他にはない微妙な角度で独自の世界を表現するマンガ家・しりあがり寿。サラリーマン、おやじ、OLなどを題材にしている彼は、性をどのように捉えているのだろうか。自身の蒼い思い出を探りながら、性の世界をディープに語ってくれた。
一応、僕も歴史に沿ってちゃんと刺激を受けてきたと思いますよ。印象に残っているのは、『バニシング・ポイント』っていう映画で女性が裸でバイクに乗っていたんですよ。なんでか分かんないけど、すんごいトクした気分になった。もっとイヤらしくて18禁じゃない映画も他にあったと思うんですけど、それに行くのはカッコ悪いと思っていた。だから、偉そうなカッコいい映画にそういうサービスショットみたいなのがあると嬉しかったですね。
昔はエロに対して本気だったけど、今は中途半端というかけっこう苦手なんですよ。だって、女性を描くのが苦手なんですもん。他のところはほとんど気にしなくても、胸とかお尻を描くときはやっぱり緊張するし、おっぱいだけは下書きしますもんね。きれいに書けないと変なものになっちゃうから…。でも、色気が全然出せないんですよね。『ア○ス』に出てくる女性は色気がコンセプトじゃないのでガリガリに痩せてていいんですけど、色気をだそうと思ってもだせないんです。なんだろうね…。
エロはこの世の中でたいへん重要なことなので描きたいなとは思うんです。でも、たぶんエロってギャグのいちばん反対にあるでしょう。下手な絵だと真剣な色気の表現が難しいんじゃないかな。ましてや僕みたいに世間を皮肉っぽいギャグマンガで表現するポジションだと非常にエロが描きづらいんですよ。読者にも「こいつ、本気でエロを描こうと思ってないな」と思われそう。そうなると描く人も読む人もお互いに萎えちゃうでしょ。
僕はエロを嫌いで避けているわけじゃなくて、単純に描けないんですよ。『ヒゲのOL薮内笹子』もそもそもエロ本からの依頼で描いたんです。全然、エロじゃないですよね。
『ヒゲのOL薮内笹子』についてもう少し言うと、あれは恋愛ってそんなに大切か?を皮肉ったものなんです。女性の恋愛好きってすごいですよね。なんであんなに恋愛のことばっかり考えてるのかな。雑誌とか見てもそういう話ばっかりじゃないですか。
仮に僕が男と女の関係をテーマに描くとすれば、その違いを描きたいですね。もちろん権利は平等だけど、同じことをすればいいってもんじゃない。やっぱり男らしさ、女らしさってあると思うし、ちゃんと互いを認めたほうがいいような気がするんですよね。女性が女性として幸せな道ってなんだろうなって考えてしまう。まあ、僕が考える必要もないし、余計なお世話なんでしょうけど(笑)。