日本のフォーク黎明期を支えたなぎら健壱。あくまで硬派なアングラフォークシンガーとしての顔を持つ一方、性への旺盛な探求心を持つ彼が、ビニ本やエロ画像収集などディープな趣味の話を歯切れよく語ってくれた。
フランス書院の読者の方は家に持って帰って大丈夫なんですかね。カップルでエロビデオを見たりするって話を聞くから大丈夫なのかな? みんなどうしてるんだろ。僕は持って帰れないので、たまに出版社からそういうエロなものを送られると「ちょっと得したな」って思っちゃう。
きれいごとかもしれないけど、即セックスというより「メイキングラブ」というか、恋愛していく方が楽しいって思ってたかもしれない。自分の自由にならない相手とセックスまでの過程を楽しむっていう、そのドキドキ感がいいんでしょうね。それは今でも変わらないなあ。性処理の対象だったらビデオで十分だなとか思いますもん。
あと、超美人はダメですね。美人の場合、「美人だー」って思った瞬間が100%だとすると、そこからどんどん下がっていっちゃうんですよ。でも、美人率60~70%をつかまえると、自分の中で100%に上げることができる。その過程が面白いのかな。まぁ最初から50%は超えてて欲しいですけどね(笑)。セックスまでの過程が何もないのって面白くない。だから、処理できるっていう快楽はあるんだろうけど、風俗とかって行きませんもん。
処理する手段として選んだのは、ビニ本。風俗に行かないでビニ本ばっかり買ってたな。フォーク仲間にもいっぱいいましたよ、ビニ本のファンは。今でも捨てないで取ってありますよ、いっぱい。
何がよかったって、ビニ本がだーって並んでてね、表紙見ただけでどれがOKか見抜く眼力がだんだん養われていくのがよかった。どういう本をOKとするかっていうのは…自分の感性が基準としか言えないけど、その感性の核は「こんなきれいな人がこんな格好してるんだ」ってとこですよ。今はみんなすごい格好してるけど。ヘアが少し透けて見えるとか、それだけでドキドキした。今となっては信じられないですよね。
ビニ本って、これまた売り方がうまいんですよ。一番いい写真を見開きに置いて売ってるんですよね。表紙がいいから中身もいいだろうと思って買うと、これが大間違い。「ちくしょーやられた! ここが一番いい写真だったんだ!」って。
そういうことを繰り返して経験を積むうちに、眼力が養われていった。友達と一緒に行って、「どういうのが趣味なの?」って聞いて、「これ、絶対ダメ。こっちは表紙がつまんないけどOK。それとここの出版社、この前パクられてる。その前に出たやつだから、これ買い」って目利きになって教えてた。
あるフォークシンガーが、本屋のオヤジと仲良くなって、買う前に開いて見せてもらうんだって。それ聞いた瞬間に「ビニ本界の風上にも置けない奴だな」って(笑)。「そんなことしてたらどんどん職人技が死んでいく」って思いましたよね(笑)。
でも、どれを買っても当たりはずれがないって時代になったら、もうつまんなくなってやめちゃった。ビニ本はね、当たりはずれがあるから楽しいんですよ。