「関節技の鬼」または「テロリスト」として常に注目を浴びてきたプロレスラー、藤原喜明。プロレスの神様、カール・ゴッチ直伝のサブミッションを駆使し戦っているその姿はまさに“鬼”そのものだ。そんな彼が“今だから言える場外の暴れっぷり”を存分に語ってくれた。
5年間自分でトレーニングを積んで新日本プロレスに入ったのが23歳。一年間のうち入門してきたのが100人ぐらいいたけど、残ったのは3、4人。そりゃ、練習は厳しかったよ。でも俺の場合、辞めたら田舎に帰んなきゃならないからね。田舎は寒いし、貧乏だし。帰ったらもう最悪だったからな。俺にとってプロレスとは夢なんてもんじゃなく、田舎からの脱出という意味がすごく強かった。
新日本プロレスに入門してから俺はKさんの鞄持ちやってたんだけど、彼は女好きで全国にお気に入りがいた。巡業の時、地方でKさんに「来い」って言われて店に連れて行かれると、女の子がいるわけ。始めは一緒に飲んでるんだけど、ぼちぼちだなあって時がくる。そういう時は「あっ、俺、ちょっと小便行ってきます」って言うんだよ。するとKさんはポケットからそっと金を出して俺に渡すんだよね。つまり、タクシー代。俺はその金で宿泊先に帰って、残ったKさんはお楽しみ、ってなわけ。鞄持ちはこんな風に気を回すことがすごく大事なんだ。
あと、たまにおこぼれにあずかることもあったな。Kさんのお目当ての女が友達と来たっていう時、俺はなんとかしてもう1人の女を引き離さなきゃならないわけ。Kさんもいい頃合いになると、俺にそっと金を渡し、「おまえ、早く行け!!」って目で言う。そういう場合、とにかくもう1人の女を連れて行かなきゃならない。自分の好みなんて一切問題じゃなかったしな。とはいえ俺も、とにかくヤリたかったから、ヤラせてくれるならどんな女でもよかった。これはいい経験になったよ。女とどのように接したらいいのか学んだからな。
プロレスを続けてきて思ったことは、レスラーってある意味役者さんと同じなんだなって。リングに立つってこと、つまり人から見られる快感ってものすごいものがあるよ。見られることによって10の力が13にも15にもなる。これがプロというものなんだ。逆に10の力が5とかになるようなヤツはアマチュアなんだよ。人の力ってさ、ストッパーがあって普段は6ぐらいしか出せないようになってるんだ。そのストッパーをいつでも外せるのがプロだと俺は思う。
普通さ、マットの上でボディスラムを一発やっただけで「痛ってぇー。今日はもう終わり、お終いにしよ」ってなるよ(笑)。寒い時なんて本当に痛い。だけど、周りで客が見てると10発受けても全然平気になってしまうんだ。俺も試合でさ、鉄柱に頭をガーンとぶつけたりしてたけど、練習であんなことできないし、やりたくもないよ。たとえ100万もらっても…、んっ!?いや、100万ならやるな(笑)。それが試合だと平気なんだから。ある意味、リングに上がってる時の俺は変態かもしれないな。