ヘルス、ホテトル、愛人業、性感、AV…。性の名のつくあらゆる風俗業を自らの足で渡り歩き、経験。その体験を踏まえ現在は風俗関係を中心としたルポルタージュを執筆している作家、酒井あゆみ。今までの経験と職業柄からくる自称“精神的インポ”であると語る彼女。だが取材後、インポの原因はどうやら別にあることが判明した。
風俗の仕事を続けていくうちに、お金なんかよりも自分が必要とされる場所にいた方がいいんじゃないかって考え方が自分の中で変わりました。一般的に女性って、年をとると必要とされなくなるじゃないですか。風俗の世界なんて特にそう。その淋しさとか不安みたいなことで毎日悩んでいたんだと思うんです。今でも風俗時代に御世話になった、当時のお店の専務とかに会うんですけど、その度に「お前はこの仕事に向いてなかった」っていわれますね。淡々とやってたつもりでも自分の感情を抑えながらやってたのか、毎回毎回泣いてたらしいんです。ここで辞めたらお金も貯まらないし…、って言いながら。私はあまり憶えてないんですけどねえ(笑)。
商売としてセックスをしてきたわけですから、恐らく、恥ずかしいっていうのと辛くならないようにっていう現実逃避ではないですけど、あまり夢をみないようにしてた気がします。自分の感情をいれると自分が辛くなるから。セックスをすることで無感覚になるというか…。仕事の時は“裸”という方に視線が集まってくれる分、“私”っていう人間には見られないから恥ずかしくないんです。逆に当時は、洋服を着てる時の方が恥ずかしかったですね。
そんな私でも「セックスが楽しい」って思えた時期があったんです。23歳ぐらいのとき、12歳年上のお客さんを好きになったんです。私自身が疲れてたっていうのと、あと彼が変に風俗慣れしてなかったっていうのもあると思いますけど、あれほど人を好きになったのは初めてでした。その彼が特別上手かったっていうわけではなかったんですが、そのときのセックスは本当によかったですね。
好きな人とのセックスってやっぱり違うんだなあって、ハッキリとわかりました。そのときも短期間だけ、仕事も続けてました。でもその経験をしてしまったときには、それまでは普通にこなしていたのにセックスっていう行為が不潔っぽく感じてしまって、もう他の人とはできなくなったんです。そんなイヤイヤながら毎日仕事でセックスして、帰ってきて彼と楽しくセックスしてって生活を続ける中で、気づいたんです。普通の女性の場合は呑みに行ったり服買ったりしてストレス発散というか、はけ口があると思うんですが、私の場合は彼とセックスすることで浄化(発散)されていたんですよ。他の男とどう違うんだっていう感じでしょうけど、精神的にやっぱり何か違うんですよね。