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今月の放言

オスになりたい しりあがり寿

直筆短冊

他にはない微妙な角度で独自の世界を表現するマンガ家・しりあがり寿。サラリーマン、おやじ、OLなどを題材にしている彼は、性をどのように捉えているのだろうか。自身の蒼い思い出を探りながら、性の世界をディープに語ってくれた。

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プロフィール しりあがり寿

1958年静岡県生まれ。2000年、『時事おやじ2000』(アスペクト)、『ゆるゆるオヤジ』(文芸春秋)にて第46回文芸春秋漫画賞を受賞。2001年、『弥次喜多 in DEEP』(エンターブレイン)で第5回手塚治虫文化賞「マンガ優秀賞」を受賞。他にもエッセイ、芝居などその活躍は多岐にわたる。

第4章 生命力への憧れ

マンガだとパラパラって見るだけでどこにイヤらしい部分があるか分かるじゃないですか。でも、官能小説ってパラパラ見てもどこにエロの中心があるのか分からないですよね。僕だったら「はぁうぅぅー」って書いてれば、そこがイヤらしいのかなって思っちゃう(笑)。

僕が気になるのは、ええと…『女教師 恥辱の旋律』(綺羅光著 '02刊)、これなんかいいんじゃないですか。あと、監禁とかレイプっていう言葉もけっこうイヤらしいですね。逆に『息子の嫁』(秋山郷著 '02刊)はあまり感じないかな。息子の嫁はさすがにまずいだろうって思ってしまう。

読者の方って、フェチとか自分の嗜好をちゃんと把握してそれに合った作品を買ってるんでしょう。僕もそういうお気に入りの作家さんが一人欲しいな。そうすればきっと人生のパートナーじゃないけど、もっと豊かな生活が送れるような気がするな(笑)。

僕の好みは、監禁とかレイプの文字に目がいくことから考えるとけっこう昔風かもしれないですね。悪いやつがでてきて無茶苦茶することをイメージしちゃう。昔のエロ映画のタイトルじゃないけど、『姉奴隷』(鬼頭龍一著 '02刊)みたいに刺激的なタイトルが気になりますもん。もっと言うと、女性に対して甘えたいとは思わない。レイプとか刺激が強い内容を見た方が、どっちかっていうと得な感じがしちゃうんですよね。だってそっちの方が非日常的じゃないですか。甘えたりするのはもしかしたらあるかもしれないけど、奴隷とかレイプなんて絶対無理ですよ。僕からすると若い人が年上の女性に甘えたがるのは意外ですよ。

というのも僕は、未だに生命力への憧れがありますからね。たしか、30歳過ぎたころかな。衰えみたいなものを感じ、生命力に憧れを感じた時期があったんです。ドラキュラの気持ちが分かりましたよ。若い処女の血を吸うとはどういうことか、それは生命力の渇望なんだなって。だから、僕が求めるのも熟女よりは若い子なんですよ。ハトヤのCMで子どもが活きのいい魚を抱えていましたよね。あれぐらいピチピチしてる感じがいいな(笑)。

僕、最初の子どもが生まれたのは40歳と遅いんですよ。2番目が最近生まれたんですけど、40歳を越えてからなんか子どもが作りたくなりましたね。自分の精子をヘリコプターから蒔きたいぐらい子どもが欲しくなった。年をとってからオスっぽい部分がでてきたのかな。よく分かんないけどオットセイの群みたい。

何かを打開する力とか、何をしても生きていた方がましみたいな今を肯定する力を生命力というものに求めてしまいますね。今の自分にオス的なものが足りないから、生命力に憧れてるのかもしれない。レイプとか監禁ものに惹かれてしまう理由もそこにあるんでしょうね。

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