男と女の性欲のピークは? 人はなぜ浮気をするの? どうやってセックスの相手を決めるの? 長続きするカップルのひけつは? 動物の行動を見ていると、人間が見えてくる!? 男と女の性を動物行動学エッセイスト・竹内久美子さんに語っていただきました。
プロフィール 竹内久美子
動物行動学エッセイスト。1956年愛知県生まれ。京都大学理学部、同大学院博士課程を経て著述業に。専攻は動物行動学。著書に『そんなバカな!』(講談社出版文化賞科学出版賞受賞)、『同性愛の謎 なぜクラスに一人いるのか』(文春新書)、『女は男の指を見る』(新潮新書)など多数。
「あの人にはフェロモンがある」とか、「恋しているとフェロモンが出てる」とか、よく言いますよね。このフェロモンの正体が最近、わかってきたんです。
男性は男性ホルモンの代表格であるテストステロンが、女性は女性ホルモンの代表格であるエストラジオールが、それぞれ少しだけ構造が変化し、揮発性を帯びた物質が、その正体でした。匂いとして感じられない濃度のものでも脳には作用する。
恋をしていると、ノルアドレナリン、ドーパミン、フェニルエチルアミンなどの神経伝達物質もよく分泌されます。それに刺激されて、フェロモンも分泌されるのかもしれません。いずれにしても、こうした物質はたくさん出ていたほうが健康にはいいんです。
男性の場合、男性ホルモンのテストステロンと免疫力と魅力というのはセットになっています。テストステロンは顔の下半分を伸ばすので、男っぽい人はエラが張っていたり顔が長かったりする。ところが、男っぽい人に限って、中年になって急に病気になるんですよ。あまり男っぽくない華奢な男性のほうが長生きする傾向にある。これは男っぽい人が中年になって、免疫力は下がっても、テストステロン・レヴェルが下がらないのでバランスが崩れて病気になりやすくなるのではないかと思うんです。松田優作さんや市川雷蔵さんなどが典型的ですね。
このテストステロンは女性にもあります。男性ホルモン、女性ホルモンは男女それぞれ、両方もっているんです。性欲の強さというのは、テストステロンのなせる業ですが、男性は10代後半がピークで、そこからだらだらと下がってくる。一方、女性は若い頃はそうでもなくて、30代半ば以降、性欲が強くなる。