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今月の放言

快楽の天井を探して 辻よしなり

直筆短冊

その声は誰もが知っている。テレビやラジオから聞こえてくる粋のいいトーク、全身全霊で伝える実況中継。フリーアナウンサー・辻よしなりの声を日本全国で知らぬ者はいないといっても過言ではない。そんな彼が妄想一筋だった高校時代、青春時代の甘美な童貞喪失、そして現在の性愛観まで言葉巧みに語ってくれた。

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プロフィール 辻よしなり

1961年生まれ、埼玉県出身。大学を卒業後、アナウンサーとしてテレビ朝日に入社。テレビ朝日編成局アナウンス部に17年7ヶ月勤め、2000年に退社後、フリーアナウンサーへ。主な出演番組として、テレビ『ワールドプロレスリング』『トゥナイト2』『朝は楽しく! スマイルサプリメント』、ラジオ『辻よしなりラジオグラフィティ』『辻よしなりのサタデーミックスデジタブル』他多数。

第1章 全自動オナニーマシーン

女っ気のない青春時代の原因は、高校受験に失敗したことが始まりですね。当時、僕には他校の友達に負けたくないっていうのが凄くあって、大学受験のために一番多感な高校3年間に自分のもっていたあらゆる欲望を封印したんです。その3年間は女の子と付き合うなんてことはもってのほかでしたね。喫茶店に入ったことだって、一度あるかないかって感じで。もう僧侶ですよ、オナニーを得意とする…。受験勉強の合間にオナニーをするというのが一般的だと思うんですが、僕はその逆。オナニーの合間に受験勉強みたいな(笑)。ホント、暗いですよね…。

ある日、「GORO」に松田聖子さんが出てたときがあったんです。何てことない、普通のスナップ写真だったんですけど、そのときは衝撃的でしたね。僕は男子校だったんですが、クラスの男50人くらいでその「GORO」を回し読みですよ。で、その中に僕の親友がいて、そいつは学級委員まで務めちゃうようなすごく真面目な優等生だったんです。その彼が松田聖子が載ってる「GORO」を一日貸してくれっていうんですよ。まあ別に何てことない、高校生の日常のひとコマであるわけですが、問題はそれを返すとき。返してもらってもなお、クラスの飢えた男子たちは松田聖子のページを見るわけですが、そのページにいわゆるヘアが挟まってたんです。『オマエ~』みたいな(笑)。そいつはそれで株をあげちゃったりしてね。

もちろん、フランス書院文庫のような官能小説も読んでいました。ただ具体的にどんなジャンルだったかっていうことまでは憶えてないですが、精神的にも肉体的にも勃起してしまうような思い出がありますね。僕が幼い頃、父親が無造作に置いていた週刊ポストをたまたま見かけたことがあったんです。それにこういう小説が載っていて、目をランランと輝かせながら読んだっていう記憶があります。内容は憶えてないんですが、「“肉棒”とか“花弁”ってなんだろう」とか、専門用語に引き付けられ、色々想像してましたね。目の前にもたくさん並んでいますが、個人的には『若未亡人二十八歳 ~美沙子は親友の妻~』(鳴瀬夏巳著 '05刊)とかいいですね。僕が10~20代の頃見てたらピンとこないんでしょうけど、今見ると気になっちゃいますね。

でもね、オカズがあってオナニーするのは贅沢ですよ。やっぱり自分の想像や妄想でやらないと。僕の場合はエロ本とかビニ本を使わずとも全然平気だった。このスキルはどこかで今の仕事に役立っていると思うんですよ。しゃべりの世界もある意味妄想ですからね。

快楽の天井を探して 辻よしなり01
快楽の天井を探して 辻よしなり02