20年ぶりに再会した佐知子は今も若く美しかった。
人妻の憂いや潤みが麗しさを際立たせていた。
ホテルのベッド、昔の恋人と睦み合う夢のような午後。
長い空白を感じさせない抱擁以上に衝撃的だった肛交……
それは篤志の脳裏に巣くっていた倒錯の終着点でもあった。
妻には秘密で快楽を貪る男が求める、甘く危険な失楽園。
さちこ(40歳)人妻
やすこ(37歳)人妻
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「二十年ぶりに拝ませてもらうよ」
佐知子の身体からシーツを剥ぎ取る。
「そういう言い方、よして」
一瞬、不愉快そうな表情を示したものの、剥きだしにされた身体を、篤志の視線からかばおうとはしなかった。
「ごめん。でも……ああ、すごい。綺麗だね。全然……」
頭の先から爪先まで、まるで絵画でも鑑賞するかのように、ゆっくりと丹念に見まわして、感嘆のあまり、思わず佐知子の気に障りそうな言葉を吐きそうになり、あわてて口をつぐむ。
「少し太ったでしょう。それに、胸も大きくなってるはずよ」
「太ってなんかいないよ。胸は確かに……」
言われてみれば、全体がかすかにふっくらとしたような気もしないではなかったが、もともと細身の身体だ、あお向けになって両腕をあげ、両手を頭の下に組めば、胸板が張りだして肋骨の輪郭が浮き立ち、腹部はぺっこりと窪み、骨盤と陰部の膨らみをくっきりと描きだした光景は、二十歳の頃の身体と寸分違わぬように見えた。乳房は胸の上で肉を平たく延ばされてながらも、必死にまろみを保って、張りつめた白い肌から静脈を透かし見せていた。
篤志は手をあてがい、肉を寄せ集めるようにして手のひらに包みこんでみる。指の間から肉があふれ、確かにひとまわりボリュームを増したかのように感じられた。
「子どもにずっと触られてたら、大きくなってきたの」
「ふうん。そういうものなんだ」
篤志はなんとなくホッとして、指で乳首を摘んでみる。
「ああっ」
佐知子はすぐに嗚咽をもらして身を捩る。乳首がみるみる勃起して、乳房の上にツンと尖った。子どもに吸われた乳首が過敏になることは、康子のもので実感済みだった。
「あなたもずいぶん肉がついたんじゃない」
佐知子は頭をもたげて篤志の体に目をやり、片手を腹部に伸ばしてきた。
「十キロも増えたからね」
篤志の手が佐知子の身体の探索に出る。触診でもするかのように、手指に神経を集中させて、ひと触れごとに感触を懐かしむかのように、ゆっくりと佐知子の身体を撫でまわしていく。
「綺麗な肌だ」
肌の白さ、肌理細かさ、滑らかさは、昔のままだった。手のひらにしっとりと馴染んでくる感触に、篤志はうっとりと浸ってしまう。これほど丁寧に女体を手で愛でたことは久しくなかった。
目を閉じて、愛撫の手にじっと身を委ねた佐知子に、篤志はいまさらながら、ようやく昔の恋人と再び性を結ぶことになりつつあるのを、夢が現実になりつつあることを実感するのだった。
「嘘みたいだ、君とまた、こんなふうにできるなんて」
下腹部にこんもりと盛りあがった繊毛の草むらを手のひらに包めば、感きわまって篤志は、佐知子の身体に口をつけずにはいられなくなる。
「ああっ」
それまでの穏やかさから一転して乳房にかぶりつき、女陰を鷲掴んでくる狼藉に、女体が戸惑い、嗚咽する。
「ああ、君が……君が好きだ……」
篤志はまるで青春時代に戻ったかのような激しさで、猛り狂ったかのような勢いで、佐知子の全身に接吻の雨を降らしていった。