毒まみれの笑いで特殊な世界を創造する演劇の達人、松尾スズキ。そんな彼が思春期に募らせた恋愛への憧れ、理想に反発するかのような青年期、そしてタブーを期待する男心など人生の舞台裏を語ってくれた。松尾スズキは背反する人間の意思と行動を常に見つめている。
初体験は19、20歳の頃でしたね。それまで僕、あまりにもモテないんで一生セックスできないんじゃないかと思ってた時期があったんです。
中学の時はモテない男No.2だったし。No.1が特別クラスに行かされたヤツだし…。それがすっごいショックでトラウマになってた。その上、高校も男子校に行っちゃったから、1年に5分ぐらいしか女の子と喋ったことがなくて、もうダメだと思ってたんです。
それがまあ、なんとかセックスをすることができたんですから、価値観も180度変わりましたよ。それまでは妄想ばかりが広がって、ホモになってしまおうと思ったからね。女言葉を喋ってれば、ホモになれるんじゃないかと思って、約1年ぐらい喋ってましたよ。頭がどうかしてたんですね(笑)。
普通、ホモになるのは同性に興味があるからなんだけど、自分は男であることをもてあましていたんですよ。どうせモテないし、いっそなら自分の中にある男性を捨てたかった。男でも女でもない、わけ分かんない生き物になりたいなと。そうすれば、モテない言い訳にもなるだろうって。欽ちゃんって女言葉じゃないですか。「どうしてなのよ」って。もう、あんな感じでいいなって。
それと同時に周りとの関係もすっごく面倒くさくなっちゃった。僕、勉強できなかったんで、すっごいバカな高校に入ったんですよ。勉強はできなかったけど、バカじゃなかったので周りに話す相手がいなかった。んで、もう相手にしたくないなと思ってたら、的確に相手にされなくなった。だから、女の子と付き合ったときは社会復帰できたって感じでしたね。
思春期から青年期は、女性に対する自分というものをすごく悩んだ時期でした。恋愛に対する憧れは一人の女の子で満足できればいいなと思ってたんだけど、この憧れが強かった分、実際に付き合ったときに冷めちゃったんだろうね。これまで女の子と何にもなかったくせに、すぐに二股かけちゃったりして…。ホント、ろくでもないなと思う。