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今月の放言

青春は変態 会田誠

直筆短冊

現代美術の奇才と呼ばれ、次々と問題作を発表する会田誠。彼が創り出す多様な作品は、見る者を魅了し、考えさせ、挑発する。そんな会田誠が青春時代を振り返りつつ、自身の性癖を赤裸々に語ってくれた。

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プロフィール 会田誠

1965年生まれ。新潟県出身。1991年、東京芸術大学大学院美術研究科修了後、「フォーチューンズ」で芸術家としてデビュー。以来、超大型セル画作品『巨大フジ隊員VSキングギドラ』、残虐で愛らしい名作シリーズ『犬』など様々な表現方法で問題提起する作家として注目される。創作現場を追った完全ドキュメンタリー映画『≒会田誠 ~無気力大陸~』も好評上映中。

第2章 男にヤられるわたし

僕は今でこそ、立派なスケベおやじになったんですけど、中学、高校時代はバランスがかなり悪い人間でした。女の子とご縁があるなんて20歳ぐらいまでは全く予想もできなかったし、ましてや結婚して子どもを授かるなんて夢にも思っていなかった。育った環境とか理由はいろいろあるんでしょう。性的にも少し遅れている部分があって、中学3年までおねしょをしてました。オナニーとおねしょが同時進行だったんです(笑)。

あの頃の僕は、女性に対してストレートに欲情できなかった。オナニーにしても自分がどんどん女の子になっていく、というやり方なんです。つまり、「女の子を押し倒してセックスする俺」じゃなくて、「男にヤられるわたし」なんです。

「初恋のYちゃんが好きだなあ」と思ったりするんですが、オナニーする時は僕がそのYちゃんになってるんですね。いじられて、苦しめられて…、そんなシチュエーションを思い浮かべながらしていました。その妄想の中に、僕はもちろんいない。美しいイマジネーションの世界に僕なんかは出てこないほうがいいわけです。

普通、オナニーって竿の部分をもってしごくんでしょうけど、僕の場合は全然違った。“センズリ”って言葉を聞いても全然リアリティがなかったんです。というのも、僕のやり方は女の子がクリトリスをいじるような“撫で撫で型”でした。竿を握るというより、中指を使って優しくさするって感じですかね。中学、高校時代の僕のオナニーはずっとこんな方法でした。

当時、僕の家はエロ本なんて絶対に持ち込めない環境だったので、イマジネーションの世界、またはスケベな絵を描いて楽しんだりと自分でネタを作り出すしかなかった。本当は喉から手が出るほど裸の写真が欲しかったんですけど…。

よくやっていたのは、アイドルとかの水着写真を手に入れて、それを色鉛筆などで写し、乳首を想像しながら裸の絵を描くんです。大場久美子さんとかよく描いてたなあ。模写するときはやっぱりその人に似ていないと納得できないから、ああでもない、こうでもないって試行錯誤の連続でしたよ。目指していたのは、フランス書院文庫さんの表紙の絵のような世界。まぁ、今考えると、この経験によって多少、写実力が養われたんじゃないでしょうか(笑)。

そんなオナニーを続けて、初めてセックスしたのは20歳の時。たしかあと2日で21歳になるっていう日だったと思います。「これはなんとかしなければ…」と思って、小岩のソープに行ったんですね。……あれは酷いものでした。摩擦でやっと射精できた史上最悪のオナニーみたいなもので…。それから最初の彼女ができるまで3年もブランクがあるんですからね。僕の若い頃はホント、酷いもんでした…。

青春は変態 会田誠03
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