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今月の放言

オスになりたい しりあがり寿

直筆短冊

日本のフォーク黎明期を支えたなぎら健壱。あくまで硬派なアングラフォークシンガーとしての顔を持つ一方、性への旺盛な探求心を持つ彼が、ビニ本やエロ画像収集などディープな趣味の話を歯切れよく語ってくれた。

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プロフィール なぎら健壱

1952年東京都生まれ。1970年、中津川フォークジャンボリーに『怪盗ゴールデンバット』で飛び入り参加。1972年、ファーストアルバム『万年床』発表。以降、音楽活動のかたわら、テレビ、ラジオ、執筆など幅広い分野で活躍中。主な出演番組に『出没!アド街ック天国』『タモリ倶楽部』、著書に『日本フォーク私的大全』『酒場漂流記』『下町小僧』『東京の江戸を遊ぶ』など多数。

第1章 エロ本を改造した

小さい頃、近所に貸本屋があって、マンガとか借りに行ったんだけど、店頭にフランス書院みたいにHな表紙の本が無造作に置いてあって、ドキドキした覚えがあるな。あとは八重洲のあたりにある映画館のポスター見て「あらっ」と思ったり。それが小学校低学年の頃じゃないかなあ。あと、床屋によく、映画の本が置いてあったじゃないですか。それに外国映画の女性のあられもない姿が載ってるのを見て「あらららら」って思ったり。

今みたいに性的なものが氾濫してないし、どこでも見られるっていう時代でもないから、ちょっとしたものでも子供ながらに反応して、ドキドキしたんでしょうね。

その頃ってまだ小学生だから、銭湯に行っても母親と一緒に女風呂に入ってた。でも女風呂は性の対象じゃないから、何も感じないわけですよ。目の前にあるんだからそっちの方がもっと刺激が強いはずなのにね。

女風呂をのぞきに行きたいっていう気持ちが芽生えたのは、いつからだっけな。やっぱり毛が生えてきた頃からかな。中学ぐらいの時はもう風呂屋の番台に上がりたくてねぇ。クラスに風呂屋の息子とかいるとみんなで「頼むよー」って。やっぱり体の発達と心の変化は、つながるようにうまくできてるんですよね。

中学3年の頃、江戸川の橋の下で男と男がからんでる絵をごっそり拾ったことがあったな。男と男じゃつまんないから、女にしようと思って(笑)、家に持って帰って消しゴムで消して、自分で書こうとするんだけど女の体がよくわかんないんですよ。しょうがないから想像で書いてね。で、おもしろくないなと思ってまた橋の下に捨てに行ったんだけど、次行ったら誰か拾ったのか見あたらなかったな(笑)。

エロ本は古本屋とかに売ってたけど自分で買う勇気なんてないし、だから江戸川に拾いに行くんですよ。なぜか橋の下って必ず落ちてる。で、「ふたりだけの秘密だな」って言って友達と神社の裏に隠すんですよ。

中学ぐらいの時はそんな程度でしたけど、中にはいましたよ、「オナニーっていうのはこうやってやるんだよ」って教えてくれる奴とかね。

ただ、そういう話ばっかりしてる奴はあまり利口に見えなかった。彼女ができて、どこかへ遊びに行ったとか、そういう話なら「うらやましいな」とは思いましたけど、ずぐ性の対象にしちゃうような奴は「哀れな奴だな」って思ってましたね。性は表に出してはいけない、あくまでも陰の世界のものだっていう風潮がありましたからね。

高校生になると、パートカラーのピンク映画を早退して見に行きました。学生服を背広に見せる方法をみんなで考えてね。それで大人のふりして見に行った。でも今から考えればバレバレですよね(笑)。

オスになりたい しりあがり寿01
オスになりたい しりあがり寿02