スピード感溢れる青春スポーツマンガを描きつつ、一方では濃厚でフェティッシュな作品を描くマンガ家・八神ひろき。彼が創り出す女性たちは美しい肢体をくねらせ、見る者を深い妄想の世界へ誘ってくれる。そんなフェティシズムを刺激する八神ひろきが自らの性癖の根元を告白してくれた。
『G-taste』を始めた頃は世の中もフェチ云々というわけではなかったし、自分もフェチっていう自覚はなかった。たまたま周りの方に「これはフェティシズムだよ」って教えてもらいフェチである自分に気づいたんです。自分の好きなものが世の中の人とずれていることは分かっていたんですけどね。
男って、体は細いけど胸は大きい女の人が好きじゃないですか。でも、僕は単純にガタイがいいのが好きだったんです。そういう女の人を描いている方もあまりいなかったので、自分で描きたいなと思ったんです。もし他の誰かが描いていれば描かなかったんですがね。
例えば、イラストレーターの空山さんが描かれる女性は筋肉質な外人体型ですよね。すごく好きなんですけど、自分の場合、ぶにょぶにょしてぼよっとした肉が好きだったので、そういう女性を描きたいなと思ったんです。
あと、基本的には脚というか尖ったものが好きなんです。指先や足先、ハイヒール、鋭角な爪の先といった尖ったものが人間の肉体に付いていると異常に燃えちゃうんですよね(笑)。柔らかくてむちむちした体に、細いものがプラスされるとすっごい好きなんです。
だから、僕が描く顔はすごく尖っているんです。顔はむちむちしていてはいかんのです。やっぱり女の人は会話するのもいいですが、見てるほうが断然いいですね。特に好きなのはいくらでも妄想が広がる後ろ姿。ほんと、いいですよねー。
そういう意味でフランス書院文庫の櫻木充さんの小説を読んでいて思うんですけど、自分の嗜好とかなりリンクするんです。セックスそのものがあまり描かれてませんよね。自分もセックスそのものより、するまでの過程が重要なんですよ。こんな性癖だから、フランス書院文庫でも脚が出ている表紙のものを買っちゃいますし、タイトルに“先生”とあれば最高ですよ。
自分はM体質だと思うので、力でねじ伏せる凌辱小説よりは『僕の兄嫁・私の少年奴隷』(蒼村狼著 02刊)みたいに先生口調で「○○しなさいよ」「いけませんよ」っていう言葉に弱いんです。自分がするよりは命令されたほうがいいですね。セックス描写よりも精神的描写の方が自分の中が熱くなるんですよ。