一覧に戻る

今月の放言

恋愛は切り花のように…。 室井佑月

直筆短冊

「男は顔」「バカな男はかわいそう」…。先天的な感性に加え、女性として積んできたさまざまなキャリアが生み出す彼女の発する言葉の数々は、一見どれも厚くて堅い殻をまとった、いびつなものばかり。だがそこに内包されているのは、ホットチョコレートのように甘くて温かなもの。それは驚くくらい子供らしい無垢な発想と女性らしいピュアな感覚でできていた。

profileName

プロフィール 室井佑月

1970年生まれ。青森県出身。ミス栃木、モデル、女優、レースクイーン、銀座のホステスなどを経て、現在は小説家&エッセイストとして雑誌や新聞などで執筆。最近では母親という立場からコメンテーターやパネリストとしても活躍している。著書は『熱帯植物園』『恋のQ&A』『恋より仕事』など多数。

第3章 男は顔

エロの感覚に違いはありましたけど、好みの男の顔も他の女のコと違ってて、これはいつどんな顔が大人気でも私が好きになる男の顔って徹底して同じ系統なんです。私は好みの顔はありますけど、決してハンサムが好きなわけではありません。だから好きな顔じゃないといくらハンサムでもダメですね。やっぱり男は顔ですよ。だって性格っていうのは相性で引き出すものだと思うし、過去の思い出は映像で思い出すじゃないですか? 同じイヤな言葉でも、好きな顔に言われるのと嫌いな顔に言われるのって、やっぱり受け取り方も違うし。何だかんだいっても顔は大事ですよね。逆にどんなに優しくされても嫌いな顔の男は嫌い(笑)。

ちなみに私は、痩せてて作りのシュッとしたシャープな顔立ちが好きなんです。昔からずっと一緒にいる女友達から言わせると、私は今までずっと同じ系統の顔をした男を間違いなく選んでるそうです。性格や雰囲気的には闇を抱えているっていうか、グレーな部分のある感じっていうか、そういう男に色気を感じますね。小学校高学年から中学校にあがるくらいの頃、みんながやれマッチやトシちゃんだ、少年隊だっていって大騒ぎしているときに、私は絶対、沖田浩之だって思ってました。ちょっとこれは言えませんでしたけど…(笑)。

グレーな部分を持っているのは、ものを作っている人が多いですよね。常に自分と向き合っていてストイックというか。お付き合いしたり、またゴハンを食べに行く友達ってそういう人が多いです。だって、燦々と照りつける太陽のもとに白い歯をむき出しにして笑っている男って、なんか色っぽくないでしょう?

私、人からうらやましいって思われないと、付き合ってても自分で幸せを感じることができないんです。これはまだ作家デビューする前の話なんですが、以前ショボくさい男と付き合ってるときがあったんです。相手にお金がないから私が全部払ったりして、すごい地味なデートをしてたんですけど、私的にはすごく幸せだったんです。そんな付き合ってる最中に、周りからは「エーッ!?」って言われて。そう言われると、私は幸せだと思っていたのに、しかも彼のことが別に嫌いになったわけじゃないのに、急に「私って不幸せ!?」って思ったんです。

それからですね。全然好きな顔じゃないけどお金持ちでカッコ良くて、女なら誰もがお金を払ってでも抱かれたいっていう人とも誘われれば、付き合ってデートしたのは。「うらやましい」って周りから思われる方が何か幸せな気分になるかと思い始めたんです(笑)。でも、その話をすると女友達は私に「嘘つき」って言うんです。「だって、いつもうらやましくない男ばかり選んでるじゃん」「なんでいつも笑わせようとするわけ?」って(笑)。

恋愛は切り花のように…。 室井佑月05
恋愛は切り花のように…。 室井佑月06