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今月の放言

エロはこっそりがいい。 でも一人の時は大胆に、公の時は小心者で。 みうらじゅん

直筆短冊

おのれの究極のエロを求めてエロスクラップを作り続ける男、みうらじゅん。その活動領域は21世紀へ向けてますます広がりを見せる。彼の性に対するその姿は真摯であり、そしてアブノーマルでもある。自らのエロの起源を赤裸々に語った180分。ためらいのない性社会に向けて、ラブ&アブノーマルなメッセージがここにある。

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プロフィール みうらじゅん

本名:三浦純 1958年2月1日京都生まれ。武蔵野美術大学卒業。大学在学中に月刊マンガ誌『ガロ』でデビュー。現在漫画家、エッセイスト、イラスト、ロックなど幅広く活躍中。人生哲学からお笑い、下ネタ系まで内容も多岐にわたる。また造語「マイブーム」が97年流行語大賞を受賞。自身のマイブームを世に広めている。著書として「アイデン&ティティ」「マイブームの魂」「カリフォルニアの青いバカ」「青春ノイローゼ」「ボク宝」、いとうせいこうとの共著「見仏記」シリーズなど多数。

第2章 状況に興奮するんだよね

そういえば昔小学校にあった、男の子がセミのように切なげにしがみついていたのぼり棒。今はないね、どうしたんだろう?誰かが変なこと覚えたから失くなったんだよ、きっと。俺のオナニーは、自慢じゃないけどちょっと早いよ。小学校3年生の時から始めてるからね。でもその頃はまだ出ないんだよね。イクのはイクんだけど。

あとオナニーする時はいつも裸。俺、一人っ子だったから家族から注目を受けていたので、何回も何回もオナニーを見つかったんだよ。親から「そんなところばっかり触ってると、終いには膿が出るぞ」って言われて、中学1年の時、とうとう出たんだよね。ザーメンだったけど。「親の言うことは正しいなー」ってつくづく思ったね。

俺、家のいろんな所にエロ本を隠してたんだよね、応接間にあった「チボー家の人々」っていう世界名作全集の中身を抜いて隠してたら、普段は誰も触りもしないのに、大晦日に見つかっちゃってさあ、それ。えらく怒られて、終いには「焼け」って言われてね。うちの実家は昔、五右衛門風呂だったから、薪と一緒にエロ本も火の中に入れてたの。…切なくてねえ。おのれのエロネタで沸かした風呂に入っている自分が…。この時だね「いつか東京に出てやる」と思ったのは。俺の自立心はエロ本からだから。あの時代のいいネタ持ってたんだよ、俺。だから、ごっそり自分のネタをリュックに押し込んで東京に出て来たね。

俺の友達はエロネタを大切にしないヤツが多くて、抜けばもう飽きたってネタを捨てるヤツが多かったんだよね。…これは良くないと思ってね。だから俺はそれをきれいに破って保存しておいたんだよね。今思えば、これがエロスクラップの起源だね。今じゃ、スクラップも74巻目だからさ。やっぱ継続は力なりだね。

東京は神田とか行けば、いっぱいエロ本があったでしょ。もうビンビンなんだけど、わざわざ神田まで行って「あっあー、もうだめだー」と思って結局、神田の公衆トイレでしばしば抜いたこともあったね。

でも一人暮らしだから、もちろん親も来ないじゃない。そしたらだんだんオナニーが面白くなくなっちゃって。「これはいかん!」と思ってね、当時住んでいたのは角部屋だったんだけど、部屋の窓を敢えて全部開けて、机の下に隠れてやったんだけど、これは燃えた。やっぱり、これだなあーと思って。俺はおかんに見つかるかどうかドキドキしながら、オナニーするのが好きだったから。何かを見てと言うより、状況に興奮するんだよね。

エロはこっそりがいい。 でも一人の時は大胆に、公の時は小心者で。 みうらじゅん02
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