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今月の放言

読むなら、ずばり凌辱系でしょう 小西康陽

直筆短冊

類いまれな音楽・ビジュアルセンスで世界に影響を与えてきた小西康陽。仕事柄、海外へ行く機会が多い彼の機内の必需品は、なんとフランス書院文庫だった。官能小説のヘビーユーザー小西康陽が、自らの美意識に基づきその魅力を語ってくれた。

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プロフィール 小西康陽

1959年2月3日生まれ。札幌出身。85年、ピチカート・ファイヴとしてデビュー。バンドのリーダーとして、作詞・作曲・編曲・プロデュースを担当。94年にはアルバム『MADE in USA』がローリング・ストーン誌のオルタナティブ・チャートで1位を獲得。バンドを解散した現在も数々のアーティストのプロデュースやリミックス、DJとして活躍中。

第3章 魅力を知ってるからこそ言いたい

『トー・クン全書』('00刊)の表紙って宇野亜喜良さんですよね。宇野亜喜良さんって、一世を風靡したのが1970年前後ですよね。今も大活躍中ですけど。昔だと寺山修司さんが新書館から女の子向けの詩集を出してたけど、たいてい宇野亜喜良さんが挿絵を書いてましたよね。

フランス書院のサイトの取材に出て、文句を言ってもしょうがないんだけど、フランス書院文庫のカバーはあんまり好きじゃないんです。これは絶対違うよなって感じなんですよ。

つまり、そのー、…本屋さんで初めて買う人が、この煽情的なイラストレーションでぱっと目を引くのは分かるんだけど、一度読んで面白さや魅力を知ってる人にとって、この絵は余計だと思うんですよ。読んでる人は自分の頭の中でイメージするわけじゃないですか。そのイメージとこのイラストは絶対に違うもんな。

イラストを描いてる人に何の恨みもないんだけど、あんまり好みのタイプじゃないし、むしろ読者のイマジネーションを妨げるものなんじゃないかな。もっと悪口言っちゃうと、フランス書院の編集部の人たちはビジュアルのセンスがはっきりいってないと思いますよ。

『トー・クン全書』の宇野亜喜良さんのはすごいいいと思うんです。きっと、これぐらいでいいんですよ。フランス書院文庫の魅力を知ってる人であれば、家に置いても大丈夫なぐらいでいいんじゃないですか。

逆に言うとね、フランス書院文庫を読んでる方って、ある意味ソフィスティケィトされてる人だと思うんですよ。ポルノグラフィはいけないと言う人に比べれば、こうやって楽しんでいる人って文化的に洗練されてる人だと思うんですよ。そういう人たちにとって、これは読者をバカにした装丁だと思うんですよ。

本を読んじゃって、「かなり面白いな」と思ったときに表紙を見て、「これはないよ」と思う人がいっぱいいるんじゃないですか。内容だったら、僕はフランス書院文庫が大好きなんだけど、装丁とかはちょっとね…。っていうか、100人読者がいたら、100人違う女の人を想像して読むはずだから、イメージがぴったりっていうのはありえないんですよね。

今言ったことはいつも読んでて思ってたから、このインタヴューに出た時に必ず言おうと決めてたことなんです。

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