一覧に戻る

今月の放言

オスになりたい しりあがり寿

直筆短冊

他にはない微妙な角度で独自の世界を表現するマンガ家・しりあがり寿。サラリーマン、おやじ、OLなどを題材にしている彼は、性をどのように捉えているのだろうか。自身の蒼い思い出を探りながら、性の世界をディープに語ってくれた。

profileName

プロフィール しりあがり寿

1958年静岡県生まれ。2000年、『時事おやじ2000』(アスペクト)、『ゆるゆるオヤジ』(文芸春秋)にて第46回文芸春秋漫画賞を受賞。2001年、『弥次喜多 in DEEP』(エンターブレイン)で第5回手塚治虫文化賞「マンガ優秀賞」を受賞。他にもエッセイ、芝居などその活躍は多岐にわたる。

第3章 もっと見たかった…

フランス書院の読者の方は家に持って帰って大丈夫なんですかね。カップルでエロビデオを見たりするって話を聞くから大丈夫なのかな? みんなどうしてるんだろ。僕は持って帰れないので、たまに出版社からそういうエロなものを送られると「ちょっと得したな」って思っちゃう。

というのも、僕は“いい人”ぶってしまってるんですよ。そういう人がいきなりエロ本とかエロビデオを持ち込んでしまうと、例えそれが男にとって普通であっても似合わないっていうか、あの人は変わった、本当は悪いやつだったって思われちゃう。たぶん周りが対応できないと思うんです。「自分はスケベな人間です」って上手にデビューしちゃえば楽になるんでしょうけど。

でも、“いい人”ぶっているけど僕が子どもの頃に比べたらエロものは今の家の方が多いんです。家への持ち込みを避けてるとはいえ送ってくる週刊誌や雑誌に裸とかがいっぱいありますもんね。

子どもの頃は親父だけの所有物でピンポイントにあったんだけど、今は家のあちこちにある。エロが目的の本じゃなくても、普通に載ってるからね。しかも昔から比べるとすごくエロだし。だってエロビデオが出てきた時は、こんなイヤらしいものが世の中にあっていいのかって思いましたもん。僕は27歳で結婚したんですが、もう少し結婚を遅らせればもっといろんなビデオを見れたのになあって時々思います(笑)。

僕、会社に入った時は独身寮で、そこはいつでも先輩がドアを開けて入ってこられる状況だったんです。そこに4年ぐらいいてすぐに結婚しちゃったんで、僕にはビデオをゆっくり鑑賞する環境がなかったんですね。それだけがほんと心残りです(笑)。

当時、コンビニとかレンタルビデオもでき始めて、一人暮らししていた友達は嫁いらずだって言ってましたもん。小林ひとみとか出てきて、それから一気にキレイな女性がビデオに出演するようになったでしょ。「こんなにキレイな人が…」ってビックリしましたよ。あの頃はそれぐらい衝撃的でしたけど、今はどれを見てもそんなにイヤらしく感じないですよね。ヘアヌードが出始めた時もそうでしたけど、もう何とも思わないし…。今って何が一番イヤらしいんですかね。みんな刺激に慣れてしまったでしょ。だったら一度、エロを全部無くしちゃえばいいのに。そうすれば何でもエロく感じると思いますよ。

オスになりたい しりあがり寿04
オスになりたい しりあがり寿05