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今月の放言

日本人は官能民族 三枝成彰

直筆短冊

前衛的な作品を作り、世界的注目を集める作曲家、三枝成彰。音楽というツールを通して多くの人に刺激と快楽を与えている彼は官能をどのように捉えているのだろうか。そんな疑問を解くかのように音楽から性文化といった幅広い展開で存分に語ってくれた。性にデファクトスタンダードはない。

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プロフィール 三枝成彰

1942年東京生まれ。作曲家。東京芸術大学大学院修了。在学中に安宅賞を受賞。代表作として、オラトリオ『ヤマトタケル』、オペラ『千の記憶の物語』、ヴァイオリン協奏曲『雪に蔽われた伝説』など。特にオペラ『忠臣蔵』は英語字幕付きのビデオ、CDは邦人作曲家のオペラ作品として初めて、世界27カ国で発売され注目を集めた。現在、新作オペラ『ジュニア・バタフライ』(2004年4月初演予定)を作曲中。

第2章 危険日はアナルで

ベネチア大学に日本映画を研究している女性の教授がいるんですけど、彼女が「日本でアナルセックスは普通ですか?」って聞いてきたんです。「いや、しないことはないですけど…、普通というほどポピュラーではないと思います」って答えた。そしたら「イタリア人の90%以上はアナルセックスをしてます」。さすがにびっくりしましたよ。

これはつまり宗教的な意識の問題なんです。カトリックにおいてコンドームはダメなので、避妊の手段でもある。危険日はアナルなんです。聖書だってアナルのことまで書いてないでしょ(笑)。

日本の性風俗もアナルセックスは違法にならないんですよね。法律に書かれていないので取り締まれないって聞いたことがありますよ。要するにアナルだったら売春にならないわけ。理屈ですけどね。

アナルの話でもう1つ。この前、ウズベキスタンに行った時も同じようなことがありました。「結婚する時は絶対に処女でなければならない」っていうのがイスラムの世界に残っているんですが、ウズベキスタン大学の女性の教授といろいろ話をしていたら、「わが国ではシーツに赤い染みがつかないと帰されるんだ」って。でも実際のところ、前の穴はちゃんと守ってるんだけど、後ろの穴はちゃんとヤッてるらしいですよ。処女膜は守られているけど、セックスはしてる。

人間って面白いよね。法の網をなんとかくぐって快楽を得ようとしている。住んでる環境によって性の問題は様々なんだなーって実感しましたね。

中国に行った時も、通訳の女性と話していたら「日本の男の人ってモテるんですよね」って言うんです。「えっ、なんで?」と聞くと、「前戯があるから」だって。中国の男性はいきなりズブッとヤルらしいですよ。モンゴルでもおっぱいとかを触ってると「そんなにあっちこっち触っておもちゃにしないで!!」って怒るらしいですよ。“前戯とは自分を嬲りものにしてる”っていうこの意識、すごいよねー。

人間は誰でも同じように前戯をしてセックスしてるなんて思ったら大間違いなんですよ。人種によって性の捉え方って全く違うことを知った時、我々日本人は西洋人にずいぶん感化されてきたのかなって考えさせられました。もしかするとフランス書院のような官能小説は中国やモンゴルでは売れないかもしれない。「なんでこんなに面倒くさいことをしてるんだ」って彼らはきっと思うんじゃないかな(笑)。

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