「男は顔」「バカな男はかわいそう」…。先天的な感性に加え、女性として積んできたさまざまなキャリアが生み出す彼女の発する言葉の数々は、一見どれも厚くて堅い殻をまとった、いびつなものばかり。だがそこに内包されているのは、ホットチョコレートのように甘くて温かなもの。それは驚くくらい子供らしい無垢な発想と女性らしいピュアな感覚でできていた。
フランス書院文庫のような官能小説は昔「叔母と~」みたいな作品を読んだことがあるくらいで、特に読んだっていう印象はないですね。そうそう、牧村僚さんの作品とか読んだ記憶があります。そういう本を読んで気づいたのは、やはり男性が読んで感じるエッチな部分と、女性が読んで感じるエッチな部分っていうのは違うんだっていうことですね。ちょっとズレがあるというか。この中では『肉蝕の生贄』(綺羅光著 '05刊)とか気になりますね。なんか字ヅラがすごい…(笑)。私、こういう本はどんなジャンルでも大概は平気だと思うんですけど、息子がいるので「母と息子」的な内容だとちょっときついですね(笑)。
レディースコミックとかもあまり読まなかったですね。でも過去に一度そういう雑誌で解説を書いて以来、よく見本誌が送られてくるんです。そういうのを見てても、今いちピンとこないんですよ。私って感覚的にちょっとズレているというか、一般的なエロポイントとはズレているみたい。例えば“恐山のふもとに咲いている曼珠沙華の花”みたいな、そういう雰囲気にエロを感じますね。
あと小さい頃、NHKの教育番組か何かで、ナメクジが交尾するシーンを見たんです。グチュグチュしてて、ナメクジのセックスってやっているうちに一つになって溶け合っちゃうらしいんです。それを見たときは幼いながらに「何てエッチなんだろう!」って思いましたね。
人間同士の仕組みを知ったのはもっとあとになってからのことで、それこそ中学時代とかですよ。当時「ギャルズライフ」や「ポップティーン」といった雑誌に特集されているエロネタとか見てました。「ひと夏の経験」などの告白欄みたいなやつを見てましたけど、当時もあんまりピンとこなかったですね。私から言わせれば、その教育番組でやってたなめくじの交尾の方が断然衝撃的でした。もうすごいんですよ、くんずほぐれつで、どろどろしてて…(笑)。
そういう風に普通の女のコとエロに対する感覚が違うせいか、私の書く小説のエロ描写ってあまりエロいとは言われないんです。私としてはエロい部分はとことんエロくしなきゃとは思っているんですけどね。週刊誌などのエロ特集で短編を引き受けることがあるんですが、でもあからさまにエロくなく、どちらかというと心の描写の方に重きをおいちゃうんです。ちなみに男の人が私のエロ描写を読むと、「女性の生理のときの血を見ちゃったって感じ」っていう人とかいます。女のコの場合は「切なくなる」って言いますね。