AVの創世記より男優として活躍し、最近ではテレビ番組や本の執筆など、活躍の場を広げている加藤鷹。セックスのプロとして男女の垣根を超えて存在する彼への絶対的支持、常人は持ち得ないキャパの広さ、そして“哲学をもたないという哲学”。セックス、恋愛、人間…、“加藤鷹イズム”とは果てしなく広く、そして深いものだった。
「5000人を抱いた」とか言われてますけど、AVは正月以外は毎日やってたことなんで、一年が365日ですから、×10でね。単純に計算して割り出した数字なだけで、それに価値はないですね。ただこの仕事を続けててわかったことがあるんですよ。
まず世の中とセックスっていうのは凄い関係が深い。例えば女っていう存在としては今も昔もまったく同じなんですけど、セックス観っていうのは変わってきてるんです。僕がデビューしたときは'60年代生まれの女性が主流で、その後バブルの頃になるとまさに団塊ジュニアの世代。僕たちの業界を支えていたのは'70年代生まれの女性なんです。桜木ルイであり、樹まり子であったわけです。
そして現在は'80年代生まれですよ。やっぱりセックス観がちがいますよね。だから、世の中のバックグラウンドを知らないとセックスは語れないんですよ。僕が生まれた'60年代っていうのは世の中が貧乏で、物が無くて…。そんな中で育った女性のセックス観と、モノが溢れてあり余っている現在に生まれた女性のセックス観っていうのはやっぱり違いますよね。僕が男優を始めた'80年代の女優さんて、いかがわしいことをしてるみたいな意識がすごい強かったしね。
あと、もうひとつわかったことは、見てる人はよくわかってるってこと。ウソくさいものに対しては『ウソくせえ』って言うしね。今そういうウソを言うと周りがひくんだよ。現実味がなさすぎ。同年代の同性の人気ってすごい気になるんですよ。そういうカマトトみたいなことを言うと嫌われるんだよね。ぶっちゃけた方が受け入れられるんだって。
男優をするうえで大事なのは、誰と合うかじゃなくて、いかに理解できるかだと思ってるんだよね。SEXのすごいところは、女子高生の流行を60歳のおじさんは理解できないけど、60歳のおじさんと女子高生はSEXしようと思えばできるってところ。それがすごいよね。ただし、そのためには理解が必要で、僕らは合うとか合わないとかは関係なく仕事をしなきゃいけないから理解しなきゃいけないんだよ。昨日デビューした女の子も、俺がデビューした当時にその子は2歳という若さ。でもその子がどういう環境で育ってきたかを理解して、それを否定とか肯定することは大事じゃないんだよ。あくまでも理解しなきゃね。