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今月の放言

人気脚本家が語る「男女の性愛」 大石静

直筆短冊

ドラマや映画を舞台に、多くの物語を生み出し続けている脚本家、大石静。その輝かしいキャリアは、いわずもがな。若者目線のトレンディドラマから、壮大なスケールで描く時代物、さらには骨太なテーマを扱った社会派の物語まで、作品の毛色は実に多彩。その豊富な経験をもとに繰り出される独特な性愛感もさることながら、けらけらと笑いながら小気味よく話す少女のような姿がとても印象的だった。

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プロフィール 大石静

東京都出身。脚本家、エッセイスト、作家として多くの作品を手掛ける。'96年にNHK連続テレビ小説『ふたりっ子』で第15回向田邦子賞、第5回橋田賞をダブル受賞。その他の代表作として『功名が辻』(NHK)、『長男の嫁』(TBS)、『アフリカの夜』(フジテレビ)、『四つの嘘』(テレビ朝日)など。(現在、毎週水曜22時よりドラマ『ギネ 産婦人科の女たち(日本テレビ系列)』が、絶賛オンエア中。雑誌では『婦人公論』にて『うるさくてもシズカ』を隔号連載中。

第4章 おばさんだってO.Kオーラは出すわ

(目の前のフランス書院文庫を眺めながら)最近の若い男には、年上の女性にお姫様だっこをされてベッドまで運ばれるとか、一人の男性に対して複数の女性から愛されるっていう内容がウケてるんでしょ? 信じられないわね。この『隣家の四姉妹』(上原稜・著 '09年8月刊)なんて、年齢の違う4人の女性から手ほどきを受けるってことでしょう? すごいわよねえ、でも楽しそう(笑)。

最近は「草食男子」なんて言葉が取りあげられてるけど、それって遺伝子レベルでそうなってるのよね。私は今『ギネ』っていう産婦人科のドラマをやってるんだけど、頭が二つになった精子とか、尻尾がない精子っていうのがいっぱいあるわけ。こうなると生き方や社会がどうこうじゃなくて、男がそういう生態的な進化をしちゃってるのかもしれないわね。

ただ、基本的に、男って今も昔も傷つくのが嫌いなのよ。傷つくのが嫌だから、女に打って出るのを嫌がる。その辺は変わってないんじゃないかしら?

どんな恋愛でも、だいたい女が積極的だしO.Kオーラは女から出してるはず。女がビンビンに出して最後に行動するのが男よ。もちろん、私みたいなおばさんだって、O.Kオーラは出すわよ(笑)。私は以前つき合った男性から、「君はブスだから友達には会わせたくない」って言われたの。それからは「私みたいな女は黙ってちゃ男を捕まえられない」って思って、気に入った男がいたらガンガンアピールするようにしたわ。全て自分で押し倒してきたの。「男は押し倒すもんだ」と思ってね。

高校生でもお爺さんでも、男なら何歳でもいけるわ。あまりに年が離れた若い人とは言葉では語り合えない部分があると思うけど、体では語り合える気がする。昔は“若い人特有の高慢さ”みたいなのが苦手だったけど、最近はそれもカワイイと思えるようになってきたしね。

相手によって私自身を変えることなんてあり得ない、私は私のまま。昔は、いわゆる“女らしい女”を演じていたけど、だんだん経験を重ねていくようになると、ありのままで許し合えないと意味がないということがわかってきたの。ありのままに相手にぶつかってお互いを変革していくことが、恋愛だったりセックスだったりするわけでね。だから、今は相手が若かろうが年配であろうが、“私は私だ”っていうのはあるわね。

(文:オオサワ系、写真:大村聡志)

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