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今月の放言

自我の破壊が快楽を生む 宮崎哲弥

直筆短冊

気鋭の若手論客として注目されている宮崎哲弥。社会の問題をあますことなく語る彼の性の生い立ちはいったいどのようなものだったのか。初体験、初自慰そして嗜好までその鋭利な舌は性を語りつくしてくれた。

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プロフィール 宮崎哲弥

1962年福岡県生まれ。慶應義塾大学社会学科卒業。政治・社会、そしてサブカルチャーまで論壇誌、テレビ、ラジオなどで論じている。主な著書に『ビジネスマンのための新・教養講座』『憂国の方程式』『新世紀の美徳』『M2われらの時代に』『これがマコトの日本の大論点』など多数。

第3章 人間関係に興奮する

性的快感の純粋なコアの部分は別として、セックスって面倒だなあと思うのは人間関係を意識するところがあるからでしょうかね。他の男とか、他の女のことを意識することってあるでしょ。嫉妬とか虚栄心とか、自意識にまつわるエトセトラが絡んでくるしょう。あれ面倒臭い。

畏友の宮台真司さんなんかは、むしろその関係性に耽溺できる体質。だから3Pが大好きなんですね。女よりももう一人の男をより強く意識したプレイになるでしょう。そこがいいっ、高揚するってことですね。

でもね。その気持ちがまったくわからないわけではないの。恋人に、前彼がどういう手順でしたかとか、どういう癖があったかとか、どういうプレイが好みだったかとか、事細かに聞き出すのってすごく興奮しません?私は結構するんだよねぇ。

もちろん話してくれる子と絶対に話してくれない子がいますから、無理強いはしませんが。ちなみに無理強いするとすっごく嫌われるし、相当深い仲にならないと教えてもくれません(笑)。

でも話をしてもらうと、すごく切ない感情と怒張した欲情がない交ぜになってね。独特の興奮に上り詰めていくのを感じる。これは自意識の輪郭をわざと際立たせることで、その破却の快楽を強める方法なんですね。

セックスの喜びってのは自我、自意識の部分的な相互破壊にあるわけですが、派手にぶっ壊すためには自我は強張っていた方がよい。刺激が大きいし悦楽も深い。

ただ20代半ばあたりから惰性の面が出てくるわけですね。セックスしたくて仕方なくてつきあいはじめても、先がみえてきて急に気持ちが萎むとかね。そうなると結構、継続するのが難儀ですよね(笑)。でも急にやめても相手を傷つけたら悪いから続けちゃう。そういうのって決していい結果には終わらないんだな(笑)。

性的法悦の本質は自我の部分破壊、自他意識の相互破却です。その意味ではある種の宗教的な修行やドラッグがもたらすエクスタシーと違いありません。ただ神秘体験やトリップの場合、うまくそれを受け入れることが必要とされるのに対し、セックスは自我が堅く身を閉じれば閉じるほど、拒めば拒むほど深遠をのぞけるような気がする。自意識過剰の人が深みにハマると溺れやすいんじゃないかな。

でも知や意思の力で性を完全にコントロールしようとする人もいますからね。濡れるのも自由自在、オルガスムスも自由自在って子とつきあったことがあります。関川夏央風にいえば「首の上はインテリ、体は娼婦」ってやつですね。こんな女が本当にいたのかとびっくりしました。

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