「第31回フランス書院官能大賞」(2023年5月末日締切分)において、
最終選考を通過した作品を発表します。
編集部で厳正な審査をおこなった結果、下記の通り決定しました。
※ ペンネームが記載されていた場合は、ペンネームのイニシャルです
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■大賞
該当作品なし
■新人賞
「『少子化対策の福利厚生【セクシャル休暇】の相手に俺が選ばれたので、新入社員や上司と濃厚なセックスを楽しむお話』」(Zさん)
■特別賞
該当作品なし
■eブックス賞
「俺の担任で女教師が性癖合いすぎだったので、従順メス犬にして孕ませデキ婚した話。」(S.Hさん)
「おうち風俗 ~叔母家族の家でセックス三昧~」(Aさん)
「聖女の托卵」(S.Iさん)
■ノンフィクション部門
該当作品なし
■e-ノワール賞 ※タイトル50音順
「愛人を囲う冷徹な伯爵との典型的な政略結婚、そして嫌われからの溺愛、その結末。」(宝楓カチカ)
「薊の娘は淫らに眠る」(双真満月)
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●受賞作講評
■新人賞
「『少子化対策の福利厚生【セクシャル休暇】の相手に俺が選ばれたので、入社して半年ほどの新入社員や上司と濃厚なセックスを楽しむお話』」(Zさん)
少子化対策で政府が導入した「セクシャル休暇」。
主人公は、入社して半年ほどの新入社員や、仕事のできる美人上司に「お相手」に指名されて……という物語。
とにかく読後感が抜群だった。設定に頼りすぎることなく、ちょうどいいリアルさを保ちつつ、しっかりとした濡れ場を描けていたことに、作者の確かな力量を感じた。
「eブックス賞で」という声もあったが、フランス書院文庫の読者層でもあるサラリーマンに届けたいと考え、新人賞受賞に至った。紙の本になった際、本作がどのように受け止められるか今から楽しみでならない。
■eブックス賞
「俺の担任で女教師が性癖合いすぎだったので、従順メス犬にして孕ませデキ婚した話。」(S.Hさん)
マッチングキャンディの力によって、担任女教師の秘密の性癖を知り、生徒である事を隠して近づき牝犬調教を始めて……という物語。
教師としての表の姿と、性癖の赴くままに振る舞う裏の姿の対比が鮮烈だった。リードを付けての学校散歩や、尻尾ローター調教など、趣向を凝らしたシチュエーションやプレイに非凡な才能を感じた。男性主人公の支配欲とヒロインの従属願望をこれでもかと丁寧に描写していたため、二人が結ばれるシーンにはエロスだけではなく感動すらおぼえたほどだ。
秘められた性癖、抑圧の解放、支配され征服される悦び……ヒロインの心の流れが十二分に表現されている本作を、eブックスの読者に一刻も早く届けたいと考えている。
■eブックス賞
「おうち風俗 ~叔母家族の家でセックス三昧~」(Aさん)
新一年生・剛一の居候先はまさかの爆乳一家。
肉感溢れる三人の美女たちに囲まれたドキドキのおうち風俗生活が始まる……。
まず、続きを読みたいと思わせる期待感を途切れさせずに丁寧につなげていく、序盤の巧みさに驚かされた。定番の同居モノではあるが、爆乳一家というインパクトがある設定で他の投稿作との差別化に成功し、学校、部活先で次々と現れる魅力的な女性たちに心を鷲づかみにされた。特に各章末に構成された複数プレイのシーンでは、濃厚な密着感が惜しみなく描写されており、この作品ならではの個性が発揮されていた。
新天地で出逢う女性へのワクワク感溢れだす新生活を、若き主人公と共にeブックスで是非満喫していただきたい。
■eブックス賞
「聖女の托卵」(S.Iさん)
異世界に召喚された主人公が、その世界の勇者に代わって美しき姫・レティシアと子作りをすることを依頼されて……というお話。
ヒロインである姫、聖女レティシアの可愛らしく淫らなキャラクタ造型が見事。明快なワンテーマを濡れ場たっぷりに一気に描ききり、お話としての面白さが際だつ作品だった。主人公、勇者、姫……それぞれのキャラの事情、心情を描き分ける筆力も高く評価した。
満場一致でeブックスでの配信が決定した本作を、多くの読者の皆様に体験して欲しい。
以下、惜しくも受賞を逃した作品の講評です。
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「鬼畜整体師 森村誠のカルテ」(K.Mさん)
美容施術と称したマッサージで巧みに開発されていく未亡人秘書が、葛藤の中で次第に快感に流されていく過程が素晴らしかった。整体師の巧みな話術で非日常的な店内と日常的な自宅の境界を曖昧にされたヒロインが、戸惑いつつも堕ちていく様子を描ききった筆力は見事だった。
ただ「鬼畜整体」といった限定された空間だけでなく、日常の世界や人物の関係性の中でのシーンも読みたかった。また、女性の心情的な描写だけでなく、男性視点での女体への触感など、肉体を感じさせる描写にもっとこだわりをみせて欲しかった。
「プライベートトレーナー・雫」(M.S.さん)
フランス書院eブックスでは現在類のないM男モノの小説である。
男の見ている情景がありありと浮かび上がってくるような豊かな描写から、作者の確かな力量が感じられた。煽り文句や佇まいからも雫の主人としての格が漂ってきて、キャラクタの造型も非常に魅力的だ。未知の快楽に耐え切れずいいなりになる男性のマゾ性が見事に表現されており、今まであまり扱っていなかった種類の官能ではあるものの大いなる可能性を感じた。
投稿サイトでの連載作品で、本作は未完の物語である。現在二人の関係性に揺らぎが生じており今後の展開に不安が残るため受賞には至らなかった。今後の展開に期待したい。
「クラス転移したのにいきなり追放!? ~実は両想いだった巨乳美少女とイチャラブハーレムを作ります~」(Yさん)
異世界転生ものの大長編。
投稿サイトに掲載されていることもあり、読者を飽きさせないつくりになっており、一切のストレスなく読み進めることができた。このテンポの良さは、著者の大きな武器だろう。
ただ、本作でこその個性があまり感じられず、今回受賞には至らなかった。水準のレベルを突破していることは間違いなく、なんらかの形で皆さんにご紹介できる方法がないかと考えている。
e-ノワール部門受賞作の講評です。(ペンネームで表示します)
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「愛人を囲う冷徹な伯爵との典型的な政略結婚、そして嫌われからの溺愛、その結末。」(宝楓カチカ)
タイトルからは昨今のテンプレのひとつでもある〝ヒロインに対して無関心だった冷たい旦那様に溺愛される〟話だと予想しがちですが、実はそれはミスリードで、このパターンかと思わせてからの予想外な展開に驚きました。
いわゆる〝ざまぁ展開〟が待ち受けている本編のほか、別視点&エピローグのお話、前日譚を読むことでより登場人物たちや物語の切なさ・やるせなさを際立たせてくれるので、作品全体としての完成度が非常に高かったです。
メリーバッドエンド(読み手によってハッピーエンドにもバッドエンドにも受け取られる結末)に属する作品で、話の題材としてもかなり読み手を選びますが、今までのTL小説で読んだことのない斬新さと衝撃を与えつつも胸に残る切なさは唯一無二だと感じました。
「薊の娘は淫らに眠る」(双真 満月)
政略的に結ばれた夫婦がすれ違いつつも想いを重ねていく作品。
ヒーローのセリフや言動からヒロインへの好意を感じ取りながらも確信には至れない描写が魅力的でした。
すれ違いものが好きな人にはたまらない展開が盛りだくさんで、近づいたと思ったらまた距離ができてしまう二人に焦点を当てながらも気づけばストーリーそのものに引き込まれます。
読み進めるにつれてヒーロー問わず登場人物たちの心情に気づいた時や、終盤の舞踏会からの展開には驚きつつも爽快感すらあり、しっかりと作り込まれた世界観やキャラ作りがあってこその読書体験を味わえました。
お互いがお互いを深く愛しているからこその結末と、読み終わった後にタイトルを見返したときの幸福感も非常に心地よかったです。
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「第32回フランス書院文庫官能大賞」の〆切は2023年11月末日です。
選外となった皆様もふるってご応募ください。
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