圧倒的な存在感で見る者の心に根を下ろす俳優、佐野史郎。プライベートはもとより全てが謎に包まれた彼の心には、こちらの想像を絶する、宇宙規模の変質感が広がっていた。彼にとってのエロス、女性に求めるものとは何か? その深遠なる精神世界を訪ねてみた。
官能小説にしても、AVにしても媒体はなんでもいいんですけど、要は見方だと思うんです。だから「官能小説は文字情報だから僕は見ない」とか、そういうのはないですね。うーん説明しにくいなぁ。やっぱりね、単純に見たいと思うかどうかだよね。まぁ欲望だからお腹が空いたときに、とりあえず何でもいいから腹を満たしたいと思うのか、それとも美味しいもので満足したいって思うかの違いだよね。僕はおいしいものが好きなので、妥協はできないかな。
フランス書院文庫でいえば、『悪魔女教師・個人指導室』(伏見一輝著 04'刊)っていうのこれ、いいじゃないですか・・・(笑)。すごくいい。僕も『女教師』っていう曲を作ったことがあって。そういう女教師に対する恨みもすごいからね、僕。女教師のイメージって、ホントに悪魔だよね。やさしいとか、お姉さんみたいなイメージって僕にはない。かといって性的な復讐をしたいとも思わない。そういうことを思ってしまうと自分のそういう感覚に気づいてしまって、自己嫌悪に陥るんです。
僕がこんな風に考えてしまうのも職業病なんですよ。常に自分がどういう風に感じたかっていうのを、反芻し続けているわけです。僕はもうほんとに差別とか、古い因習の世界で育ってますから、部落の問題や男女差別の問題とか、そういうのを目の当たりにした最後の世代かもしれないですよね。男女平等とかいっても20代の頃には女性蔑視があったりして、それがすごく嫌だったんです。
ほんとにそんなこと思ってんの、みたいな表現とか、なんだこれって思うような発言がとびまくっていた。根が恨みとか差別の中で育ってるので、そういう言葉が僕の中に植え付けられているんですよ。それを忘れて新しい言葉を覚え直そうっていうのが、かなり後だったんです。
自分ではダメだってわかってるけど、人と話していてそういう言葉がちょっとでも出てくると自己嫌悪を感じてしまう。これってやっぱりコンプレックスなんですよ。
だから、例えばこの野郎!って思ったら、ここだったら大丈夫っていう距離まで離れるようにしています。それでこっちから見たらどうなんだろうと思って、写真でいえば現像して定着させる。「あ、この感覚か」っていうのを反芻して体にいれて、そんな毎日ですよね。俳優だから。大変ですよーほんとに大変。でもそういう仕事なんですよ。こうだから仕事にするしかなかったんですよ。女教師に対して悪魔っていうイメージをもってしまうことも、そういう風に一歩ひいて冷静に考えてみると、女教師にコンプレックスをもっているということですからね。