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今月の放言

やっぱり男は令嬢タイプが好きなのよ さかもと未明

直筆短冊

レディースコミックを中心に女性の性の代弁者として多忙な毎日を送る、さかもと未明。飽くなき性の追求者である彼女は、幼き日の自分を皮切りに男女の愛のベクトルの違い、そして現在の経済状況を性的見解から述べるなど幅広く自らの理論を展開してくれた。

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プロフィール さかもと未明

神奈川県生まれ。商社OLから漫画家に転身。デビュー5年でレディースコミックを中心に十数本の連載を抱える売れっ子作家となる。現在、マンガ執筆の他にエッセイ、小説、評論などその活躍の場を広げている。主な著作として『ゆるゆる』『だって幸せになりたいんだもん』『女が歓ぶABC』『マンガ ギリシア神話』など。

第2章 抑圧がエロを生む

私は変なところで潔癖症なんです。不特定多数の女性とヤル男、つまり風俗とかに頻繁に通っているようなタイプの男の方とセックスはできないのよ。だってね、病気をもっていそうで嫌なんですもの。こういう風に思うのは、たぶん昔の母の教育が潜在的に働いているのかもしれませんね。だって未だに中出し処女ですし…。

ところで私、思うんですけど、女って性をとことん追求するタイプと、性に好奇心はあるくせにそれを素直に表わせない、いわゆる令嬢タイプの二つに分かれるんじゃないかしら。男受けがいいのはもちろん後者。フランス書院文庫に出てくる女は、令嬢とか女課長ですよね。男って性を知りすぎた淫乱女にエロさは感じないじゃない。つまり、性に開放的で強い女にエロさはあまりないと思うんです。どこかに抑圧されたものがあるからこそ、エロさが引き立ってくるの。

よく言うじゃない、簡単に何回もオーガズムを感じる女よりなかなかイかない女のほうが深いものを持っているって。性に対する抑圧が強ければ強いほどオーガズムは深いの。これは男と女の差にも置き換えることができて、男のオーガズムって射精して終わりみたいな分かりやすい形じゃない。だから男は性に対する好奇心において、快楽を追求するよりも「いろんな女とヤリたい」というように数をこなす方へいってしまうんじゃないかしら。もちろん、そうじゃない人もいますけどね。そうそう、強い男って大概セックスのテクニックはないですよ。逆にどこかにコンプレックスをもったような弱い男の方が上手かったりします。だから、もし性の全面的解放とかがあったら私は断固反対します。だって隠されて抑圧されているものが無くなれば、性が持つエロさが無くなっちゃうじゃない。

フランス書院文庫の本のタイトルってみんな「義姉」「義母」「女教師」とか触れてはいけない女がタイトルになっていることが多いけど、まさにこれがエロさね。たとえば私が今度結婚したら、旦那様の父親にすごく興味をもってしまいそう。何かそこには手を触れてはいけないものがありそうだから…。私、常識を壊したいとどこかで思ってる。それが私にとってのエロなんだわ。

やっぱり男は令嬢タイプが好きなのよ さかもと未明03
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