一覧に戻る

今月の放言

受け身こそセックスの奥義 加藤鷹

直筆短冊

AVの創世記より男優として活躍し、最近ではテレビ番組や本の執筆など、活躍の場を広げている加藤鷹。セックスのプロとして男女の垣根を超えて存在する彼への絶対的支持、常人は持ち得ないキャパの広さ、そして“哲学をもたないという哲学”。セックス、恋愛、人間…、“加藤鷹イズム”とは果てしなく広く、そして深いものだった。

profileName

プロフィール 加藤鷹

1962年生まれ。秋田県出身。'88年のデビュー以来業界の第一線で活躍し続けているカリスマAV男優。また最近では本の執筆も手掛けており、『秘技伝授』シリーズや『究極奥義』、『LOVE SEX―歓びの18体位』など、出版すれば確実にヒットするという売れっ子作家としての顔をもつ。また人気のサイト『加藤鷹の恋愛美学』(EZweb向けサイト) http://e.takamobile.jpもチェック。

第4章 男優の基本は受け身であること

俺の人生で、代々木忠監督に出会ったことは大きかったですね。あの人は本当のヤクザでしたから(笑)。しかも今みたいなエリートヤクザじゃなくて、人を殺すにも「ヤーッ!」って言いながら気合入れて刺しにいったような世代。今なんて違うじゃないですか。セックスもそうなんですよ。ぶるぶる震えて昔のヤクザが殺しに行ったみたいなのがセックスなのに、今の人って遠くからバーンと撃つみたいな感じじゃないですか。でもセックスにはそんな方法はないんですよ。震えて突撃していったやつだけが前に進むんですよ。

そういう意味ではタブーってないと思いますよ。しかも、タブーの意識って人によってモノサシが違うでしょ。つまり当事者同士が納得すればいいことだからね。『【タブー】禁じられた隣人たち』(相馬哲生著 '05刊)ってあるけど、こういう小説とかでタブーがタイトルになってるのは、自分ができないことだから読んでおもしろいと思うんですよ。僕はこの仕事で色んなことをやっちゃってるから、よほどの事じゃないとタブーにはならないし。

タブーとはまた違うのかもしれないけど、若いときは仕事でセックスしてもプライベートでもやってましたね。今思うとあれも、ある種変態だったのかも(笑)。今はやらなくても平気ですね。深いことになっちゃうけど、突き詰めてくと、セックスしなくても愛が通じると思えちゃうんですよね。行為がないのに理解できるというか。だから性欲のレベルの高さと、セックスの善し悪しって、まったく関係がないっていうのがこの仕事してるとわかっちゃうんです。

あと、この仕事は完全な受け身。自分が性欲があってやると責めちゃうから良くないんですよ。“僕は別にやってもやらなくてもいいけどね”っていう人のほうが余裕があるからいいんです。だから男優は、自信がない人のほうが向いてたりするんですよ。そのほうが研究もするし。自信がある人のほうが逆に使えなかったりするんですよ

男優という仕事は野球でいうところのキャッチャーですね。僕らは演者であって、監督さんはほかにいるわけだから。男優の立場としては、監督が指名したピッチャー、つまり女優さんに対しては文句は言えないわけですよ。“こう投げるからこう受ける”というパターンを考えなきゃいけない。加藤鷹が出るとエース登場みたいに思われるけど、そうじゃなくてキャッチャーにならなくちゃダメなんです。それには撮影前に俺たちはきちんとキャッチボールして、その日の調子とかを知るんですよ。だから「ちゃんと投げないと受け取らないよ」っていうんじゃダメなんです。どんなクセのある女優でも受け入れなきゃいけない。ピッチャーがどんどん変わってもキャッチャーは変わらないんです。男優は常に受け入れ続けなきゃいけないわけだから。

(文:オオサワ系)

受け身こそセックスの奥義 加藤鷹07
受け身こそセックスの奥義 加藤鷹08