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今月の放言

オスになりたい しりあがり寿

直筆短冊

日本のフォーク黎明期を支えたなぎら健壱。あくまで硬派なアングラフォークシンガーとしての顔を持つ一方、性への旺盛な探求心を持つ彼が、ビニ本やエロ画像収集などディープな趣味の話を歯切れよく語ってくれた。

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プロフィール なぎら健壱

1952年東京都生まれ。1970年、中津川フォークジャンボリーに『怪盗ゴールデンバット』で飛び入り参加。1972年、ファーストアルバム『万年床』発表。以降、音楽活動のかたわら、テレビ、ラジオ、執筆など幅広い分野で活躍中。主な出演番組に『出没!アド街ック天国』『タモリ倶楽部』、著書に『日本フォーク私的大全』『酒場漂流記』『下町小僧』『東京の江戸を遊ぶ』など多数。

第4章 義務感を伴う探求

今はエロサイトが面白くて画像をどんどん落としてますよ。フォルダによってエロの種類を分けてね。「fetish(フェチ)」「shemale(おかま)」「water(おしっこ)」「nostalgia(60~70年代もの)」「teen(10代)」「Asian(アジア人)」「mother&oldies(年寄り)」「zoo(獣姦)」とかいっぱい。ひと通り押さえてますよ。

ある日、パソコンが壊れちゃって、それまで落としてきた画像が全部なくなっちゃった。その時どんなにホッとしたか。「これで画像集めなくて済むんだ」と。義務感すら覚えて集めてましたからね。携帯なくした時と似てるんですよ。不便だけど、楽になった、解放されたっていう感じがね。でも、この前偶然今まで見ていたサイト見つけて、また同じことやり始めちゃった(笑)。だから今も結構な数の画像がありますね。

変わったもの、面白いものに興味を持ち出すとのめりこんじゃいますね。何かのフェチっていうより、ひと通り見てみたいっていう。

画像を集めるのだって、ワープロとか打ちながらだしね。ADSLとかだとパカパカ画像が開いちゃって、そればっかりに没頭しなきゃいけないでしょ。何か別のことやりながら「そろそろ開いたかな。まだかよ、遅えなあ」とか言ってるぐらいがちょうどいいのかもしれない。

どうしても見たいってわけじゃなくて、集めて人に自慢したいっていう気持ちがあるのかもしれない。だからサイトから落とした画像を見返すことって実は稀なんです。例えるなら、下町の駄菓子屋で少年がお菓子の当たりはずれを楽しんでる感覚。はっきりした理由はないけど、何かを集めたいって気持ち。そういうのが残ってるのかな。広い意味で言うと、さっきの「メイキングラブ」のわくわく感も、そこに通じるのかもしれないし。

「メイキングラブ」をしていく中で、女性には甘えてほしいですね。20代と30代と40代の女性がいたら、30代の人がいい。それ以下の年代の人に甘えられると、金だとか父親だとかに甘えたいんじゃないかって思っちゃう。今50歳なんですけど、同年代の人にも甘えてもらいたいですね。私はストライクゾーン広いですから。

官能小説も、例えば『私は女教師』(夏島彩著 '02刊)みたいに女性が書いたものの方がリアリティがあるから興奮する。その作家の体験とか願望とかが絶対作品のどこかに出てくるはずだから、男が書くよりリアル。私はそこを読みたいんですよ。

そういう、表に出しちゃいけないものがにじみ出てくる所に興味を惹かれるのかなあ。サイトから落としてきたエロ画像だって、くり返して見るのはガーターベルト着けてる女の人とかの普通のピンナップ。あんまり、性的なものがこれでもかって表に出てると、つまんなく感じるのかも。

性は、陽の世界に出てきたら面白くないんですよ。陰じゃなきゃねえ。今って日本の性が非常に欧米ナイズされちゃってオープンになってるでしょ。だから面白くないんですよね。私が少年の時感じたドキドキ感も、きっと今の人達は感じなくなっちゃってるんでしょうね。

オスになりたい しりあがり寿07
オスになりたい しりあがり寿08