気鋭の若手論客として注目されている宮崎哲弥。社会の問題をあますことなく語る彼の性の生い立ちはいったいどのようなものだったのか。初体験、初自慰そして嗜好までその鋭利な舌は性を語りつくしてくれた。
オナニーを覚えたっていうか、曲がりなりにもできるようになったのは30歳を過ぎてからですね。
あのね。これはどっかに書いたと思うけど、私には能力欠陥がありましてね。宙に人の顔を思い描くことができないのですね。それどころか、やはり30歳前後まで夢に明瞭なかたちも、色もなかったんです。音はあるんですよ。会話も音楽も聞こえる。しかし絵はないの。だからラジオドラマを聞いているような、あるいは本を読んでいるみたいな夢見だったんです。
私の嗜好の特性であるヴィジュアルなものに対する違和感と、音楽と論理への偏愛は、実はこういう能力欠陥に起因しているような気がして仕方ないんですがね。
それはともかく、人の顔や体のような複雑な構造物を画像で憶えて、ましてその記憶を甦らせるなんてことはまったくできなかったのですね。これがオナニーをしなかった第一の原因です。好きな子の顔や体を宙に思い浮かべることができないと結構、難しいでしょ。
で、写真とかヴィデオをオカズにしてってことになると何だか滑稽で、自意識が許さないの。
結局、溜まってきたらセックスするか、夢精で処理って日々が長く続きましたね。だからAVなんかはほとんど観ていませんよ。セックスの際の刺激剤として活用することがほとんどで。
ところが30歳をちょうど過ぎた頃につきあっていた女にそのことを話すと珍しがられてね。いままでオナニーしたことない男を知らないっていうのよ(笑)。「私があなたのオナニー童貞を破る」と。で、いろいろやって、遂に対面オナニーでイキました。
その時は鮮烈な記憶が残っています。女の膣や肛門や口中ではなく、なにもない虚空に精液がほとばしる快感って、これはこれでいいもんだなと感心しました。
私はフェラチオを知ってからもずいぶん長い間、女の口の中で射精することに抵抗があってなかなかできなかったんですが、それをはじめてしたとき以上の解放感がありましたね。本当に第二の童貞を捨てた気分。何か重い枷が取り払われたような爽快な気持ちだった(笑)。