女帝陥落

「やっ、やめてッ、なにするの？　ああ、そんな……ぬ、脱がさないでッ」
　女帝と呼ばれる日本有数の企業グループの社長が、薄暗い寝室のベッドの上で頼りない少女のように啼いていた。肌の白さを引き立てる喪服の下から現れたのは「はかなさ」とはほど遠い、胸も腰も見事に発達したウルトラボディだった。
「ショ、ショーツまで取るなんて、ゆるさないっ。今すぐやめないと、ほんとにクビにするわよッ。わかってるのっ？」
　身体の自由をなくし、口から出るのはすでに細くて艶めいたかすれ声だというのに、その口調はいまだ強気で誇りを失っていない。自分より年上の重役連を遠慮なく叱りつけるときの迫力は、彼女のなかに健在だった。
「これが、恵梨香さまのオマ×コですか……ああ、なんて綺麗なんだ。これを見るなと言うほうが、無理ですよ。しっかりとビデオに残さなくては｣
「ヒイイッ、やめてっ……やめなさいと言ってるのよッ。それ以上っ、イヤらしいこと言わないでっ、もうッ」
『オマ×コ』というふだん聞きなれない単語を聞いて、恵梨香の全身がさらに濃い桜色に染まる。怪しげな薬のせいで、抵抗しようにも手足の先にまったく力が入らず、全裸にひん剥かれた身体を細紐でベッドに拘束されるがままだった。
「じつはこの年齢になるまで、女の裸はずいぶんと見てきましたが、恵梨香さまほど見事な裸は他に知りませんな。さすがは女帝さまだ、フフフフ｣
「あああっ、イヤッ」（な、なんてことっ、言うのッ!?）
　素っ裸の肢体を大の字に広げられるのさえ、舌を噛みたくなるほどつらく恥ずかしいのに、そのすべてを床に設置したビデオカメラで、余すところなく撮影されているのだ。それもヴァギナに生えそろった悩ましい陰毛の一本一本まで。
「いやいや。ほんとに素晴らしい裸ですよ、恵梨香さま。オッパイは山のように盛りあがって崩れるところがないし、腰のカーブは見事なＳ字を描いて男を誘ってくる。スベスベした太腿はまるで大理石のようで、その頂点にあるオマ×コの形ときたら、それはもう……」
（……ま、またオマ×コって言ったのッ、この男っ!?）
　その卑猥な単語を恵梨香の肉体に強く摺りこんでやるとでもいうように、的場はわざと何度も耳元で繰り返す。両手両足をはりつけ状態にされた恵梨香は、ゆいいつ自由になる首から上を、懸命に揺さぶって身悶えするしかない。
「フフフ……恵梨香さまのお年齢にしては、ややおとなしめですな。肉ビラのはみ出しも少ないし、色もどぎつくない綺麗なピンク色だ。これだけ足を開いても、なかからパックリ割れてこないとは、恵梨香さまは案外、男遊びをしてこなかったらしい……結構なことです」
「ヒイイッ……やめてッ、やめてッ、やめてえぇッ」
　セックス経験の少ない女にとって、顔から血を噴きだしそうなほど猥褻極まりない女性器への批評。動揺のあまり、下半身を卑猥に揺さぶって悶えるところまで、しっかりと録画されている。解説を加えながらカメラのレンズを股間の一点に集中してくる的場の冷酷さが、恵梨香を芯から苦しめるのだ。
「それでいて、クリトリスはなかなか大きいじゃないですか。皮をかぶっていても、ココをしっかり押すと、簡単に剥きあがる……クククッ」
　ツルンッ……。「ヒイイィーッ……やっ、やめてっ、お願いッ」
　的場の長い指先が、包皮に包まれた陰核の根元を軽く押すと、ツヤツヤした恥玉がひと息で姿を現す。衝撃のあまり恵梨香はついに、男に哀願していた。
「アアンンッ……いやッ」