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今月の放言

心も体も支配したい 山本直樹

直筆短冊

スタイリッシュな作風で汗の匂いがしそうなほど生々しい性を表現するマンガ家、山本直樹。彼が紡ぎ出すのは過激かつ静寂な世界。そう、それは男なら誰もが夢想する憧れのエロ世界。フランス書院との関係も深い山本直樹がマンガという表現に求めるものは一体何か?真実の彼がここに暴かれる。

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プロフィール 山本直樹

1960年2月1日生まれ。北海道出身。1984年、早稲田大学卒業後、『私の大空』でデビュー。森山塔(又は塔山森)としてフランス書院Xコミックスより『お姫さまといろいろ』『死ぬなミミズ』『あとは寝るだけ』他多数発表。その後『極めてかもしだ』『ありがとう』『ビリーバーズ』など意欲的に作品を発表している。

第2章 地名で言える初体験

小さい頃からエッチなものが好きでしたね。小学4年生ぐらいの時、ハレンチ学園が流行ったんですよ。少年ジャンプが隔週だった時、友達は毎号見ていたんですけど、僕は小遣いが少なかったので見れなかった。僕が見ていないハレンチ学園の話を友達から聞くとすごく悔しくてね。今見るとそうでもないけど、あの頃はいやらしかったんですよ。あとは少女マンガの影響が大きいですね。マンガのキャラに恋しちゃうみたいな感じがあったから。

性の目覚めというわけじゃないけど、ハレンチ学園によって加速されたことは確か。そうそう、ハレンチ学園は実写版にもなったんですよ。今思えば野暮ったいビキニで、児島みゆきがジャンプに載っていたんだけど、それがものすごくエロかったなあ。その番組はバカバカしくて面白かったんだけど、親と一緒には見れない。親がいるリビングで見なければならないから恥ずかしくてね。オープニングでおっぱいがポロンと出たり、ハレンチ学園というタイトルだけですごく恥ずかしかった。

オナニーを初めてしたのは中学1年。その頃は触れば爆発する年頃だから、特にオカズがなくても妄想だけで十分だったね。みうらじゅんのマンガじゃないけど、友達のところで読んだエッチな本のイメージをたっぷんたっぷん頭に溜めて家に持ち帰ってとか。活字のエロに会ったのは平凡パンチとかプレイボーイでかな。活字のエロって無性に読みたくなる時期があるんですよね。

そんなオナニー生活を経て、初体験は20歳直前ぐらいに吉原で済ませましたね。まだトルコの頃です。すぐ出たらもったいないと思って、オナニーしてから行ったらなかなか出なくてすごく大変でしたね。値段は当時で2~3万円。ボロいアパートの家賃が1万7千円ぐらいだったから、トルコの一発は生活費の半分ぐらい。すごく贅沢だったんですよ。そういえばこの前、仲間内で初体験の話になった時になぜかみんな「俺、吉原!!」「俺、池袋!!」「俺、新宿!!」って。「なぜおまえら地名で言うんだよ!!」ってね(笑)。

僕のマンガに登場する男はヒーローじゃない。中学生、高校生の男なら誰もが思うあんなこと、こんなことしたいという妄想がベーシックになっているんです。僕も当時はひたすら悶々としていましたからね。こんなことヤっている奴等がいるんだろうな、チクショーって。残念ながら現実はすごく地味なものでしたよ。

心も体も支配したい 山本直樹03
心も体も支配したい 山本直樹04