気づきそうで気づかない、思わず「そう、そう」と相槌を打ちたくなる話題を提供するコラムニスト、泉麻人。彼は隠れた社会の一面を見つけ出し、軽やかにそして少々ノスタルジックな言葉を紡いでいく。そんな彼の歴史に刻まれた性なるものとは何か?
フランス書院文庫って、昔から新聞広告のイメージがあったんですよ。普通、新聞の下段の広告というと学術書とか堅いじゃないですか。その中でこういう官能的なタイトルがついていたから、違和感がすごく印象に残っています。それ以来、僕にとってフランス書院文庫は奥ゆかしいイメージがあったんですよ。
一般的にエッチ本の広告って絵入りじゃないですか。でも、フランス書院の場合は「濡れた~」とか文字だけで表現されていた。それが妙に想像をかきたてるというか、広告自体が“秘められた奥の間”という感じでしたね。
エロネタも僕らの頃はもうビジュアルがメイン。でも、ビニ本もまだなかったのでGOROとか平凡パンチとか。少年マンガの表紙を飾っているような普通のグラビアで「おぉ、すごい」と思っていた。GOROとかは青年誌だから、ここでヌこうと決めていても肝心なところで別のページが出てきたりして…。スポーツカーのページで不覚にも!!だったりね(笑)。
ビジュアル的に印象に残っているのは小説宝石のグラビアですね。熟女が岩場とか変なところでヌードになっているグラビアが真ん中ぐらいに必ず入っていた。うちの親父が買っていて、それが応接間の机の下にあったんですよ。当時、僕は勉強する時にその応接間を使っていたので、こっそり見てましたね。
天候的に僕は雪が降っている日に(オナニーを)やけにしたくなったなあ。晴れた日より、雪が降る冬の季節に引き出しを開けてね。スカっと晴れた日はあんまり性欲は涌いてこなかったなあ。僕はアウトドア的なものにはあんまり興奮しないんですよ。アダルトビデオにしても、いっぱい人が出てくるのはダメ。お祭り状態になると興奮しないですね。
こういうビジュアル的な刺激を受けてきて、生で女性の裸を見たのは高校3年の12月ぐらい。当時、何か悪いことをして補導されたんです。すごく荒くれた気持ちになったので、「じゃあ場末の街に一人で行ってみようか」と。それで前から気になっていた朝霞のストリップ劇場に行ったんです。入り口の「埼玉一の裸の関所」っていう看板は今でも忘れられません。
ストリップで印象に残っているのは、最後のフィナーレで出演したお姉さんが一同に会して“ご開帳”するんですよ。その時のBGMが麻丘めぐみの『わたしの彼は左きき』。「わたしのわたしの彼は~」っていう曲に合わせて踊って、「ハイ!!、左ききぃ~」って足を広げるんですよ(笑)。全然、エロじゃないですよね。