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今月の放言

エロはこっそりがいい。 でも一人の時は大胆に、公の時は小心者で。 みうらじゅん

直筆短冊

おのれの究極のエロを求めてエロスクラップを作り続ける男、みうらじゅん。その活動領域は21世紀へ向けてますます広がりを見せる。彼の性に対するその姿は真摯であり、そしてアブノーマルでもある。自らのエロの起源を赤裸々に語った180分。ためらいのない性社会に向けて、ラブ&アブノーマルなメッセージがここにある。

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プロフィール みうらじゅん

本名:三浦純 1958年2月1日京都生まれ。武蔵野美術大学卒業。大学在学中に月刊マンガ誌『ガロ』でデビュー。現在漫画家、エッセイスト、イラスト、ロックなど幅広く活躍中。人生哲学からお笑い、下ネタ系まで内容も多岐にわたる。また造語「マイブーム」が97年流行語大賞を受賞。自身のマイブームを世に広めている。著書として「アイデン&ティティ」「マイブームの魂」「カリフォルニアの青いバカ」「青春ノイローゼ」「ボク宝」、いとうせいこうとの共著「見仏記」シリーズなど多数。

第5章 おのれの究極のエロのために

今の人は幸せだよね。黒い下着なんか堂々と若い子がはいてるもん。昔はね、ぶっさいくなオバさんで抜いてきたんだから。辛かったよ。そんな時にサンドラ・ジュリアンとか出てきてさ。「うぁー、外人さんがヤってくださる」って思ったもん。サンドラ・ジュリアンや北欧って聞いただけでも感じるよ。昔は「スウェーデン食わぬは男の恥」って言ってたけどね。

だいたいフリーセックスなんてね、道のそこらじゅうでヤってると本当に思ってたもん、犬みたいに。だって外人が喋って、動いているのを見たのはポルノ映画だから、多分に差別入ってますよ。どこでもヤルんだろうなーって。だから、いまだにフリーセックスの本当の意味は知らないですよ。道でヤルことだと思ってるから。でも今、スウェーデンはお洒落の国になってしまったでしょ。エロの国にしといてよ。

今はいろんなものが世の中に出てきてるけど、究極のエロってないわけじゃない、個人単位で見ると。俺がエロスクラップ作ってるのは、究極の自分だけのエロ本を作りたくて、文章を切り抜いたり、写真切り抜いたりしてるわけですよ。おのれのっていうのがあるから。だから夜中に早く帰って作りたい、作りたいって思う時があるんだよね。一ヶ月集めたエロネタをまず床に並べながら、高い位置に座って、まるで黒澤明のように「おまえ、主役」「脇役、こいつ」とか言いながらやってる。楽しくてねー、朝まで一気に一冊作る時もあるし、まあノリがあるからね。

今はこの子が俺にヤラれてるけど、一年ぐらい前までは別な子だったね。何にでも政権交代はあるんだよね。男はね、洗脳ですよ。おのれを洗脳させなきゃ。女は誰でもヤってるからね。女は誰でも一緒だということをベースにして作ってるんだよ。よく顔だけを付け変えたりするやつあるじゃない、あれは邪道。手を加えたらいけないんだよ。今ある新鮮なもので、どう料理できるか。寿司屋みたいなもんだから。あれは何だってできるじゃない、CGを使えば。

すぐヤルことばっかり考えているエロおやじはいっぱいいるんだよね。昔は、嵐山光三郎さんとかの時代は不良中年とかあったじゃない。俺ももうけっこう中年だけど、不良中年でもないし、当てはまらないなあと思って。ロッケンローラーの裕也さんでもないし、これからのなんかいい言葉ないかなあと思ってたら、糸井重里さんが言ったの。「バカおやじ」って。いい言葉だなあー、「バカおやじ」と思って。バカボンのママが家にいて、バカダ大学の人を集めて飲んで、もうバカでいいじゃない。本当はそんなバカ相手に平気でいられるバカボンのママが一番狂ってるじゃない。まともにしてる振りして、一番おかしいもんね。そういう家庭がいいな、バカボン一家のような。でも大概は天才のハジメちゃんだけがいないもんだよね。

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