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おいしい転職 女社長&年下の上司&元部下 1

 

プロローグ

 


「きみ、私の会社に転職する気、ない?」
 かつての上司からの誘いを、男は即座に承諾した。
「いいの? 自分で言うのもなんだけど、条件、そんなによくないわよ?」
 詳細を聞かされてもなお、彼の意志は変わらなかった。彼女とまた一緒に働ける。側にいられる。もう、それだけで彼にとっては最高の待遇だったからだ。
「また私の部下になってくれてありがとう。もう、絶対にきみを手放さないわよ、覚悟なさい。代わりに、特別な福利厚生、してあげる」
 さらに、転職先には男の想像と期待を上回る出会いが待っていた。
「あなたはずっと私の隣にいなさい。これ、上司命令よ」
 歳下で気の強い、けれど本当はとても可愛い上司。
「わたしへの新人教育、引き続きよろしくお願いしますね、センパイ」
 自分を追いかけてくれた、一途な元部下。
 この転職がどれほど甘く、おいしく、幸せなものであったかを男が知るのは、これから数ヶ月後のことだった。

 

1章 Jカップの美人社長「仕事以外でもあなたが必要なの」

 

(ん。もうそんなになるのか。慣れるとあっと言う間だなぁ)
 スケジュールの確認をしていた戸佐誠は、日付を見て、自分が転職してすでに四ヶ月が経過していたことに気づいた。
(入社直後は主任になにかと敵対視されて、しまった、この転職は失敗だったって後悔しかけたっけ)
 誠は現在三十六歳。これといった特徴もない、極めて平凡なサラリーマンだと自分では思っている。敢えて挙げるなら、営業職にしては少々強面なところが特徴だろうか。
(主任との関係も最近は良好だし、転職してよかった)
 誠は元々、東京のそれなりに大きな企業に勤めていた。自分なりに一所懸命に、誠実に働いてきたし、いい上司にも恵まれたおかげで、悪くない評価を得ていた。が、とある事件をきっかけに状況が激変する。
 有能すぎて一部から恨まれていた上司への悪質な妨害工作を咄嗟の機転で助けられたまではよかったが、事情を知らない周囲に誤解され、誠の評判は暴落。
(まー、俺がぼろくそに言われるだけなら別に気にしないんだが、そのせいで部下にイヤな思いさせるわけにもいかんしなー)
 まだ入社間もない、自分を慕ってくれていた新人を巻きこむのは本位ではないと、この部下が一人前になったのを見届けたあとで退職したのが一年半前。
『ね、私の作った会社に来る気、ある? 是非、誠くんに来て欲しいの。私が一番信頼してる、可愛い部下であり相棒だったきみが必要なのよ』
 再就職先がなかなか見つからず困っていたときに声をかけてくれたのが、誠より少し前に退職していたかつての上司で、現在所属する会社『アイ』の社長である矢代瞳だった。
『今はまだ私と、地元で採用した子の二人だけって小さな会社だけどね。こっちに引っ越してもらうことになるし、まだそんなにお給料も出せないと思う。でも、私はまたきみと一緒に働きたいの。なにより、あのときのお礼がしたいのよ』
 誠は迷わずにこの申し出を受けた。そして長年住み慣れた東京を離れ、『アイ』に転職してきたのだ。独身ゆえの身軽さもあった。
(あとは仕事頑張って、会社の業績伸ばして、給料アップしてもらえれば完璧だな。よし、今日も新規顧客開拓目指して、張り切って営業行くか!)
 いわゆる転職三ヶ月の壁と呼ばれるものも乗り切った誠は、改めて気合いを入れ直すのだった。

「うちの待遇に不満あるなら、正直に言って欲しいの」
 気合いを入れ直したその日の夜、誠は会社の食堂で、瞳からそんなことを言われた。食堂と称してはいるが、実のところは、瞳の自宅のダイニングキッチンである。社長である瞳は、古い一軒家をオフィス兼自宅として使っているためだ。
「は? なんですか、いきなり。もしかして先輩、それを聞くために俺を今日ここに呼んだんですか?」
 終業後にオフィスからそのまま移動したため、誠も瞳もスーツ姿のまま、テーブルで向かい合って食事と酒を楽しんでいた。
「まあ、目的の半分はね」
「残りの半分は?」
「んー、そうねえ……きみの転職四ヶ月目のお祝い、かな?」
 新人時代の誠の教育係であり、上司であり、そしてコンビの相手でもあった瞳は、悪戯っぽく微笑む。飲んでいるワインの影響か、ほんのり染まった目元や頬の影響で、妙に艶めかしく感じる。
「四ヶ月って、また中途半端な。絶対に今考えた言い訳ですよね、それ」
「ふふ、お祝いしたい気持ちは嘘じゃないのよ?」
 そう言って瞳が、誠のグラスにワインを注ぎ足してくれた。
(昔はよくこうして酒飲みながら仕事のこととか、色々教えてもらったっけ)
 しっかりと熟成された赤ワインを飲みつつ、誠は改めて目の前の瞳を見る。今年三十八歳になったはずだが、どう見ても歳下の誠よりも若々しい。
(そして、初めて会ったときからずっと綺麗だよなぁ、この人。というか、年々美しく、艶めかしくなってる感じだ)
 普段は凛々しさと知性を感じさせる切れ長の目が、笑うと一転、穏やかで人懐っこいものに変わるところは、出会ったときと変わらない。
(黙ってると有能そのものの美女、でも話すと気さくで、一気に相手との距離を縮める、まさにザ・人たらし。主任なんて、完全に先輩の信者だし。……あ)
「ん? どうしたの?」
「いえ、先輩と二人で晩飯食ってるなんて主任が知ったら、怒るだろうなって」
「ふふ、絵里ちゃんもあとで、ちゃんと食事にでも誘っておくわ。……彼女とは仲良くやれてるみたいね」
「俺は仲良くやれてると思ってます。主任には否定されそうですが、俺は楽しくやれてますよ。あっちは、歳上のおっさんが部下でやりにくいでしょうけど」
 主任の舟見絵里は、誠より六つ下の三十歳。現在の誠の直属の上司であり、営業でコンビを組む相手だ。絵里には入社直後からきつく当たられたが、少し前のとある出来事をきっかけに、誠への態度は軟化していた。
「大丈夫よ、端から見ててもいいコンビだもの、きみたち。新しい契約もどんどん取ってくるし、誠くんを採用して大正解ね。うちに来てくれてありがとう」
 尊敬する上司であり先輩であり現在の雇い主が頭を下げる。
「やめてくださいよ。お礼を言うのは俺のほうですって。なかなか転職先が見つからなくて困ってたところを拾ってもらって、本当に助かりました」
「きみのよさを見抜けないなんて、採用担当者の目が節穴なだけよ」
「あははは、そう言ってもらえると嬉しいです」
「お世辞じゃないわよ? うちに来てからの仕事を見て、さらにきみへの評価は上がったし。こんな小さな、地方のベンチャーに入ってくれてありがとう。業績は伸びてるとはいえ、まだまだかつかつだしねえ」
 瞳は謙遜するが、起業して間もないことを考えれば、『アイ』は上々の業績だ。最近では社員三人では手が回らないほどに取引先も増えている。
「それで話題を戻すんだけど……誠くん、うちの待遇に不満があるなら、正直に言ってちょうだい。直せるところはなんとか頑張るから。今、きみに抜けられると困るし、なにより、寂しいもの」
 そう言って瞳はぐっと身を乗り出し、誠の顔を覗きこんできた。
(うっ! 近い近いっ。先輩、相変わらずパーソナルスペースが狭いな!)
 目の前に迫った瞳の整った顔立ちと鼻腔をくすぐる甘い香りに、誠の心拍数が上がる。暑くなってきたのかシャツのボタンを一つ開けているせいで、胸元がちらりと見えたのも誠を惑わせた。
(目の毒すぎるっ。ただでさえとんでもない巨乳なんだから、もうちょっと自覚して欲しい。俺を男として見てないんだろうけどもっ)
 瞳は長身でスタイル抜群だが、特に胸部の膨らみが規格外だった。
「転職なんて、まったく考えてないですよ」
「ホントね? 残ってくれるって、信じていいのね? 信じちゃうわよ?」
 すとん、と椅子に座り直した瞳が、少し安堵した表情を浮かべる。この程度の動きでも、シャツの下の圧倒的な膨らみが重たげに揺れるのが悩ましい。
「ええ、もちろん。俺も信じますよ、突然クビにされたりしないって」
「うふふ、当面は大丈夫よ。きみや絵里ちゃんが頑張ってくれたおかげで、だいぶ売上も伸びてるもの」
「引き続き、頑張らせていただきます」
「うん、よろしくね。……じゃあ、私も社長として、上司として、もっと頑張らないとダメ、よね。有能で可愛い部下をがっちりキープしておきたいし」
 瞳は新たにワインを開けながら、なにかを決意した顔でつぶやく。
「先輩はすでに充分頑張ってるかと」
「ありがとう。まあ、そうね、仕事はそれなりにね。頑張らないといけないのは、社員への待遇面。今すぐの給与アップはまだ難しいけど、福利厚生はなんとか改善したいところよねぇ」
「この料理も、立派な福利厚生だと思いますよ」
 テーブルには、瞳の手料理がいくつも並んでいる。どれも美味だった。
「これでも人妻経験者だしね。私、なかなか尽くすタイプだったのよ? 意外でしょ?」
 瞳は十年前に結婚したのだが、四年後に離婚している。
「別に意外とは思いませんよ。先輩、昔から優しいし、面倒見いいし」
「なぁに、社長をおだてても、給料は上がらないわよ? ない袖は振れないもの。こっちはいくらでも振れるのにね」
「ぶふぶっ!?」
 瞳は自らのたわわなバストを両手で持ちあげると、たぷたぷと揺すり始めた。突然の、そして予想外の行動に、誠は飲みかけのワインを噴き出してしまう。
「わわっ、大丈夫!?」
「す、すみません……えっ!?」
 ハンカチで拭こうとした誠の動きが止まる。台ふきんを手にした瞳が誠の傍らで膝をつき、濡れたシャツやズボンを拭き始めたせいだ。
「ちょっ、あっ、じ、自分で拭けますっ」
「遠慮しないで。私が面倒見がいいって言ったの、きみじゃないの。……あー、盛大にぶちまけたわねえ。染みになる前に処理してあげるから、脱いじゃって」
「えっ。いや、大丈夫ですって。あとでクリーニングに出しますし」
「ワインの染みはさっさとやらないとダメなの。これは社長命令よ」
「……わ、わかりました」
 こうなったときの瞳は絶対に折れないと知っている誠は、渋々と頷いた。

「涼しげで羨ましいわ」
「涼しい通り越して心細いです」
「贅沢な部下ねえ。あんまり文句ばかり言うなら、私のバスローブ、返してもらおうかしら?」
「それは勘弁してください」
 シャツとズボンを脱いだ誠は今、瞳に貸してもらったバスローブを着て、ダイニングキッチンで再び酒を飲んでいた。ワインの染み抜きが終わらないと、帰るに帰れないからだ。
(先輩がいつも使ってるバスローブ……っ)
 さすがに下着は着たままだが、それでも素肌に触れる柔らかな生地とバスローブのいい匂いに、どうにも落ち着かない。
「ふふ、なにそわそわしてんの。それくらいしかサイズ合う服ないから、諦めてちょうだい。……でもよかったわ、明日がお休みで。染み抜きと乾燥が終わるまで、だらだら飲みましょう。昔、よく二人でやってたようにね」
「あー、そうでしたね。あなたに散々、連れ回されましたっけ」
「きみ、お酒強いもの」
「先輩ほどでは」
「人をうわばみみたいに言わないでくれる?」
「みたいに、じゃないでしょ。底なしでしょ、瞳さん」
「さすがに弱くなったわよ。歳だもの。おばさんだもの。だって三十八よ、アラフォーよ? しかもバツイチの。……はあぁ」
 誠と自分のグラスにワインを注ぎ足しながら、瞳が大きくため息をつく。
「どこがですか。酒に弱くなったなんて全然感じないし、相変わらず若々しくて美人のままですよ、先輩は。いや、むしろ前より綺麗になってるくらいです」
 憧れの女社長と二人きりで飲んでいる状況のせいか、誠は普段ではなかなか言えないようなセリフを口にできた。
「さすが私の育てた敏腕営業ね。セールストークも巧みじゃない」
「勤務時間外なんで、完全に個人の意見として言ってますよ」
「ふうん。だったら聞くけど、それってどの程度の評価? どれくらい私のこと、美人だと思ってくれてるのかしら? ちなみにこれ、仕事にも関連してるから、お世辞は却下。真面目に、具体的に答えてちょうだい」
「はあ。……具体的、とは?」
 ワインを飲みつつ、誠が尋ねる。
「簡単よ。私を女として抱けるかどうかって話」
「ぶふぶぶっ!?」
 誠は口に含んでいたワインを、再び噴いてしまった。グラスの中に噴いたおかげで被害は広がらなかったのは不幸中の幸いだった。
「噴くくらい、あり得ないって評価なのね。なるほど。やっぱり、若い子のほうがいいものね」
 うんうんと、瞳が鹿爪らしい顔で頷く。
「違います! 驚いただけです! あなただったら、文句なしに、だ、だ」
 抱けます、と口にするのはさすがに憚られたため、誠は言い淀む。
「だ? なに? 文句なしに、なぁに?」
 瞳はくすくすと笑いながら、じっとこちらを見つめてくる。
(あ。わかってる。この人、完全にわかってて俺をおちょくってるな?)
 からかわれっぱなしは悔しいので、誠は少し反撃することにした。
「文句なしに抱けますよ。あなたほどの美女相手なら、夜通しでも抱けますね。俺、こう見えて結構な絶倫なんで」
 言ってから恥ずかしさが込みあげてきた誠は、先程噴いてしまったワインを一気に煽る。勢いがありすぎて、ワインが口元に垂れてきた。
「……へえ、そうなんだ。ふふ、それは初耳ね」
 一瞬、目を大きく見開いた瞳がすっと手を伸ばし、誠の口元を指で拭う。そして、指についたワインをぺろりと舐め取る。ワインよりも赤い舌と、こちらをじっと見つめる妖しい笑みは、ぞくりとするほどの色香があった。
「ねえ。さっきも言ったけどね、私、頑張ってくれてる社員の福利厚生を充実させたいなって、ずっと考えてたのよ」
「は? それはまあ、社員としてはありがたいですが」
 二転三転する話題に、誠は戸惑いを隠せない。
「だけど、さっきも言ったように、ない袖は振れないの。残念ながらね」
「今はその気持ちだけで充分ですよ」
「ううん、それじゃ、私の気が済まない。だからね、社長である私の身体で払うってのは、どう? 袖はないけど……こっちなら、いくらでも振ってあげられるもの」
 豊かな胸を両手で持ちあげ、腰を艶めかしく振る憧れの女社長の媚態に、誠の肉棒はバスローブの中で激しく勃起していた。

「服、全部脱いでちょうだい。もちろん、下着もね」
「は、はい」
 寝室に連れてこられた誠は一瞬だけ躊躇したものの、素直に瞳の指示に従った。
(よし。ここまでは計画どおり。お布団、よし。勝負下着、よし。むだ毛のお手入れ、よし。あとは、アラフォーのバツイチ女に、誠くんが満足してくれるかどうかね。……さっきの言葉、信じるわよ? 勃たなかったら、怒るわよ?)
 こちらに背を向け、服を脱いでいく誠をじっと見つめているあいだに、瞳の緊張、そして期待も高まってきた。
(給料を上げられない代わりに身体で払うなんて、強引すぎたかな? でも誠くん、私のおっぱいとかよく見てたし。せっかく仕事も軌道に乗ってきたところで有能で可愛い社員に辞められたら困るし。あのときのお礼もしてないし)
 誠の引き留め。前職で身代わりとなって恥を掻いてくれたことへの礼。どちらも瞳の目的なのは嘘ではない。だが、それと同じくらいの比重で、肉体の疼きを鎮めたいという願望もあった。
(結婚してたときはセックスにあんまり興味なかったのに。女は歳を取ると性欲が強くなるなんて、俗説だと思ってたのに)
 これから始まる淫らな福利厚生を想像し無意識に腰を揺らしていると、誠がすべての服を脱ぎ終わった。
「ぬ、脱ぎました、先輩」
(誠くんとこんなふうになるなんて、あの頃は想像もしなかったな)
 部下であり、相棒でもあった男の裸体を前に、瞳は誠と初めて出会った十三年前のことを思い出していた。
「ふふっ」
「な、なんですかっ。俺の身体、なにかおかしかったですかっ?」
「違う違う。ただの思い出し笑いよ。……きみ、なかなかいい身体してるのね。筋トレしてるんだっけ?」
「まあ、健康目的で。男はおっさんになると、筋トレしたくなる生き物なんで」
 筋骨隆々というほどではないし、アスリートのように贅肉が削ぎ落とされているわけでもない。中年らしく、腹部は多少ぽこんとしている。しかし、男の、牡の逞しさを感じさせる誠の裸身から、瞳は視線を逸らせなくなっていた。
「それが、噂の絶倫棒ってわけね。……ほら、隠さないで」
 下げた視線の先には、なかなかの角度でいきり勃ったペニスがあった。包皮から露出した亀頭は、早くも先走り汁で濡れていた。
「そ、そんなに見られると、さすがに恥ずかしいんですがっ」
「いいでしょ。私も男の裸見るの、ずいぶんと久しぶりなんだもの。もうちょっとしっかり見せてちょうだい」
「久しぶり、なんですか?」
「別れた夫とはレスが長かったしね。離婚したあとも退職の引き継ぎやら起業の準備やらで、男なんか作る暇、なかったし。だから……四年ぶりくらい?」
 口にしてから、瞳は自分の言葉に驚いた。と同時に、若干の不安も覚えた。
(四年。四年? 私、そんなにしてなかったの? え。大丈夫? ちゃんとできる? 指とかローターよりずっと太くて大きいわよ、誠くんのアレ)
 瞳はもう一度、誠の股間のイチモツを見る。さっきと比べ、勃起の角度が鋭くなっているように見えた。
「四年ぶりのおばさん相手に、なに、盛ってるのよ。あんまり期待されると困るんだけど。イヤよ、勝手に期待されて失望されて、露骨にがっかりされるの」
「ご安心ください。俺があなたに失望することだけは絶対にありませんので」
 牡竿を揺らしながら、誠が一歩、近づいてきた。
「根拠は?」
「俺、ずっとずっとあなたに憧れ続けてきたんです。絶対に手が届かない、高嶺の花だと思ってた先輩を相手に、失望なんてあり得ません」
 誠は瞳を見つめたまま、さらに一歩、踏み出してくる。手を伸ばせば互いに届くほど、二人の距離が縮まる。
「仕事で一人前になって、先輩と肩を並べられる存在になったら告白を……とか考えてたんですが、間に合いませんでした」
「……!」
「あなたが結婚すると聞いたとき俺がどんだけ絶望したか、話しましょうか?」
 誠が自分に好意を持ってくれているだろうとは薄々感じていたが、実際に言葉にされると、その破壊力は強烈だった。
「俺だって諦めようと思ったんです。でも、人妻になったあなたはさらに魅力的になった。だから俺は、仕事のパートナーだけは他の誰にも譲るまいと頑張ったんです」
「そう、だったの。ごめんね」
「いえ、先輩が謝る必要はないです」
「ううん、違うの。そこまで憧れてくれたのは嬉しいけど、今の私はきっと、きみの期待を裏切っちゃうと思うから」
 誠の告白に胸を熱くしながら、瞳は着ていた服を脱ぎ始めた。シャツとタイトパンツを脱ぎ捨てると、今夜のために散々悩んで選んだローズレッドのランジェリーと、ガーターベルトストッキングが露わになる。
「……っ!」
 目を見開き、息を呑む誠の反応に、瞳はまず安堵し、そしていくらかの自信を得た。その自信を糧に、何度も脳内で繰り返したプランを実行に移す。
「これが、ない袖の代わりに振る予定のおっぱいよ。振るというか、揺するって感じだけど」
 シックな、けれどセクシーなデザインのブラに包まれたJカップの豊乳を、両手で持ちあげるようにして揺する。若い頃に比べて柔らかさを増した乳肉が波打つ様に、誠が瞬きすらせずに見つめてくれるのが嬉しかった。
(ああ、見てる、すっごく見てる……! 恥ずかしいけど、それ以上にどきどきしちゃう……っ)
 たまに誠からの視線を感じたことはあったが、ここまで真っ直ぐに見つめられたのは、もちろん今回が初めてだ。羞恥を上回る興奮に背を押され、三十八歳の女社長はブラのホックを外す。
「と、歳を取るとね、若い頃に比べて、どうしてもトップが下がっちゃうのよ。ブラの助けがないと、みっともなく垂れちゃうの。がっかり、しないでよ?」
 誠ならば大丈夫と信頼していても、ついつい、言い訳が先に出てしまう。
「俺ががっかりするなんて、あり得ませんっ」
「ホントでしょうね? 嘘だったら、減給するわよっ」
 照れ隠しに冗談めかして誠を睨んだあと、瞳は思い切ってブラを外した。巨大なカップに押しこまれていた乳房が、重たげに揺れながら露わになる。
「おおっ!」
 声を上げた誠の股間で、勃起がびくりと跳ねたのが見えた。
「す、す、凄い……ああ、凄い……大きくて、綺麗で……と、とにかくその、最高です、先輩!」
 三十六歳のいい大人が、まるで童貞少年のように狼狽え、感動してくれるのがたまらなく嬉しかった。
「昔、教えたでしょ? 報連相、つまり報告・連絡・相談は大事って。特に報告は具体的になさいって。……私のおっぱい、どんなふうに凄いの?」
 誠の反応にさらに自信を得た瞳は、両手で己の爆乳を交互に持ちあげ、誠に賞賛の言葉をねだる。
「信じられないくらいに大きくて、そのくせ形も綺麗で、色も白くて、乳輪の膨らみ具合がエロくて、要するに、極上のおっぱいかと!」
 普段は落ち着いた物腰の部下をここまで興奮させている事実に、胸と子宮が熱を帯びる。エロいと称された乳輪の中央で、突起が浅ましく尖り出す。
「ふふっ、ありがと。その様子なら、可愛い社員への福利厚生になれそうね、私の身体。……そこに仰向けに寝てちょうだい」
 当初のプランでは、ここで誠に胸を触らせる流れになっていた。だが、瞳は予定のショートカットを選んだ。自分がこれほどまで昂ぶり、余裕をなくすとは、想定外だったためだ。
(今、おっぱいいじられたら、絶対に流されちゃう。普通にセックスしちゃう。それじゃあ、ダメ。これはあくまでも福利厚生なんだから。仕事のためなんだから……っ)
 詭弁だとわかっていても、この大前提は崩せなかった。もしこの建前をなくしてしまったら、ずるずると快楽に流される恐怖があったのだ。それはすなわち、瞳が誠を男として意識していることの裏返しなのだが、本人にその自覚はない。
(大丈夫。私が上になって主導権を握れば大丈夫……!)

(おおおっ! 下から見ると、さらにド迫力っ!)
 命じられるまま布団に横たわるとすぐに、瞳が誠を跨いできた。圧倒的な量感のバストに、勃起しっぱなしのペニスから次々とカウパー氏腺液が溢れ出る。
「きみはじっとしててね。あとは全部、私がしてあげる」
 ちらりと誠の怒張を見た瞳が、ブラに続いてショーツを脱いだ。綺麗に処理された逆デルタのヘアと、早くも外側に捲れた肉厚な陰唇に、誠は呼吸を忘れて見入る。
(これが、これが先輩のマ×コっ)
 誠の亀頭ほどではないものの、元人妻の花弁は間違いなく濡れていた。微妙に左右非対称の小陰唇が妙にエロティックで、乳房とどちらを見るか迷ってしまう。
「こら。あんまりじろじろ見ないの。年増にだって、ううん、だからこそ、羞恥心はあるのよ?」
(ああ、頬を赤らめて恥ずかしがる先輩、可愛い……!)
 普段は凛々しい女社長が見せるレアな表情も、誠の視線を引き寄せる。ただ呼吸をするだけでも揺れる爆乳、ひくひくと蠢く女陰、そして初々しさすら感じさせる美熟女の羞じらいの顔、そのすべてが蠱惑的だった。
「じゃあ……挿れるから……ん……んんん……!」
 そんな誠をよそに、瞳は肉棒を己の秘口へとあてがい、早くも腰を落とし始めた。小さな膣穴と鈴口が触れ合った瞬間、誠は今さらながらその事実に気づく。
「ちょっ、先輩、待って! いきなり挿れるんですか!? いや、それよりもゴム! ゴム、着けてないっ!」
「もう濡れてるし、平気。あと、自分の周期くらい把握してるに決まってるでしょう? きみは余計な心配せず、じっとしてればいいの。給料の不足分、ちゃんと味わいなさい……んっ……あっ、おっき……硬ぁ……くうぅ……んふン!」
 口ぶりとは裏腹に、瞳は挿入にやや苦戦していた。狭い窪みに先端が嵌まるものの、そこから先になかなか進まないのだ。
(久々って、本当だったのか)
 かつて人妻だった歳上の美女が、まるで性経験に乏しい少女のように焦る様は、妙に扇情的だった。尊敬する上司のそんな姿に、誠の愚息はいっそう体積と硬度を増していく。
「こ、こら、なにまた膨らませてるのよ、きみはっ。もう、こんなにがちがちだなんて思わなかったわ……あっ、ああっ、入る、今度こそ入る、入っちゃうぅ……ンン……はああアアァッ!」
 がに股で誠を睨みつけていた瞳が、ついに挿入、そして結合に成功した。最も太いカリが呑みこまれるとそのまま腰を落とし、一気に肉筒を根元まで咥えこむ。
「ウウッ!?」
 今度は、誠が呻く番だった。
(忘れてたが、俺も久々だし、生も初めてだぞ!? それも瞳さん相手に……っ)
 憧れの女社長の媚粘膜は、三十六歳の中年男に童貞のごとき反応をさせるほどにキツかった。ただ狭いのではなく、充分に潤った膣襞が蠢き、勃起を締めつけてくる。
「アアッ、届いちゃってる……私の、一番大事なところにぃ……」
 大きく開脚したまま、瞳が自分の下腹部を撫でる。確かに、先端にこりこりとした感触があった。
(こ、これが先輩の子宮……ッ)
 瞳の最も神聖な器官に触れていると思った刹那、腰が勝手に浮きあがっていた。
「あふっ!? ちょっと、落ち着きなさいってば! 言ったでしょ、こっちは四年ぶりなんだからっ。オチン×ンに馴染むまで少し我慢なさいっ!」
 だが、瞳にぺしりと胸を叩かれた誠は、慌てて動きを止める。瞳に無条件で従ってしまうのは、新人時代から変わらぬ条件反射だ。
「そう、しばらくじっとしてて……ン……ン……はっ、はっ、はあぁ……ン」
 瞳は目を瞑り、指先でさわさわと誠の胸板を撫でながら、息を整える。挿入直後は痛いほどだった締めつけが若干柔らかくなり、代わりに、ペニスを包む膣壁の蠢きが活発になってきた。新たに分泌された愛液で、潤みも増す。
「大丈夫、ですか?」
「ええ、もう、だいぶ慣れてきた……というか、思い出してきたから。きみはなにも心配せず、リラックスしてなさい」
 この言葉どおり、瞳は腰を前後に揺らしてきた。その動きはかなりスロー、かつ振幅も狭い。しかし、瞳同様にブランクの長かった誠には、充分すぎる快感だった。
「あうっ!? あっ、ぐっ、うああぁ!」
「ふふ、どう? それなりに気持ちイイでしょう?」
 誠の喘ぎ声を聞いた瞳はまず安堵の表情を、続いて艶めかしい微笑を浮かべた。
「それなりどころじゃないですっ。うっ、ううっ、締まる……ああっ、ぬるぬるでキツキツでぇ……ああぁ!」
 誠の反応で自信を得た瞳が、動きを加速させた。へこへこと腰が前後するたびに、蜜壺に包まれた剛直から凄まじい愉悦が生み出される。また、たわわな乳房が重たげに揺れる光景も誠を昂ぶらせた。
(ちょっとでも気を抜けば出る……!)
「我慢しないで。これは福利厚生、つまり経営陣による社員への接待なの。遠慮せず楽しまないと、損よ?」
 感覚を取り戻したのか、瞳の表情に余裕が見え始めた。大胆に股を開き、淫らに尻を振り、さらには誠の乳首を指でかりかりと引っ掻いて、追い立ててくる。
「そ、それダメですっ、ずるいです……ウウッ」
「きみ、乳首、弱いんだ? 感じてる顔、可愛いわよ。ふふっ」
 瞳は目を細め、嵩にかかって誠を責める。最初はキツさと同時に硬さも感じられた膣道が急速にほぐれ、絶妙の力加減で勃起を包む。位置が下がってきたのか、亀頭と子宮口の密着度も上がった。
(このままじゃ、マジで出る……先輩のマ×コに中出ししちまう……ッ)
 憧れの女上司の子宮に己の精液を浴びせる。それは誠にとって抗いたい誘惑だった。だが、それをするのは今ではないはずと、歯を食いしばり、肛門に力を入れてぐっと堪える。
「あら、無理しなくていいのに。いいのよ、いつイッても。きみがその気なら何度でも、一晩中だって相手してあげるし」
 誠の様子を見て己の優位を確信したのだろう、瞳が新たな攻勢をかけてきた。
「ああっ、捲れちゃう……きみの、太すぎよぉ……ンッ……すっごぉ……!」
 瞳は腰の動きを、それまでの前後から上下へと切り替えた。たっぷりと愛液をまぶされた牡杭が膣内を出入りする光景の淫靡さに、誠はただただ呻き、震える。
(俺のチ×ポが、先輩のマ×コにしごかれてる……くうぅっ、なんだこの穴、めちゃくちゃ気持ちイイ……っ)
 最初の躊躇が嘘のように、瞳は大胆に尻を揺する。逆ピストンの速度はどんどん上がり、リズミカルに腰が打ちつけられる。互いの股間がぶつかるたびに、ぬちょぬちょと淫靡な水音が立った。
「あっ、あっ、これイイ、イイ、たまんない……久しぶりのセックス、たまんないのよぉ……! はああぁ、思い出しちゃうのぉ、身体が、女の幸せ、どんどん思い出してるぅ……はっ、はっ、あはっ、はああぁん!」
 スイッチが入ったのか、瞳の動きは激しさを増す。凛々しく、理知的な女社長が豊乳を揺らし、淫水を飛び散らしながら男の上で腰を振る痴態に、誠はもはや抗えなくなっていた。
「せ、先輩っ、出る、出る、からっ……待って……本当に出る……ッ」
 理性を振り絞り口にしたセリフは、しかし、瞳を余計に煽ってしまう。
「いいわよ、出しなさい、思い切り私の中にぃ……アアッ、きみの欲望もストレスも全部、私が受け止めてあげるぅ……あっ、あっ、凄いっ、また膨らんだぁ……んっ、んっ、早く、早く出してぇ! はああぁッ!!」
 誠の射精を促すために動きを加速した瞳自身も、絶頂に向かって昇り始めた。誠の胸に両手を置いたまま、全力で腰をぶつけてくる。蕩けた膣襞に包まれ、締めつけられ、しごかれる法悦に、誠はついに限界を迎えた。
「先輩、イキ、ます……出ます……ぐっ、ぐっ、ふぐっ……!!」
 布団の上で仰け反ると同時に、堪えに堪えた白濁汁を吐き出す。
「あっ、あっ、私も一緒にイク……アアッ、イック……イク……ッ……!」
 部下の子種を膣奥に浴びせられた直後、麗しき女社長もまた肢体を仰け反らせ、アクメに達した。射精の勢いが削がれるほど、膣口が強烈に窄まる。
(俺、今、先輩に中出ししてる……あの瞳先輩に……っ)
 爆乳を見せつけるかのように胸を突き出した格好の瞳を見上げながらの膣内射精は、誠の三十六年間の人生で最高の快楽だった。