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今月の放言

人気脚本家が語る「男女の性愛」 大石静

直筆短冊

ドラマや映画を舞台に、多くの物語を生み出し続けている脚本家、大石静。その輝かしいキャリアは、いわずもがな。若者目線のトレンディドラマから、壮大なスケールで描く時代物、さらには骨太なテーマを扱った社会派の物語まで、作品の毛色は実に多彩。その豊富な経験をもとに繰り出される独特な性愛感もさることながら、けらけらと笑いながら小気味よく話す少女のような姿がとても印象的だった。

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プロフィール 大石静

東京都出身。脚本家、エッセイスト、作家として多くの作品を手掛ける。'96年にNHK連続テレビ小説『ふたりっ子』で第15回向田邦子賞、第5回橋田賞をダブル受賞。その他の代表作として『功名が辻』(NHK)、『長男の嫁』(TBS)、『アフリカの夜』(フジテレビ)、『四つの嘘』(テレビ朝日)など。(現在、毎週水曜22時よりドラマ『ギネ 産婦人科の女たち(日本テレビ系列)』が、絶賛オンエア中。雑誌では『婦人公論』にて『うるさくてもシズカ』を隔号連載中。

第3章 女だって夫以外に抱かれたい

私は結婚したのが25歳だったんだけど、その後、一夫一婦制には無理があると思ったのよね。夫以外の男性に対して、少しでも“この人のことが好きだ”って自覚したら、死んでもいいっていうくらいに突っ走っちゃう。だって命賭けないとつまらないもん。これは男性の方にも言っておくけど、奥さんがいて、何となく普通にバランスよくちょっと浮気するとかっていうのは、時間の無駄だと思うわ。浮気は、死んでも突っ込む勇気があるなら踏み出せばいいと思うな。

でもそういう女性は逆に、男性からは怖がられるわよね。ただ、“怖がる男を突き崩していく”っていうのが、またいいんじゃない(笑)。そういう意味では、男の方がズルいのよ。現状を崩そうとせず、バランスよく外で楽しむっていうハンパな気持ちで接するっていうさ。私に言わせれば、楽しむだけならゴルフとか行ってればいいじゃんって感じよ。私が私であるものが、グラグラと崩れるような恋じゃないとやっても無駄なような気がするの。ええ、こう見えて私って怖い女なのよ、実は(笑)。

男性と同じように、女だっていくつになっても恋したいものなのよ。男の人は違う女を抱きたいっていう気持ちが強いかもしれないけど、女はドキドキしたいとか、胸キュンしたいとか、そういう思いが常にあると思う。外に関係を求めたいっていう気持ちは女性も男性と同じくらいあるし、たまには他の男に抱かれたいって思っていると思う。私の友達はよくクラス会をやってるんだけど、そこではみんな口癖のように「恋がしたい」って言ってるのよ。アラカン(アラウンド還暦)女性がですよ(笑)。

最近、高齢者同士の再婚とかよく見かけますよね。同窓会やクラス会を機に、生き残ってた二人ができちゃったみたいな。何だかんだ言っても、私たちの年齢だと、仕事を含めてまだやるべきことがたくさんあるから、それほど自由っていうわけではないけど、おじいさんおばあさんたちは、もう何もないわけよね。そうなると、思いっきり恋愛に向かって生きられるのよ。それって本当に生きる力が湧くと思う。老人こそ恋をせよ、と私は思うな。だって、老人ホームとかすごいっていうじゃない。セックスこそできないけど、触ったり重なり合ったりしたいっていう気持ちはやっぱりあって、介護の人が手をつながせてあげたり、上に乗っけてあげたりするだけですごく元気になって、血液の状態までよくなっちゃうんだって。これってすごいことよね。

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