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今月の放言

リアルには身も蓋もない えのきどいちろう

直筆短冊

数々の連載を抱える人気コラムニスト、えのきどいちろう。独特の視点で巧みに時代を切ってきた彼を形成したものはいったい何か?青春時代の半泣き状態、見事なまでの遊びっぷり、そして大人になった自分…、今だから言えること、今だから分かったこと。自らの反省も交えて男の本音を語ってくれた。

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プロフィール えのきどいちろう

1959年8月13日生まれ、秋田県出身。中央大学在学中に『中大パンチ』を創刊、初代編集長に就任。以来文筆業を生業とし、現在も『NAVI』等に多数の連載をこなす売れっ子コラムニストとして活躍中。

第4章 越えてはいけない境界線

今の日本の女の子ってカワイイ文化になってるでしょ。それが、なんかイヤなんですよ。わりと大人っぽい感じってあんまりないでしょ。官能小説の世界では熟女が流行っているのかもしれないけど、僕が好きなのはそうじゃないんだな。

世の中で流通してるのって、ほんとの熟女じゃん。実年齢がいくつかが問題でもなくて、しかも、若作りしてるんじゃなくて熟作りしてる。それはちょっとさ、ストライクって言われようがこの球を見送ろうと思っちゃうわけ。そうすると、他に流通してるのは大体年齢が低くなっちゃうんだよなー。

実際、街を歩いてる女の子を見ると、だいたい若くしてるじゃない。そうじゃなくて、熟作りもしていない感じがいいんですよ。僕の考えでは、今、その部分が足りないんだな。

例えば、愛人。愛人っていうと、大人っぽいイメージがあるんだけど、今って違うでしょ。なんか愛人って言葉は、囲われた儚いイメージでムゥンとした色気を感じるんだけど、今は通信カラオケに行くでしょ。僕のイメージの愛人は通信カラオケに行かないからなー(笑)。

やっぱりね、女性は秘めた感じがいいんですよ。よくさ、テレビで生理用品のCMとかしてるよね。あれ、すんごいゲンナリするんだな。男が知らなくてもいいこと、男と女の境界線みたいなものを僕は大切にしたいんですよ。

今、世間ではパンツを盗撮したりするヤツがけっこういるじゃないですか。そんなの全然ダメ。それはたまたま見えたり、妄想するからいいのであって、それを見てどうすんの?って思ってしまう。

僕ね、妹がいるんだけど、彼氏に車で送ってもらうじゃないですか。女って家に帰ってきて、まず始めに何をすると思います?

一瞬前まで彼氏と帰り際に車の中でキスして、いちゃいちゃしてるわけですよ。男はもう「充実したぁー!」ってハンドル握って帰ってるのに、女はまっすぐトイレに行ってしまう。この事実、妹を見て分かったんです。

トイレを我慢しながら、チュゥーッてしたり、おっぱいを揉ませるのはエライ。だけど、男が余韻に浸ってるときに、女はトイレっていう現実。そういう現実に踏み込まないほうがいいんですよ。知らないほうが幸せなことってやっぱりあるんです。

同じようにフランス書院は男側から見た理想であり、妄想をリアルに描いているからいいのであって、本当のリアリズムってことになったら、身も蓋もないんです。本当にリアルな叔母ってけっこうひどいもんじゃないですか。そういう“身も蓋もなさ”から上手に逃げた先にエロがあるんじゃないかな。

リアルには身も蓋もない えのきどいちろう07
リアルには身も蓋もない えのきどいちろう08