数々の連載を抱える人気コラムニスト、えのきどいちろう。独特の視点で巧みに時代を切ってきた彼を形成したものはいったい何か?青春時代の半泣き状態、見事なまでの遊びっぷり、そして大人になった自分…、今だから言えること、今だから分かったこと。自らの反省も交えて男の本音を語ってくれた。
プロフィール えのきどいちろう
高校の通学って楽しかったな。電車に乗っていると、すっごいかわいい子がいたりしてね。「あの子、かわいいー」って思ったりすると、すぐ勃起しちゃったりしてさ。あの体をああしてこうしてっていう視姦じゃなく、「かわいい」って思うだけでね。
吊革につかまっている女の子の上着とスカートの間から素肌が見えたり、何かのタイミングでシャツのボタンの間からブラが見えたりするじゃないですか。それをデジカメで撮るように、頭の中にフリーズドライするわけですね。最短距離で家まで持ち帰って、オナニーするんです。そのイメージを維持するのって大変だったな。まるで、バケツの水をそぉーっと持ち帰るような感じでね。
高校時代はあんまりモテない自分、つまり童貞力が自分の基本になっていて「いやさ、この前、ヤッちゃってさー」なんて話を聞くと、「そんなすごいことまで…」という悔しさで半泣きになりながらも、「で、それで?」って続きを聞いてしまうタイプだった。
僕が本格的にデビューしたのは大学に入ってから。やっぱり合コンだね。大学に入ると女の子の受け皿が急に広がるじゃない。高校までは、あのクラスの○○とか、隣の高校の○○という狭い範囲だったのが、千葉の女子大から神奈川の女子大とか首都圏一円に広がるんですよ。加えて、自分の自由な空間である車をもったりしてね。高校から比べるといきなり極彩色の世界が展開されたんです。ほんと、僕の大学時代は夢のようでしたよ。高校の時は半泣きだったくせに、6つ股とかかけたりして…。でも、6つ股って大変なんですよ。すっごい遠くまで女の子を送ったりして、なんかサービス業してるみたいだったね。
それまで女性に対して自信がなかったわけじゃないけど、あったっていえば嘘になるかな。これはみんなそうじゃないの?「いや、それまで機会がなかっただけで自信はあったよ」っていう人はあまり信用できないし(笑)。そんなヤツは嘘つきヤローですよ。何事もそうだけど、“俺様力”みたいなものはみんな持ってるわけだからね。
でも、“俺様力”って自分勝手ですよね。相手の気持ちがどうこうって分かるのはずっと後で、当時は「なんでコイツ、こんなに怒ってんの?」って不思議でしょうがなかった。要するに他人というのは自分と違う人間っていう基本的なことに気付かなかったんでしょうね。自分にしか興味がなかったし。