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今月の放言

セックスは情報収集 リリー・フランキー

直筆短冊

イラストレーター、コラムニスト、写真家などその活動が常に注目を浴びているリリー・フランキー。鋭い人間観察を基にした個性的な意見は、我々のリビドーの励みになり、時には我々の言葉が詰まりそうな真実を暴き出す。現在の不透明な男女関係を解決しうる彼の声を聞け。

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プロフィール リリー・フランキー

イラストレーター。日本美女選別家協会会長。ヤングジャイアンツ監督。構成作家、写真家など多方面で活躍中。著作に『美女と野球(河出書房新社)』『女子の生きざま(新潮文庫)』『誰も知らない名言集(情報センター出版局)』 『日本のみなさんさようなら(情報センター出版局)』。

第3章 深い信頼関係に憧れる

性の目覚めはすごく遅かったんですよ。中学の時に彼女はいたけど一緒に帰るのも恥ずかしい状態だった。当時、付き合っていた彼女はオッパイが大きかったらしいんだけど、そんなことさえ気づいていないし、夏服で透けたブラジャーで喜んでいるのを見て、何を考えているのかさっぱり分からなかった。奥手っていうか、鈍かったんですね。

高校時代は一人暮らししていたんですよ。そんなのもうセックスしろっていう状況じゃないですか。バイクに乗って夜遊びもしたけど、男ばっかり集まって、男っぽい話しかしなかった。時代性もあるのかもしれないけど、たまたま硬派だったんだろうね。「女とチャラチャラするなんて」みたいな。だから、そんなヤツを見ると、バイクで轢いたりね(笑)。自分らができないもんだから。

初体験は大学に入ってから。それまで何人かと付き合ったんだけど、触ってもせいぜいオッパイまで。セックスしたことがないから、それで寝ていいぐらいに思っていたんですよ。「キスしておっぱい触って、おやすみー」みたいな。そういう付き合いをしていた子が何人かいて、それからですよ。

初めての時はオレの友達も一緒にいて、彼女と三人で雑魚寝していた。いつものように「おやすみー」って寝たら、その子が「口でしてあげようか」って。気づいたら初めてのフェラチオをされていたんですよ。そんで、その子は自分で入れてたね。こういう感じだから、オレは今でも恋愛に関しては受け身なんですよ。セックスに対しては攻撃的だけどね(笑)。

セックスに関していうと「そこは恥ずかしいからイヤ」って拒む女がいるよね。でも、セックスは上下関係があるからいいんですよ。フランス書院文庫を見ても、人妻VS僕、先生VS生徒だったりと上下関係があるからこそセックスが円滑に進んでる。

友達みたいな50/50な関係だったら、「ちょっとやめてよ」で終わっちゃうけど、縦の関係があるから「恥ずかしいからやめて」「いいからおまえはすっこんでろ!!」といい方向へ向かうんじゃないですか。だから普段は友達のような関係でも、セックスになったら役割分担がしっかり決まっている関係が一番いいですね。

そういう贅肉を一切取り除いているのがSMじゃないですか。多かれ少なかれSMの精神がセックスにないとね。どれだけ子作りから離れられるかという所に官能があると思いますよ。

オレがSM的なものに憧れるのは、そこにすごい信頼関係があるからですね。マ○コのビラビラを切らせたりとか直腸を出させたりとかそれだけ相手に自分を委ねられる。そしてそのレスポンスとして切ってあげるという信頼関係。昔は処女を自分好みに調教することに憧れもあったけど、それより今は生き方の違う他の人と信頼関係を築くほうがいいですね。

Sの人ってすごい手間隙がかかるんですよ。例えば、次の日に黄金プレーがあるとしたら、前の日からちゃんとウンコが出るようにコンディションを整えないといけない。奴隷に対して、慈しみがあるんですよね。Mは「苛めてください」って言えばすむけど、Sは準備をしなくちゃいけない。ホント、美意識がないとできない。しかも男の甲斐性も体力も必要。

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