類いまれな音楽・ビジュアルセンスで世界に影響を与えてきた小西康陽。仕事柄、海外へ行く機会が多い彼の機内の必需品は、なんとフランス書院文庫だった。官能小説のヘビーユーザー小西康陽が、自らの美意識に基づきその魅力を語ってくれた。
僕、かなりフランス書院の本を読んでますよ。買うのは海外に行くときに空港で。僕のうちにあるフランス書院のほとんどは流水書房と改造社書店(共に成田空港)のカバーがかかってます。
この前までピチカート・ファイヴっていうバンドをやってたんだけど、そのバンドのアートディレクターの信藤(三雄)さんが必ず空港で買うんですよ。「おしゃれだなー」と思って、真似して買ってるうちにいつの間にか僕もはまってた(笑)。
僕、今まですっごい買ってるはずなんだけど、昨日探してみたら十冊ちょっとしかなかった。けっこう好きだったフランス書院の本があったんだけど、いつの間にか家からなくなってるとか、引っ越した時に処分してるとかで手元に残ってないんだよね。そもそもタイトルや作者の名前を覚えてないんで、読み返したいと思った時がつらい。
読み始めて5、6年経つけど、僕ってどんな基準でフランス書院の本を買ってんだろ?そういえば、ママとかお姉さんの癒し系って読んだことないな。こういう官能小説は、ずばり凌辱系だろって思ってるんですけどね。お姉さんに甘えたりとかじゃないような気がする。っていうか、ママとか母とか癒し系があるなんて知らなかった(笑)。
一冊ね、すっごい面白いのがあった。『東京蜜猟クラブ』(綺羅光著 '97刊)っていうんだけど、酒場のプレイボーイのマスターが事件を解決していく様は凌辱小説というより、ポルノのカタチを借りた大衆小説だった。ポルノ度は低かったけど、小説として読者を引っ張っていくグリップがあった。
あとね、すごい異色の小説があったんですよ。「これは変だよ」って、思わず「空港で買ったポルノ小説にこんなのがあったんだよ」って彼女に電話したぐらい。それはね、自分が宅配の小包で届けられていく『女教師と奴隷』(小菅薫著 '92刊)。あの奇想天外さには、あきれた(笑)。かなり面白かったなー。ほんと最高だったよ。