3  薄暗い部屋に、啜り泣きの声が低く響きつづけている。美夏が泣いているのだった。  腸腔で荒れ狂っていた便意の名残りが、まだ心と身体を執拗に責め苛んでいる。その過酷すぎる生理現象をもたらしたのは、外ならぬ岡野だ。浣腸──そんな忌まわしい言葉が頭のなかで明滅している。  それを施された瞬間は、そのものがなんであるのか、またどんな結果をもたらすものなのか、想像することさえ不可能だった。嫌悪感で心は萎縮しきっていた。だから、岡野に抗いの素振りも見せられなかった。されるがままになっていた。  母が戻ってきた直後に、そのおぞましい兆候が湧き起こってきた。便意であった。一度意識してしまうと、それは急激に膨れあがってたちまちのっぴきならないものになった。必死に堪えても、自分の意志では抑えようがない。薬で強制されたものだからだ。  美夏は背中に岡野の意地悪い視線を感じつつ、トイレに駆けこんだ。眼にいっぱいの涙を溜めつつ、排泄をした。そしていま、岡野がいるダイニングルームには戻らず、自分の部屋で泣いているのだ。  ふいに背後に人の気配を感じて、美夏は振り向いた。 「どうしたんだい? 美夏ちゃんがいないんじゃ、パーティーの意味がないよ」  岡野だった。猫撫で声と同時に、部屋のなかが白々とした灯りで満たされる。  美夏は反射的に身体を固くした。歯を食いしばり、両手を強く握りしめた。肩が小刻みに震えている。涙がまた溢れだしてきた。 「なんだ、泣いてるのか。美夏ちゃんにはやっぱり早すぎたかな。でも、いち早く体験しちゃうことが、得てして好結果に繋がるものだからな」  岡野は冷めた口調で言って、美夏の肩を軽く叩いた。眼に薄嗤いが浮かんでいる。美夏の反応に満足しているのだった。  静まりかえった部屋のなかに、目覚まし時計の音がやけに高く響いている。その他に物音はない。緊張感の漂う静寂だ。 「勉強のつづきをはじめるよ、美夏ちゃん。準備はいいね?」  あやすように美夏の肩を撫でまわしていた岡野が、低い声で言った。 「いいです、勉強なんか……したくありません……」  美夏の声はか細い。気弱げに顔を左右に振り、啜りあげる。 「美夏ちゃんがしたくなくても、そういうわけにはいかないんだよ。それがおれの仕事なんだからね」  撫でまわしていた美夏の肩を、岡野は強い力で掴んだ。そのまま引っ張りあげた。 「いや、やめて!」  悲鳴をあげて、美夏は抗う。もう絶対に岡野の意のままにはならない。あんな惨めな思いをするのはいやだ。だが肩に走る激痛が、抵抗の意志を急速に奪い取っていく。 「泣いたってだめだ。美夏ちゃんを好みの女に仕立てあげることに決めたんだから」  骨太のごつい岡野の指が、美夏の細い肩に鋭く食いこんだ。 「きゃっ!」  肩の肉を抉り取られてしまうかのような堪えがたい痛みに、美夏は思わず立ちあがっていた。 「素直におれの言うことを聞いてれば、もう二度とこんな乱暴はしないよ。すべては美夏ちゃん次第だ」  背後から岡野が美夏の眼を覗きこんだ。 「こ、怖い……先生、怖い……」  これが岡野の正体なのだろうか。美夏は言いしれぬ恐怖におののく。 「だから、美夏ちゃんがおれの言うことさえちゃんと聞けば、痛い目を見ずに済むんだ。おれだって道理のわからない人間じゃないつもりだ」  岡野は強引に立たせた美夏の前にまわり、右手で華奢な頤を掬いあげた。もう一方の手で、頬に伝い流れている涙を拭い取り、泣き濡れた美夏の瞳をじっと見つめる。  邪な重圧に堪えられず、美夏は反射的に顔をそむける。また、涙が溢れてくる。一粒二粒とこぼれだし、頬を濡らしていく。 「綺麗な涙だな。この涙がもうすぐ、嬉し涙に変わるんだ。そのときが待ち遠しいよ」  優しげな口調で言った岡野が、右手を美夏の臀部に伸ばした。スカートを捲りあげ、裸の尻を剥き出しにした。 「いやっ!」  後退る美夏だが、そのときには岡野の腕にがしっと絡め取られている。ピクッとも身動きできない。ものすごい腕の力だ。 「こうやって撫でているだけで、美夏ちゃんのお尻はおれに安らぎを与えてくれる。しかもその谷間の奥には、愛らしい花を開きかけた禁断の蕾がひっそりと息づいているんだ。こんな素敵なお尻に巡り逢えたおれは、言葉では言いつくせないほどの幸せ者だよ」  岡野が指先を双丘の狭間に滑りこませた。巧みに尻朶を割りひろげ、太い先端をアナルに強く押し当てた。 「やめて! お尻はもう絶対にいや!!」  背中を反りかえして、美夏が悲鳴をあげる。排泄を済ませたばかりの肉襞は、きわめて敏感になっているのだ。ちょっと触られただけでも、熱感を伴った疼きが突きぬけていく。 「そうかな。さっきとは反応が違ってるんだけど。触ったとたん、おれの指を咥えこもうとしてる。自分でもわかるだろ?」 「そんなの出鱈目です……わたし、先生が思ってるような女じゃありません……」 「本当かな。それじゃ、もう一度試してみようじゃないか」  岡野がにたりと嗤い、指に力を入れた。 「ああっ、入れちゃだめ!」  わずかな痛みとともに、排泄器官が強引に押しひろげられていく感覚が走った。そのおぞましさに心がわななきだす。腰が痙攣する。立っていることが覚束なくなり、無我夢中で岡野にしがみついていた。 「ほら。先っぽを入れただけでこんなに感じちゃうんだよ。根元まで入れたら、どんなふうになっちゃうのかな。愉しみだ」  美夏の耳もとでそう囁いて、いったんアナルへの愛撫をやめた岡野は、その身体を軽々と抱えあげた。窓際にあるベッドまで歩く。マットの上に美夏を俯せの格好で寝かせた。  美夏は忙しい息づかいを繰りかえすだけで、抗いらしい抗いはまったく示さない。腰の上まで捲れあがったスカートの下に、瑞々しい臀部と太腿、しなやかに伸びた下肢がつづいている。肌は透き通るような白さだ。そしてその下には、少し磨いただけで光り輝くであろう女の命が秘められている。成熟にはまだ間がある少女のみが具有している、気品の漂う清らかな美しさだ。  美夏の可憐な姿に見とれていた岡野は、小さく頷いてベッドの端に腰をおろした。 「おれの審美眼に狂いはなかった。美夏ちゃんは本当に綺麗だ。それもただ綺麗というのじゃない。気品もあるし、愛らしさもある。すべての点において満点だ」  感に堪えたような声で言って、美夏の臀部に手を這わせる。ふっくらと盛りあがった双丘を、慈しむように、そして宝物を扱うような手つきで撫でまわす。 「いや……」  マットレスに顔を埋めている美夏は、弱々しく拒否の言葉を口にする。だが、それだけだ。アナルへの連続する玩弄が、抵抗の意志すら奪っているのである。 「さっきはちょっと乱暴だったから、今度は優しく心をこめて可愛がってあげるよ」  深く切れこんだ谷間に、岡野の指が差しこまれた。指先が無造作に、薄茶色の肉襞に触れる。抉りたてられた。 「あうん!」  美夏の腰がピクンと跳ねる。顔の横に置かれている手がギュッと握りしめられ、爪先までさざ波に似た痙攣が走り抜けていく。  ほくそ笑んだ岡野が、左手で美夏の左足首を掴んで引っ張った。 「い、いや……」  脚がひろげられ、太腿が割り裂かれる忌まわしい感覚が、美夏の意識を貫いた。悪戯されるのだ。羞恥が胸を灼いて湧きあがった。 「綺麗だよ、美夏ちゃんのお尻の穴。さっきはよく見えなかったけど、こうして隅々まで眺めさせてもらうと、形や色までよくわかるよ」 「見ないで……羞かしくて死にたくなっちゃいます……」 「いまはそんなふうに思うのかもしれないけど、いつかは自分のほうから見せたくなるんだろうな。美夏ちゃんにはそんな性癖が確かにあるようだ」  岡野の顔はますますにやけてきた。さっきは郁子の存在が気になって思うままに悪戯できなかったが、いまは違う。因果を含めてあるから、この部屋に郁子が来ることはまずない。思惑通りに邪な欲望を満たすことができるのだ。  さらに大きく美夏の脚をひろげた。それで谷間に見え隠れしていたアナルは、そのいじらしい形を岡野の前にすっかり曝けだした。 「十数分前に、ここからウンチが出ていったんだよな」  岡野が美夏のうなじに唇を寄せ、満足そうに囁いた。 「そんなこと言わないでください!」  襟足まで上気させて、美夏は叫ぶ。少女としてもっとも秘すべき行為をあからさまな言葉で口にされ、羞恥が一気に沸騰する。いったん止まっていた涙が、また溢れだす。 「羞かしいのかい? でもね、その羞かしさがいまに堪らない快感になるんだよ」  岡野の手がふたたび、臀部を這いまわりだす。フレッシュな果実にも似た艶やかな肌を揉みこみ、ときに指を食いこませる。 「絶対になるわけありません……わたし、普通の女の子です……」 「普通だからこそ、一度その快感を覚えてしまうと、病みつきになっちゃうんだ」 「そんなの嘘……先生の嘘つき……」  美夏は淫らで陰湿なからかいに、思わずシーツを鷲掴んだ。信頼していた岡野に裏切られたという思いは、堪えがたい失意を胸の裡に生じさせていた。 「嘘かどうかは、これから美夏ちゃんの身体が実際に証明することになるんだ」  言葉で少女を玩ぶ快感が、この男にはもうひとつの愉しみなのだろう。下卑た囁きはいっこうにやまない。呟くように言いながら、また指を谷間の奥に滑らせる。先端で狭隘な窄まりを何度もつつく。 「ああっ、だめっ!」  美夏が背中を弓なりにのけ反らせ、悲痛な喘ぎ声を迸らせた。 「指に食いついてくるよ、アナルが。ますます敏感になってきてるんだな。まったく鍛え甲斐がある。このおれが全力を傾注して、天下一品のアナルに仕立てあげてやるよ」  肉襞の周囲を撫でるように動いていた岡野の指が、ふいに蕾のなかに沈んだ。 「いや、入れないで!」  挿入感は途方もなかった。無理矢理押しひろげられる衝撃が、アナルだけではなく全身へとひろがっていく。眼も眩むおぞましさと、鋭敏な粘膜に走る灼熱の拡張感。束の間、目蓋の裏が青白くスパークした。 「さっきは少し入れただけだからな。今度はたっぷり時間をかけてみよう。例のものも試してみたいし」  岡野は根元まで指を沈めた。  太くごつい指を呑みこんだ肉襞は、わずかに膨れて息づく。指に絡みつくように収縮しながら、次の瞬間には鮮やかなサーモンピンクをのぞかせて捲れかえる。アナルマニアの岡野にとって堪らない眺めだ。  もちろん、美夏にとっては言語に絶する屈辱であった。羞恥とおぞましさを噛みしめ、このときが一刻も早く過ぎてしまうようにと心悲しく願うのみである。 「だいぶしっとりしてきた。だんだん、馴染んできてるんだ」  岡野は指をゆっくりと、抜き差ししはじめた。 「やめて……ください……お尻が、おかしくなっちゃいます……」  願いは虚しかった。挿入されただけでも苦しいのに、動かされては堪らない。抜かれるときには粘膜ごと引きずりだされてしまうような感覚に陥り、沈められるときには忌まわしい拡張感に震える。しかもそれが繰りかえされるごとに、排泄器官全体がますます熱くなってくるのだ。 「それが感じてるってことなんだよ、美夏ちゃん。いまはまだ経験が少ないからそう思えないだけで、いずれわかるときが来るんだ。そう遠くない時期にね」  岡野は上体を美夏の背中にかぶせた。アナルへの愛撫はつづけたまま、うなじに唇を押し当てる。匂いを嗅ぐように鼻をヒクヒクさせ、それから舌を這わせた。 「わかりません、そんなこと絶対に……」 「我を張ってられるのもいまだけだよ。どんな格好で美夏ちゃんが降参するのか。想像しただけでワクワクしてくる」 「勝手な想像はやめてください……先生がなんて言おうと、わたしは……」  そこまで言って、美夏は全身が総毛立つのを感じた。アナルに沈んでいる岡野の指が、腸壁を引っ掻くように動きだしたのだ。 「やめて! お尻、熱い!!」  敏感な粘膜が焼け爛れてしまいそうだ。心臓の鼓動にあわせ、ズキズキ疼きだす。そう感じる一方で、妖しい痺れも意識しはじめていた。指の動きが止まったときなど、束の間灼熱感も薄れ、その代わりにふっと得体の知れない物足りなさを感じてしまうのだ。 「どんなふうに熱いのかな? それって、案外気持ちがいいことだったりして」  岡野の舌はうなじから首筋、喉、頤へと移っていく。美夏は抗う術もなく、ただじっとその忌まわしい愛撫を受け入れている。 「正直になるんだよ、美夏ちゃん。初めての快感を心と身体で味わうんだ」  遊んでいる左手で岡野は、美夏の顔を強引に後ろへ向けさせた。唇を重ねた。  すぐに舌が滑りこんでくる。歯を食いしばる暇もない。息をつくことさえ不可能なディープキスだ。さんざん舌を玩ばれ、唾液を口腔に注ぎこまれる。 「むぐっ……」  嚥下する以外に方法はなかった。美夏は喉を上下させ、岡野の唾液を少しずつ呑み下していった。  重なったふたつの唇の間から、嚥下しきれなかった唾液がこぼれでて、シーツに滴り落ち染みをつくる。顔の横で握りしめられた美夏の拳が、ブルブル震えている。その震えが小さくなった頃、岡野が唇を離した。 「さ、そろそろ美夏ちゃんの本音を聞かせてもらいたいな。お尻をもっと弄って欲しくなってきたんだろ? おれの指をグイグイ締めつけてるもの」  美夏の顔を覗きこむ。薄嗤いを浮かべたその眼には、ゆとりがある。美夏が示す反応にこの男なりの手応えを感じているのだ。 「いや、締めつけてなんかいません……」  忙しく息をつきながら、美夏はかぶりを振った。岡野の言葉には絶対に頷かない。そう決心した。 「強情なんだな、美夏ちゃんは。でも、そのほうがいいかもしれない。初めから悦ぶ女なんか当然願い下げだ。それに、しぶとければしぶといほど、いったん悦びを覚えると、その虜になる確率が高いからね」  岡野がアナルへの卑猥な愛撫を再開する。円を描くように指をまわし、腸壁を擽る。抜き差しする。優しさの欠片も感じられない動かし方だ。美夏の口から屈伏の言葉を聞きだそうと、邪な思いでいっぱいなのである。 「だめ、そんなに弄っちゃ!」  美夏の背中にひときわ大きな痙攣が走り抜けた。双丘も太腿も、ひきつったように震えている。その白い肌が、内側から湧きでるように淡いピンク色に染まっていた。 「気持ちよくてだめなんだろう。な、美夏ちゃん。お尻の穴はそう言ってるよ」 「違います。わたしのお尻、先生が言うような変態じゃありません……」 「ということは、おれが変態なのかな。こんなに美夏ちゃんのお尻が好きになっちゃってるんだから」  岡野は嵩にかかって、アナルを愛撫する。性器など眼中にないような執拗さだ。薄茶色の肉襞をひろげ、そこに息を吹きかける。あまつさえ腸壁まで覗きこもうとする。 「ああっ!」  ガクンガクンと美夏の腰が跳ねた。救いを求めるように伸ばされた手が、シーツをギュッと掴みしめる。かぶりを振るたびに黒髪が波を打つ。狂おしいまでの挙措であった。  岡野が右手はアナルを玩びながら、左手をベッドの隅に伸ばした。そこには美夏へのバースデープレゼントが置かれてあった。素早くラッピングを破り棄て、細長い箱を取りだす。その箱から中身を出した。 「指で可愛がられるのも気持ちいいだろうけど、こいつを使うともっと気持ちよくなれるよ。眼を開けてごらん」  それを美夏の顔の前に持っていく。  美夏は恐る恐る眼を開いた。言われたとおりにしなければ、もっとひどいことをされるに違いないと思った。 「これ?……」  目の前にそれはぶら下がっていた。直径一センチくらいの小さな玉が、長さ二十センチほどの紐に、六個等間隔につけられてある。色は黒。美夏は胸を締めつけられるような不安を覚えた。岡野が取りだしてきたものは真っ当なものではない。指よりももっと気持ちよくなれる、と言っているのだ。 「面白そうなもんだろ。アナルビーズって言うんだ。ベテランになるとこんなものじゃとても満足できないけど、初心者の美夏ちゃんにはちょうどいい。試してみるだろう?」 「な、なにをするんです、それで?……」 「決まってるじゃないか。こいつを美夏ちゃんのお尻の穴に埋めるんだよ」  ニンマリと嗤った岡野は、アナルに沈めていた指を素早く引き抜いた。 「だめっ!」  美夏の唇から甲高い喘ぎ声が迸る。引き抜かれた瞬間に、甘美な感覚がアナルから背中へと突っ走ったのだ。さっきからつづいていた灼熱感が、それで頂点に達していた。 「準備はオーケーだな。充分に揉みほぐしたし。最初は痛いかもしれないけど、すぐに慣れちゃうよ」  アナルビーズの先端に少量のオイルを垂らした岡野は、指を引き抜いたばかりでちょっぴり口を開いている肉襞の真んなかに、淫具をあてがった。無造作に力を入れた。 「ああ、いやっ!」  美夏の背中が大きく反りかえる。一個目の玉はさしたる抵抗もなくアナルのなかに姿を消していた。 「も、もう入れないでください!」  淡いピンク色に染まった双丘がブルブル震える。指とは比較できない異物の挿入に、おぞましさが膨れあがる。 「そんなこと言ったって、お尻の穴は入れて欲しそうにヒクヒクしてるんだけどな。どっちを信じたらいいんだ、おれは」  下卑た冷やかしの言葉を口にして、岡野は二個目の玉を沈めた。外側に捲れあがった肉襞が、ツルリと玉を呑みこんだ直後、ピタッと口を閉ざす。うねるように収縮する肉襞はなにを訴えているのか。そして三個目。岡野の眼は陰湿な悦びにぎらついていた。 「ひどい……先生、ひどすぎる……」  腸腔を埋めつくしていくアナルビーズの呪わしい感覚に、美夏は新たな涙をこぼす。もうこれ以上は堪えきれない。気が狂ってしまいそうだ。だがそう思う一方で、さっきからつづいている灼熱感はいっこうにおさまる気配を見せない。 (どうして……どうしてこんなに熱くなるの?……)  おさまるどころか、別の妖しい感覚さえそこに生じさせてきていた。 「ひどいが、大好き、に変わるように、精いっぱい頑張るよ。愛する美夏ちゃんのためにね」  四個目、五個目。岡野は注意深く肉襞の動きを観察しながら、ゆっくり押しこんでいった。だが、六個目はなかなか入れようとしない。指先でアナルの周囲を撫でまわし、そのなかに呑みこまれている玉の感触を確かめるようにツンツンとつつく。 「いや……つつかないで……美夏のお尻、おかしくなっちゃう……」  美夏の声が弱々しくなっていた。息づかいだけが荒い。とぎれとぎれに言って、顔を左右に振る。ギュッと眼を閉じ、それから思いだしたように手を握る。ひとつひとつの仕種が、美夏の置かれている状況を具体的に表しているようであった。 「おかしくなっちゃう、を別の言葉に置き換えると、気持ちよくなっちゃう、じゃないのかな。ね、美夏ちゃん」  岡野はそう言ってから、いきなり六個目の玉をアナルに押しこんだ。慎ましやかに閉じあわさっていた肉襞が、息づくように捲れあがって玉をスルリと呑みこんだ。 「ああっ、いや──っ!」  掠れきった美夏の悲鳴が、部屋いっぱいに響いた。  腰が左右に捩れ、太腿に繰りかえし痙攣が走り抜けていく。額から噴きだした汗がシーツに大きな染みをつくっている。  心なしか、双丘のピンク色がその色合いを強めている。うっすらと汗ばんで、果実の瑞々しい芳香すらたちのぼっているようだ。仄かなセックスアピールが匂いたってくると言い換えてもいいだろう。十七歳の少女の臀部が、淫猥な玩弄を受けて熟しつつあるのだ。 「余裕を持って六個の玉を呑みこんだよ、美夏ちゃんのお尻は。わかるだろ?」  岡野がアナルビーズの先端についているリングを軽く引っ張った。 「だめ、引っ張らないで……もういや……先生なんて大嫌いです……」  美夏が涙で潤んだ眼で岡野を睨んだ。憎しみを漂わせた眼差しであったが、どこか焦点が定まってもいなかった。 「なにを言ってるんだ。ようやくお尻の勉強をはじめたばっかりじゃないか。これから幾つもの教程が待ってる。それをこなして美夏ちゃんは、一人前の女性に成長していくんだ」  岡野が勢いよく、アナルビーズを引っ張った。その瞬間、小さな音をたてて玉が肉襞のあわいから跳びだした。美夏のこれからの生き方を象徴するかのような、秘めやかで淫靡な響きを含んだ音であった。 (第一章 完)(つづきは電子書籍でお楽しみください)