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今月の放言

青春は変態 会田誠

直筆短冊

現代美術の奇才と呼ばれ、次々と問題作を発表する会田誠。彼が創り出す多様な作品は、見る者を魅了し、考えさせ、挑発する。そんな会田誠が青春時代を振り返りつつ、自身の性癖を赤裸々に語ってくれた。

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プロフィール 会田誠

1965年生まれ。新潟県出身。1991年、東京芸術大学大学院美術研究科修了後、「フォーチューンズ」で芸術家としてデビュー。以来、超大型セル画作品『巨大フジ隊員VSキングギドラ』、残虐で愛らしい名作シリーズ『犬』など様々な表現方法で問題提起する作家として注目される。創作現場を追った完全ドキュメンタリー映画『≒会田誠 ~無気力大陸~』も好評上映中。

第4章 “軌跡”という美しさ

“微乳好き”なんて口ではよく言っていますが、女性を見る時はやっぱり顔。結婚した時、うちの妻の胸はBかCカップぐらいあったんです。そして、妊娠したらスイカみたいに腫れてきて、まるでマンガの『AKIRA』みたいに静脈が浮いて恐ろしいことになった。子どもに授乳している時はミルクがピューピュー出て、それが今はしぼんで…。そういう女性の胸に無常さを感じてしまい、ショックだったんです。それからです、「もう胸なんてどうでもいいや、やっぱり顔だ」ってなったのは(笑)。足が短くても、太くても顔が可愛ければいいかなって思うようになりました。

ただし、顔といっても好みはいろいろあって、僕は化粧顔コンプレックスがあるんです。以前、ある女優さんと対談したんですが、どこがいいのかちっとも分からなかった。彼女はとてもキレイで化粧品のCMにもたくさん出演している。きっと化粧が似合う顔なんでしょう。でも、僕には全然ピンとこなったんです。“女性に対する恐さ”みたいな深い何かが僕の中に潜在しているのかもしれませんが、逆にそういう化粧が似合う顔以外ならOKですよ。みんなが「えぇー?」って思う女の子でも僕はOKな場合も多いし。つまり、自分との距離をあまり感じないリアリティのある顔、素人っぽい感じが好きなんですね。

大人の男なら社会に迷惑をかけないためにも、家庭を円満にさせるためにも風俗に行ったほうがいいんでしょうけど、僕は風俗嬢もダメなんです。風俗嬢ってみんなやたら化粧をしているイメージがあるし、素人っぽくしていてもやはりどこか玄人の雰囲気を醸し出していますよね。エロ本にしてもAV嬢というよりは、目線が黒く隠されている素人もの、投稿系のほうが好きですし。

あと好きなのは、男女の差もない年頃の子ども。これはチンチンが勃ったり、少女を押し倒して云々っていう欲求とは違う。一人の美術の人間として、5mぐらい離れて観賞するにはとても美しい対象だと思います。あんまり小さいとダメなんですが、小学5年生ぐらいの子どもは男女共に本当に美しい。

では、その美しさとは何かと言われると、ぱつぱつした皮膚、日々膨張して限りのない生命力、ビックバンを目指して膨らみ始めた胸とでも答えればいいでしょうか。そこにはとてつもない運動のエネルギーを感じるんです。僕は少年少女の美しさを例えるには、“軌跡”という言葉を使いたいんです。成人してもう出来上がった美女は、軌跡じゃないですよね。むしろその先にあるのは“翳り”です。最近はそういう“軌跡”に対してすごい興味が湧いてきました。とはいえ、少女だといろいろと誤解もあるので、単純にキレイな少年の裸をストレートに描いてみるのもいいのかなって思っています。

青春は変態 会田誠07
青春は変態 会田誠08