ドラマや映画を舞台に、多くの物語を生み出し続けている脚本家、大石静。その輝かしいキャリアは、いわずもがな。若者目線のトレンディドラマから、壮大なスケールで描く時代物、さらには骨太なテーマを扱った社会派の物語まで、作品の毛色は実に多彩。その豊富な経験をもとに繰り出される独特な性愛感もさることながら、けらけらと笑いながら小気味よく話す少女のような姿がとても印象的だった。
幼稚園から女子大系列の学校に通って、ずっと女の世界にいたから、同じクラスの男子を好きになるっていうことはなかったかな。あっ、でも近所の病院の坊ちゃんのことが気になってた時期はあったけど(笑)。ただひとつ言えるのは、深いと言える恋愛体験をしたのは30代になってからね。私は過去をやり直したいって思うことはあまりないんだけど、30代だったらもう一度やってみたいって思うわ。今の感覚で30代に戻ったら無敵だと思うし(笑)。
当時、すごく入れ込んだ人がいて、それがもう本当に絵に描いたような“ダメ男”。でも顔とセックスだけはものすごい魅力的な人でね。彼は役者だったんだけど、当時は仕事がなくて生活保護一歩手前くらいまでいってて、私のヒモみたいな感じになってたの。暴力をふるうし、性格も悪いし、普通に考えたら本当に最悪。ただ何度も言うけど、顔とセックスだけは最高なのよ(笑)。
私は脚本を書き始めたのが36歳からなんだけど、それから急に今みたいに忙しくなって、それに伴い収入も上がっていったんだけど、私と反比例するように彼の仕事がなくなり、ますます荒んでいったのよね。でも彼は自分の顔とセックスに絶対的な自信を持っていたから、私がその彼から離れられなくなっていると思って、信じて疑わなかったのよ。でも、ある日突然、私がいい加減、醒めちゃったの。そうしたらもう、そいつが大暴れして大変だったわよ(笑)。そりゃそうよね、私がいなくなれば現実的に金ヅルがなくなって、生活ができなくなるわけだから。顔とセックス以外にその彼と一緒にいて何がよかったかって、その滅びていく姿よね。その落差みたいなものがすごくエロチックだった。
彼はセックスのときだけ、私より上に立てるの。その普段の姿とのギャップもよかった。いつも見せない表情を、私とのセックスのときにだけ見せるっていうさ。今思うと「くだらないなあ」って思っちゃうけど、当時は本当に彼のことが好きだった。私は結婚していたんだけど、彼とは13年間付き合ったわ。その間、私は彼の家の家賃も払って、週に3、4日は彼の家に入り浸ってたわね。あの頃は肉体的に、30代の体力があったからこそできたのね。今はとても無理だわ(笑)。