男を魅了してやまない官能的な振る舞い、歯に衣着せぬ大胆な発言…。杉本彩は男も女も羨むそんな開放的なオーラを放ち続けてきた。“女王様的強い女性”のイメージが強い彼女だが、ここ最近は正反対の「私はM」発言。杉本彩に何が起こったのか? 艶やかで美しいその肉体の奧に秘めた本音を語ってくれた。
『花と蛇』のお話しがあった時、SMの話ということだけは漠然と知っていたんです。ただ、どの程度のSM小説なのか分からなかったので、原作を読み、過去の映画を観て、「これをやるのはちょっと半端じゃないだろうな」って。でも、「石井隆監督が撮ってくれるなら、どんな題材でも煮るなり焼くなり好きなようにしていただいてけっこうです」って言ったんです。だから、たぶん彼以外の監督であれば、受けていない仕事でした。石井隆監督が監督をして脚本を書けば、新しい『花と蛇』に生まれ変わるという確信が私の中にあったからなんですけどね。そういう興味がすごくあったんです。
主人公の男は静子をもちろん愛しているし、静子を監禁して、拉致しようとする影の大物も彼女をとても崇拝している。彼女とセックスをするのが究極の喜びなんですよ。そこまで崇拝されること自体、すごいことだと思いません? フランス書院の小説では『銀行女秘書・ダブル牝奴隷』(佳奈淳著 '03刊)もそうですけど、Mというのはただただ凌辱され、虐められる存在ではない。その根底にはものすごい深い愛情を感じるんです。
愛の形っていうのは美しいものばかりじゃない。屈折していたり、歪んでいたり、いろんな形がありますよね。お互いに傷つけ合うことでしか愛情を確認できない人だっているだろうし、必ずしも二人が幸せになれるものばかりじゃないですよね。
撮影を通してMの試練を受けたわけですけど、その痛みと苦しさが想像を絶していたんです。ほんと、半端じゃないんですよ。私は精神的にMですけど、あそこまで肉体的に激痛を受けることで快感を生み出すことはやっぱり不可能ですよ。肉体的な刺激を受けている精神が快感に変わるのはすごくよく分かるんですけど、撮影に参加していたMのかたは、痛いのが気持ちいいって言うんです。その感覚は理解できなかったですね。
ただし、15分間SMシーンをまわしっぱなしとかがけっこうありましたので、演じてるという次元じゃなくなる瞬間というのも多々ありました。SMに対する快感というより、女優としてのMな部分、つまり「こんなことに堪えている私はやっぱり異常だな…」って(笑)。
だって、周りのスタッフに言われたんですよ。「毎日、よく現場に来ましたね」って。石井監督の現場は役者をすごく追いつめて、サディスティックな撮影をするんです。そんな現場に今回は題材が『花と蛇』ですから、その過酷さも今までにないものだったはず。
これに私が逃げ出そうという気持ちが全く起こらなかったことで、改めて自分のM性を感じていますけどね。追いつめられることでしか生き甲斐を感じられないんです。それは仕事に対しても、恋愛に対しても…。私はただ楽しいとか幸せという気持ちだけでは、生き甲斐を見いだせないタイプなんです。人生がマゾ的なんでしょうね。