役員秘書・涼子と美沙 6
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「どうだい、縛られた気分は」
ベッドの脇に立った吉岡の眼前には、人の字型に括りつけられた涼子のなまめかしい肢体があった。以前から夢見ていたシーンが現実のものとなっているのだ。
屈辱と羞恥に耐えきれない表情で、大きく開かれた美脚を少しでも閉じ合わせようと身悶えする涼子のスレンダーなボディが、吉岡の嗜虐心をますます刺激する。
「さて、それじゃあたっぷり楽しませてもらうぜ。いつも高倉の奴はどういうふうにするんだ?」
ベッドに腰をおろし半身を涼子の上半身に覆いかぶせ、無骨な指先で艶やかなセミロングの髪を弄びながら尋ねる。それは、猫が捕らえた獲物を嬲る姿に似ていた。
「そんなこと、知りません」
涼子は吉岡に対する嫌悪感を隠そうともせず顔をそむけた。
「憧れの相沢涼子ちゃんは、どこが感じるのかじっくり調べさせてもらおうかな」
吉岡が取りだしたのは、いかにも柔らかげな毛でできた刷毛だった。
脂ぎった顔を涼子に近づけ、美しい貝殻のような耳朶から首筋へ刷毛の先を走らせた。
「ひいっ」
くすぐったさとおぞましさが溶け合った異様な感覚に、涼子の身体が震えた。
「たっぷり時間をかけて感じさせてやるからな」
吉岡は丹念に何度も何度も、毛先を同じところへ走らせていく。
涼子は悔しさと恥ずかしさに美貌を引きつらせて、刷毛の刺激に必死に耐えようとしている。
「いいんだぜ。感じはじめたら声を出しても。そうだ、もっとリラックスできるようにしてやろう。さあ、キスしようぜ」
吉岡が唇を吸おうと顔を寄せていくと、
「いやあっ、やめて。誰があなたなんかと」
涼子は激しくかぶりを振って抵抗する。
なおも強引に顔を近づける吉岡の顔面に、ペッと涼子の唾液が吐きかけられた。
「卑怯者っ」
吉岡を睨むその眼には、以前見せたのと同じ軽蔑の色が宿っていた。
「そうだ、その眼だ。その眼で見られた時に俺は君をこうしてやろうと決めたんだ。専務秘書さんはやっぱりそれくらいプライドが高くないとな。でもどこまでその眼をしていられることやら。すぐに自分のほうからキスしてくれってせがむようにしてやるぜ」
顔面を拭うと吉岡は再び刷毛を操りはじめる。
なだらかな肩から、スレンダーな身体の割りには意外なほど豊かでふくよかな胸の隆起へと柔らかい毛先が移動してゆく。ブラジャーの縁に沿って何度も刷毛を往復させると、
「こんな邪魔なものは取ってしまおうな」
強引に涼子の背とベッドの間に腕をねじこんでブラジャーのホックをはずし、細い腕に絡みついた肩紐を、小男には似つかわしくない力でちぎり取った。
「ああっ……いやっ」
悲鳴が涼子の口からもれ、見事な双丘が露わになった。
「綺麗なおっぱいだ。いつも高倉に揉まれまくってこんなに大きくなったのか」
「ああっ、高倉さんのことは言わないで……」
刷毛の先が涼子の真っ白な乳房を這いまわりはじめた。谷間から頂きの近くへ、そしてまた麓から引き締まった脇腹のほうへと、毛先が時には強く、時には弱く、緩急をつけて自由自在に走りまわる。その容赦ない責めを受けるにつれて、涼子のなかでおぞましい感覚が微妙に変化を見せはじめていた。
高倉の優しい唇でキスの雨を注がれた感覚が思いだされてくる。
「あ、くうっ」
どんなにこらえても、頭が感じているおぞましさとはまったく別の部分で、若い身体は微妙に反応をはじめつつあった。
吉岡が操る刷毛は、美しい双丘を執拗に責めたてていたが、その頂きにある綺麗なピンクの蕾だけは慎重に避けて、ほとんど触れようとはしなかった。一番敏感な部分を避けてねちっこく繰りかえされる愛撫は、若い涼子にとってどうにも焦れったく、その焦れったさがかえって性感をかきたててくる。
「どうした、感じてきたんじゃないのか」
「そ、そんなことありませんっ」
美しい顔を右に左に振って懸命に否定する。だが、その頬は紅潮しはじめている。
ぎりぎりのところで自分を制してはいるものの、涼子は吉岡の意地の悪い巧妙な淫技が、必死に閉じようとしてきた自分のなかのパンドラの箱を、少しずつこじ開けつつあるのを感じていた。
「こうされたいんじゃないのか」
刷毛の先が、ついに愛らしい乳首をすっと撫であげた。
「はんっ」
小さな声をあげて、全身を軽くのけぞらせる。
「ほら、もう硬くなりはじめてるじゃないか」
毛先は一転して蕾のあたりを集中的に責めはじめた。
今まで焦らされていただけに、その刺激は二倍にも三倍にもなって涼子の感覚を責めたててくる。見るみるうちに小さな二つの突起は硬くしこりはじめた。
「はあっ……んっ……いやん……」
押し寄せる快感の波に抗いきれず、意志に反した甘い声が出てしまう。
「あーあー、こんなに乳首をおっ勃てちゃって。我が社のアイドルさんはずいぶん感度がいいんだな」
「ひ、ひどいわ……あんっ」
「じゃあこういうのはどうかな」
図に乗った吉岡は涼子の敏感な乳首をつまむと、ゆっくりと指先でこねまわした。
「くっ……くうんっ……」
涼子のしなやかなプロポーションが、若鮎のようにピクンと弾けた。額にはうっすらと汗が浮かびはじめ、柔らかな前髪が数本貼りついている。
「今度は下のほうだぜ」
残忍ささえたたえた毛先は、次第にコントロールを失っていく涼子をあざ笑うかのごとく、形よくくびれたウエストラインをなぞって腰から太腿のほうへと移動していく。
「いつ見てもたまらない太腿だ。こうなったのも、こんなに綺麗な脚をしてる君が悪いんだぜ。いつもいつも見せつけやがってよ」
見事に張りつめたすべすべした白い太腿を、膝から付け根のほうへと、胸を責めた時以上の執拗さで、丹念になぞりはじめた。
「そんなっ、見せつけてなんかいません」
確かに、涼子自身何度も綺麗な脚だと誉められたことはあったし、まんざら自信がないわけでもなかったが、男に見せつけるなどという感覚はまったくなかった。活動的な洋服が好きだから、たまたまミニスカートを身に着ける機会が多かっただけなのだ。それが、この狂った卑劣漢の劣情を刺激することになってしまうとは。
涼子は妖しい刷毛の感触に耐え、懸命に拘束された美脚を少しでも閉じ合わせようとする。
吉岡は抱きつづけたフェティッシュな欲望を剥きだしにして、夢中で刷毛を美しい太腿に這わせつづける。
「あ、いやっ」
毛先が、閉じ合わされた内腿の、ほとんどパンティラインに近い付け根の部分をとらえた時、涼子の身体が電流が走ったように震えた。思わずそむけられた顔には、せつなさと困惑がないまぜになった表情が浮かんでいる。
「ははん、ここが感じるのか」
吉岡に答えることなく、涼子は美しい眉根に皺を寄せ唇を噛みしめている。
内腿のその部分は涼子のウイークポイントだった。それを知る高倉は何度も優しく愛撫を繰りかえして、涼子を快感の海に溺れさせてくれた。
さっきからの胸への愛撫で散々焦らされているところにウイークポイントを突然責められたのだから、どんなにこらえようとしても涼子の身体が敏感に反応してしまったのは無理もないことだった。
「お願い、そこはやめて」
「そんなこと言っちゃ、自分でここが感じますって教えてるのと同じだぜ」
吉岡は嵩にかかって、その部分を重点的に責めはじめた。涼子を狂わせるためには、いつまでも焦らすよりも、直接的に責めたほうがいいと判断して、刷毛を投げ捨てると、指先で腿の付け根の部分をなぞりはじめた。ゆっくりと撫であげたかと思うと、突然分厚い唇を押しつけ白い内腿を吸いあげる。
「あんっ……あんっ」
刷毛の焦れったい刺激から、直接的な愛撫への転調に戸惑いを隠しきれない涼子は柔らかな髪を振りたて、しなやかな身体を二度三度とのけぞらせた。
この瞬間を夢見ていたのだ、と吉岡は思った。思い焦がれて何度もマスターベーションに耽った、あの相沢涼子の太腿をこうやって心ゆくまで舐めしゃぶっている。しかも焦らしつつ嬲る自分のテクニックに、涼子は想像以上の敏感さで反応しているのだ。
求めつづけた高嶺の花が、間もなく自分の手のなかに落ちようとしている。吉岡の心は嗜虐の快感に震えた。
(ここはクールな卑劣漢になりきって、涼子をもっと精神的にいたぶってやろう)
仕事はまるでできないくせに、悪知恵だけはどこまでもよくまわる吉岡だった。
「まったく、高倉の奴がうらやましいぜ。こんなに感度のいい身体をさんざん独り占めしてきやがってよ」
吉岡は太腿の付け根にキスの雨を注ぎ、白い肌を唾液でぐしょぐしょにしながら、高倉を引き合いに出して涼子の屈辱感を煽りたててくる。
「ああ、高倉さん。助けて」
「いいのかい、本当に高倉が助けに来ても、こんなところを見られちゃうんだぜ」
「ああ、もう許して」
「高倉のことなんか忘れちまえって。その分思いきり感じさせてやるからよ」
染みひとつない艶やかな両の内腿を舐めしゃぶり、その味わいを堪能した後で、吉岡は涼子の脚を強引に開いた。
「なんだ、もう濡れてきてるじゃないか」
「嘘っ、そんなことありません」
涼子の言葉とは裏腹に股間を覆う小さな布は、先ほどからの執拗な愛撫に、かすかに湿り気を帯びて、柔らかげに盛りあがった丘の部分にぴったりと貼りつき、クレヴァスの形を浮き彫りにしていた。
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