  Ｔシャツの裾からパンティをちらちらと見せながら、真一の前でも屈託なく脚を組む未佳子も、もちろんとっても色っぽいけれど、今日のこの出で立ちは一味違う。言ってみれば、朝からすでに夜の雰囲気。
「なにをぼんやりしているの？……まさかとは思うけど、私たちの下着で変なことしてたんじゃないでしょうねえ」
  悪戯っぽく真一に訊くと、未佳子は物憂げな仕草で、少し寝乱れた髪をかきあげてみせた。つられた乳房が、黒いレースの向こうで、ぷるん……と、悩ましげに揺れる。乳房の周囲の空気が揺れて、谷間から立ちのぼってきた肌の薫りが、真一の鼻腔を刺激する。
「すう……はあ……ふう……あぁ、なんていい薫りなんだろう……あっ！　し、して、してません！　変なことなんか絶対にしてません！」
  一瞬遅れて真一が答える。あまりの絶景と薫香に、うっかり我を忘れてしまった。三十路半ばの未佳子の乳房は、若いそれより張りはないけれど、柔らかそうな下弦の丸みは、真一の目を奪うに充分な魅力を湛えている。それに加えてこの薫りだ。
  慌てふためく真一を、しばらく黙って未佳子は見ていた。真一の盛りあがった股間を見て、ほんのりと目の縁を赤く染める。
「……そうみたいね。一応は信じてあげるわ」
  近づいてきた未佳子を、濃くなった薫りで真一は知った。俯いていた顔をあげる。
  同時に──
「でも、ちょっぴりは、していたんじゃないかしら？　だって、こんなになっているんだもの……」
「あうぐ！」
  かすれた声で未佳子は囁き、真一の股間に右手でそっと触れたのだった。