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今月の放言

裸じゃない。羞じらいが見たいんだ 田中知之(FPM)

直筆短冊

類い稀なサウンドクリエイションを武器に、世界中の音楽ファンを魅了するミュージシャン、田中知之。雑誌編集者時代、ファッションエロ写真スクラップ…。今までに培ってきたエロに対する確固たる概念と、世界中を仕事で飛び回るうちに養われた自身の美女観を擁し、実体験を交えて独自のエロイズムを語ってもらった。

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プロフィール 田中知之(FPM)

1966年生まれ。京都出身。『ファンタスティック・プラスチック・マシーン』として国内外でDJ、音楽プロデューサーとして活躍。DJ-MIXシリーズ『Sound Concierge』の第3弾、2タイトルがcutting edgeより好評発売中。通算5枚目のアルバムも年内に発売予定。

第1章 エロ原風景は古都にあり

初めて性的な衝撃を受けたのは、道に落ちているエロ本でした(笑)。雑誌のタイトルとか細かな内容とかは憶えていませんが、とにかく三流の大衆小説だったと思いますよ。最初のページにエロ写真が載ってるやつでね。その頃はインターネットはもちろん、AVもなかった時代ですから。もうビニ本やエロ本が青春の全てなわけです。全ての情報源が集約されているといっても過言ではなかったんですよ。僕のエロの原風景はまさにこれでしたね。

中学とか高校生くらいのとき、近所にノーパン喫茶の日本1号店ができたんですよ。その頃のノーパン喫茶は、僕からしたらものすごいファンタジーでしたね。自分の住んでる街からミステリアスなエロ空間が生まれたわけですから。当時は当然、入れないので店の前に佇み「いったいこの中はどうなってんだよ」みたいなね(笑)。パンツ穿いていない以外は全部普通の喫茶店の日常風景と変わらないわけなんですよ。そういう日常に潜むエロみたいなものって、すごい京都っぽいですよね。一見エロな雰囲気は全く感じさせないけど、中では何してるかワカンナイっていう、そういうムッツリすけべが一番イヤらしいんですよ。それはまさしく俺なんですけど(笑)。ノーパン喫茶は、その後大阪に飛び火して過激になって、さらにそれが新宿で流行したわけですが、京都のそれとはまったく異質のものになってたらしいですね。

ノーパン喫茶からもわかる通り、京都っていう街は色々な意味で独特なんですが、エロに関しても同じなんです。歴史が深いだけに、本当かどうかわかりませんが“エロ都市伝説”みたいなもんがいっぱいありますしね。そういう伝説を聞くと、若かりし僕らはときめくわけですよ。

フランス書院さんの本はうちの近所にはものすごくいっぱいありましたよ。有名だし、その道のスーパーブランドってことは認識していました。昔からエロティシズムとかエロ出版社とかも大好きなんです。例えば、フランスにエリック・ロスフェルド出版という名門の出版社があったとか、そういった研究は今でもしてます。自分の中の嗜好というのは何が好きだとか当然あるわけですが、エロというものすごく個人的なものがビジネスや文化になったりとか、そういうことに対して興味がわくんですよ。

裸じゃない。羞じらいが見たいんだ 田中知之(FPM)01
裸じゃない。羞じらいが見たいんだ 田中知之(FPM)02