一覧に戻る

今月の放言

快楽の天井を探して 辻よしなり

直筆短冊

その声は誰もが知っている。テレビやラジオから聞こえてくる粋のいいトーク、全身全霊で伝える実況中継。フリーアナウンサー・辻よしなりの声を日本全国で知らぬ者はいないといっても過言ではない。そんな彼が妄想一筋だった高校時代、青春時代の甘美な童貞喪失、そして現在の性愛観まで言葉巧みに語ってくれた。

profileName

プロフィール 辻よしなり

1961年生まれ、埼玉県出身。大学を卒業後、アナウンサーとしてテレビ朝日に入社。テレビ朝日編成局アナウンス部に17年7ヶ月勤め、2000年に退社後、フリーアナウンサーへ。主な出演番組として、テレビ『ワールドプロレスリング』『トゥナイト2』『朝は楽しく! スマイルサプリメント』、ラジオ『辻よしなりラジオグラフィティ』『辻よしなりのサタデーミックスデジタブル』他多数。

第4章 毛穴まで溶け合った日々

人間は誰でもSとM、両方の要素を兼ね備えていると思うんです。“あ・うんの呼吸”じゃないですけど、ひとつの物語を作るうえで攻守が入れ代わるだけのこと。僕の場合、そういう意味ではやっぱり心が満たされないと、セックスはできないです。誰でもいいっていうわけじゃなくて、心から好きじゃないと無理だし、どこかで相手も尊敬できないとね。

ある取材で女王様に会ったとき、「絶対、あなたMよね、3時間であなたを完璧なMに仕立ててあげる」っていわれましたね。でもね、精神的にMじゃないとこういう仕事ってできないと思うんですよね。

SはMになれないでしょうね。MはSになれるでしょ。MがいないとSはやっていけない。だから、Mが偉大であるとよくいいますよね。Sっ気のある女とエッチをすると俺を困らせてやろうとするんです。その恥ずかしさからツルンとむけたときはMのスイッチが入るんでしょうね。どこまで彼女に委ねられるか、許せるかというのが尺度なのかもしれないですね。

 “あ・うんの呼吸”じゃないですけど、僕は人生観が変わるほどセックスに溺れた経験があるんです。自分の毛が相手の毛穴に入って、相手の毛が僕の毛穴に入るみたいな。不思議なことに、果てたあと数秒でまた復活するんですよね。凄かったですよ、ホント。彼女には特別なテクニックがあったわけじゃなくて、全くの普通の人ですよ。ただ確実にわかるのが、その人が精神的にも肉体的にも僕の琴線に触れちゃってたということですね。もの凄くセックスが合って、このコとずっと一緒にいたらどうなっちゃうんだろうって正直不安になりましたよ。

ただ、ここでこれだけフィットできたら紙の上(戸籍上)で一緒になることはないかなあっていう風にも思っちゃいましたね。むしろ、そういう女性を求めて人生を歩んで行けたら、男として幸せだと思います。「この女のためならたとえ火の中、水の中」と思って、いざエッチをしたらそうでもなかったっていう…。一般的にはこういう人の方が多いわけですよ。でも、つねに快楽の天井を探しに生き続ける方が男として幸せかもしれないですね。死ぬ前に知り合えたらそれが一番いいんだろうなあ。まあ、そう上手くはいかないんだろうけど(笑)。男の性(さが)としては、やはり一生ひとりの女性とエッチっていうのは難しいと思いますね。

(文:オオサワ系)

快楽の天井を探して 辻よしなり07
快楽の天井を探して 辻よしなり08