単なる辛口にとどまらない、独自のファッション観に基づく理論的な批評の前では、誰もがひれふす。では官能の分野はどうなのだろう? 取材当日、歯に衣きせぬ豪快なトークとともに吐き出された言葉の数々は、幼少時代、さらにはクリエイターとしての環境が大きく影響した、非常にユニークなものであった。
俺の場合はもともと二枚目ではないから、例えば中学のときに後輩の女のコがキャーキャー言っていたとかっていう、そういう憶えはないな。でも地元の中学で一番美人って言われてた医者の娘がいたんだけど、どうやら彼女は俺のことが好きだったみたいなんだよな。またその女のコっていうのがすごくてさ。とにかくズバ抜けて美人なんだ。さっき言っていた感じで、鼻の穴は縦穴で、口もとが色っぽくてっていう。あと何がすごいって、桁外れのお金持ちだったの。いつも運転手付きの送り迎えがいて、遠足のときなんか、当時は珍しかった外国産のチョコレートやクッキーを持ってきたり。あとバナナが1本100円くらいする時代によ、一房まるごと遠足に持ってきちゃうんだから、笑っちゃうよね(笑)。
ちなみにそのコはその後モデルになって、医者かなんかと結婚して六本木で優雅な生活を送ってるらしいんだけど。もうね、そういう恋愛はいっぱいあった。文化服装学院に行ってるときもあったね。あれだけ大勢いる中でキレイなコが何人かいるわけですよ。そのコらはやっぱり俺に関心があったわけだね。
そんな中でも大恋愛的なものは、20~30代だったらやっぱりあるよね。そういう頃ってすごく人間的に未熟だから、すぐに惚れたり飽きたりっていうことがあるじゃない? 経験も浅いから。もうアツくなっちゃって、当時つき合ってたコの家の、二階によじ登ちゃったことだってあるからね。そうしたら当たり前だけど、向こうのお父さんが怒っちゃって(笑)。俺なんか酔っぱらった勢いで「僕は娘さんが好きなんです!」って言っちゃったりしてさ。でも、結局別れたんだけどね。
ある日、会わなくなった女のコが、家にセーターを忘れたっていうから届けたんだ。そのとき彼女は風邪をひいてて、今だに憶えてるんだけど彼女が「ゴホンッ!」って咳をした瞬間に、俺の手の甲にツバが飛んだの。2~3週間くらい前ならぜんぜん何とも思わなかったのに、その瞬間は「なんだよ、汚ねえなあ~」って(笑)。何? この俺の変わり様!?(笑)。考えたらさ、恋愛なんてお互いがアツくなって魔がさしてるだけなんだよ。だって冷静になって見れば、黄ばんだような汚い歯とかに吸いついたりするんだぞ(笑)。信じられないよ、まったく。