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今月の放言

セクシャルファンタジーの共有こそが最高のエロス ロバート・ハリス

直筆短冊

ラジオのナビゲーターや作家として多方面で活躍中のロバート・ハリス。SM好きと公言する彼のエロティシズムに対する関心も人一倍。そんな彼が甘美な声で自らのセクシャル・ファンタジーを赤裸々に語ってくれた。

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プロフィール ロバート・ハリス

1948年横浜生まれ。上智大学卒業後、'71年日本を後にし、東南アジアを放浪。バリ島に1年間滞在後、オーストラリアに渡り延べ16年間滞在。シドニーでブックショップ「エグザイルス」を経営。帰国後FMジャパン(J-WAVE)のナビゲーターや、作家としても活躍中。著作に『エグザイルス(講談社)』『エグザイルス・ギャング(東京書籍)』 『ワイルドサイドを歩け(講談社)』『地図の無い国から(幻冬舎)』。

第2章 “恥”に一番惹かれる

以前、オーストラリアのTVクルーが日本のアンダーワールド・カルチャーを取材に来たんだけど、「なぜ日本はビデオショップとか行くとあれだけSMとかアナルセックスが多いのか分からない」「なぜ日本にはこんなにSMクラブがあるのか」って聞かれるわけ。向こうのほうが進んでいるイメージがあるのにね。

でも確かに雑誌、漫画、書籍であれ、これほどSMやフェチズムが氾濫している国は日本以外にないね。僕は海外のエロティックな本をけっこう読んできたけど、官能小説の分野でいうとやっぱり日本が一番だと思うよ。日本には恥の文化があるじゃない。僕はSMが好きなんで、それにおいて一番惹かれる点が“恥”。それがくすぐられることによって、炎のような強いエロティシズムを僕は感じるんだよ。

昔からそれを題材にして、文章に絡めてきたのが日本の作家なんじゃないかな。恥というものが日本の文化にすごくタイトに絡まっているからね。もちろん、フランス書院文庫も空港で買ったりしてけっこう読んだよ。SMの教科書と呼ばれている『トー・クン全書 女教師/義母/姉(トー・クン著)』はこれから読んでみたい一冊かな。精神的なSMの世界を描いているらしいからすごく楽しみだよ。

なぜ、こんなに日本がSMやフェチズムが氾濫しているかというと、日本人ってすごく抑圧された民族だからだと思うの。堪え忍んで生きることが美学となっているからね。そうなると抑圧されたものをエロティシズムとして解消していく流れができあがるんだよ。これが一つのエロティック文化になっていると思う。もし中国がもっと自由になれば、日本よりもっとすごくなりそうだけど…。抑圧された歴史があるからね。

今でこそ、ある意味市民権を得たSMとかフェチとかは、もともとゲイの人たちが活動してきたからこそだと思うの。僕も78年から83年までオーストラリアの一番ゲイが多いエリアでブックショップ「エグザイルス」をやっていたんだけど、お客さんの半分がゲイの人たちだった。彼らは「もっとゲイの本を入れてくれないか」と僕に言ってきた。それでアメリカの出版社に問い合わせたら、その中にはけっこうエロティックな書籍もあってね。ゲイに関するSM文学もけっこうあって、それをみんな欲しがっていた。これほどオープンにゲイの世界で取り扱われているんだなと思ったね。

ゲイの人はセックスに対してすごくオープン。男のゲイは一番セクシャリティが強いしね。そういう人たちがどんどん市民権を得てきたんだろうね。でも、日本に関してはこれとはまた随分違う。日本ではSMとゲイは切り離されて考えられているからね。

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