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今月の放言

セックスは情報収集 リリー・フランキー

直筆短冊

イラストレーター、コラムニスト、写真家などその活動が常に注目を浴びているリリー・フランキー。鋭い人間観察を基にした個性的な意見は、我々のリビドーの励みになり、時には我々の言葉が詰まりそうな真実を暴き出す。現在の不透明な男女関係を解決しうる彼の声を聞け。

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プロフィール リリー・フランキー

イラストレーター。日本美女選別家協会会長。ヤングジャイアンツ監督。構成作家、写真家など多方面で活躍中。著作に『美女と野球(河出書房新社)』『女子の生きざま(新潮文庫)』『誰も知らない名言集(情報センター出版局)』 『日本のみなさんさようなら(情報センター出版局)』。

第4章 感情は風化する

オレ、年をとるにつれてどんどん感覚的になっているんですよ。ブルース・リー先生が『燃えよドラゴン』でおっしゃってるように「Don't think.Feel.」になっていく。すごい好きだなと思ってセックスしてみて、気持ちが冷めていくこともあるしね。だから、感情よりも感触の方を大切にしてますよ。感情は移り変わりますもん。

オレ、発明したんですよ。「人はいつからオヤジになるのか」って。例えば、30歳になったから、働き始めたからオヤジだとか言われているけどそうじゃない。

昔はグラビアとか好きな女の子で完全に想像オナニーをしていたけど、ある日を境に“思い出しオナニー”に変わっていくんですよ。オレ、今はもう完全にそれですもん。今までの経験の映像ライブラリーが自分の中のビデオにあって、「今日はこれでヌクか」って感じなんですよ。それをすると、人はオヤジになってるんですよ。

すごく長く付き合って、別れる時にあんだけ泣いて、「本当に好きだったんだな」って思い出すのはしばらくすると客観的なものになるでしょ。感情ってそれぐらい風化するんですよ。

でも、「あのセックス、すごい良かったな」って思い出したら、匂い、感触、その時の声まで全部思い出すじゃないですか。だから、“思い出しオナニー”でいつも頭の中のビデオが貸出し中になっているのは、大恋愛をした女とは限らない。つまり、いつも貸出し中の女の人は今でも好きだっていうことなんですよ。

逆をいうと7年ぐらい付き合って、大恋愛をしても一回も貸出されずにワゴンセールにいくような女は、人生の長いスパンで考えれば、あんまり好きじゃなかったのかもしれない。だから、全然思い出しオナニーの対象とならない女とは今さら会いたくもない。そりゃあ、最初は会いたくてセックスもしたかったけど、それはフラれた悔しさからきたもの。その悔しさが風化した今はもうヤリたいと思わないね。

思い出しオナニーをしている女に会えるなら、絶対に会いたい。もちろんセックスを前提に。たぶん相手の女もそうでしょ。だって、別れた男と女がもう一回会おうっていうのにセックスもしないなんてね。そんな非生産的な出会いは嫌だね。

「男女の友情は~」なんて女性誌の取材で聞かれることが多いけど、そんなのあると思ったこともない。あると思っているヤツは知能が低すぎる。 「じゃあ、女友達はいないんですか?」って聞かれて、「女友達としか呼びようのない人はいる。でもそれは単にヤリはぐっているだけのこと。一回でもヤった女は友達と思ってないから」と答えるんですよ。

「女と友達になりたいな」と思っているのは女としてすごく魅力を感じているからそう思っているのにね。これは、「おまえと一緒に飲んでいても全然ヤル気がしねえけど、面白いやつだよな」って言うつまんない男が女を混乱させている。オレから言わせるとそいつはよっぽど男友達がいないんですよ。ヤリたくもない女と一緒に飯食う時間がもったいないもん。基本的に女と話してもつまんないと思っているから、男同士で悶々としながらクンニの話ばっかしてますよ。これからセックスする女が隣にいて話すならいいけど、友達の女は嫌だね。

男と女は、あんまり会話しちゃいけないと思うんですよ。何にも喋らないけど、一緒に飯食って、風呂入って、濃厚なセックスだけして寝るっていうのが理想の結婚生活。それで何にも問題がなくて、すごい豊かな生活が送れるっていうのが最高。すごく風流。過剰なものは何もいらないっていうお茶の気持ちに近いですね。

セックスは情報収集 リリー・フランキー07
セックスは情報収集 リリー・フランキー08