男と女の性欲のピークは? 人はなぜ浮気をするの? どうやってセックスの相手を決めるの? 長続きするカップルのひけつは? 動物の行動を見ていると、人間が見えてくる!? 男と女の性を動物行動学エッセイスト・竹内久美子さんに語っていただきました。
プロフィール 竹内久美子
動物行動学エッセイスト。1956年愛知県生まれ。京都大学理学部、同大学院博士課程を経て著述業に。専攻は動物行動学。著書に『そんなバカな!』(講談社出版文化賞科学出版賞受賞)、『同性愛の謎 なぜクラスに一人いるのか』(文春新書)、『女は男の指を見る』(新潮新書)など多数。
多くの女性たちは、とびきりいい男と結婚するわけではなく、そこそこで手を打つわけですね(笑)。それでふたりくらい子どもができると、浮気願望が出てくる。ただ、女は男のように、ことあるごとに浮気を試みるようなことはしない。これぞと思った、少なくとも夫よりいい男しか相手にしないのです。これはイギリスの調査なんですが、女が浮気するときは排卵期で、アリバイ作りのために無意識のうちに夫とも交わる。そしてこれまた無意識のうちに、浮気相手にはより受胎の可能性の高い日に交わっているという結果が出ています。
ここでおもしろいのは、子どもがひとりいる女性が浮気する確率はきわめて低い。しかし、ふたりいる場合はかなり高くなる。なぜなら、もし3人目が浮気相手の子だとばれたとしても、夫は万が一、妻に3人目だけ連れて出て行かれたら、ふたりの子どもたちの面倒をみきれない。だから、しかたなくまとめて3人の子を面倒みるようになる。夫との間の子が多ければ多いほど、浮気相手の子も面倒を見ざるを得なくなるという状況になるからです。
女は、排卵を自覚していません。だいたいこのあたりの日にちとわかっても、実際に「今、排卵した」とわかる人はいないんです。これは、おそらく排卵がわかったら、女は怖くて浮気なんてできなくなるからではないでしょうか。あるいは、女自らが完全なバースコントールをするようになって、生まなくなるからかもしれません。
排卵というのは不思議なもので、恐怖や痛みで促されることもあるんです。ラッコは鼻、ミンクは首筋をかみながら交尾しますが、これは痛みでメスが排卵することが本能的にわかっているからでしょう。
人間にも似たようなことがあって、ショートヴィジットの効果というのですが、たとえば第一次、第二次世界大戦のときに、ドイツ兵が1日だけ休みをもらって家に帰った。その後、そのときに妊娠した子がどっと生まれているんです。女性のすべてが排卵期にあったとは考えられない。ラッコやミンクと同じで交尾が引き金となって排卵が起きた「交尾排卵」なんです。交わったことで、本来、排卵日ではないのに排卵する。こういうことはよくあることです。